第51話 


「リオス、ロベリアはどこ!?」



会場を出て、周りに人がいないのを確認すると、リオスに声をかけた。



「一階の中庭の廊下です!」



するとそういう返事が返ってきたので、私はリオスの後を追い一階の中庭にたどり着く。


しかし



「ちょっと……誰もいないじゃないのよ……どこにいるっていうの?」



そこには、どこにも誰もいない。

私はキョロキョロと辺りを見渡す。


すると、バタンという音が聞こえた。


向かい側の倉庫の扉が閉まる音のようだ。


ということは、そこにロベリアがいるはずなのだけれど……やはり姿が見えない。



「最悪、もしかして透明魔法使ってる?」



「使えるものを使わないわけないですから」



ってことは……あれは間に合わなかったのね……

仕方ない、足音を頼りに追いかけ……



「今そこの角を曲がりました!ホールへ行って階段を上がるつもりかもしれません!!」



なくとも、リオスから正確なナビが伝えられた。



「リオスには見えるの?」



「透視くらいはできますよ。神様ですから。」



「そういうことは早く教えてよ!」



それ知ってたら、匿ってる云々の話してる時に変な前提しなくて済んだじゃないのよ!!


結構制約多いから、そういうのもダメなのかと思ってたわ!


って怒ってる時間もない。

とにかくそのことは置いておいて、必死になってロベリアを追いかけた。



「っていうか、ロベリアは何で会場と逆方向に向かってくのよ!リイナ狙いに来たんでしょ!?」



「いいえ、それが動きがおかしいんです。あちらこちら……部屋ごとに確認してるようで……」



「まさか、リイナ探してる!?じゃあ……私の変装バレてるってこと?」



「でしょうね。流石にルナの変装には騙されなかったみたいですね。」



「お粗末な返送で悪うございました!」



もう、なんなのよ、必死になってこっちはリイナを守ろうと、ロベリアを捕まえようとしてるのに!!


いやいい。

そんなことより早く追いつかないと……



「もう近いです、この辺り……あ、この廊下の真っ直ぐ奥です!」



「見えないわよ!」



いくらリオスが見えても、私が見えてなきゃどうにもならない。

何だろう、近いって言われても、何も達成感も緊迫感もない。

やっぱり、捕まえる本人が見えなきゃ意味ないか……


どうしたら……


そんな時、天の恵みだろうか、助かった。

フィリックが現れたのだ。



「フィリック」



「ルナ!?何してるんだよ、パーティーは?」



ィリックは目を丸くして驚いた。

会場にいるはずのパートナーが、廊下を走っているのだから、当然だろう。

別に、私の婚約者でも何でもないから、何と思われようともかまわない。


それよりも……だ!



「それどころじゃないのよ!あの子供がリイナ探してる!今すぐそこにいるの!姿消してる!」



「はぁ?」



流石に事情を知ってるフィリックも、適当な説明では状況が理解できなかったらしい。


人間、パニックの時ほど、冷静ならなければならない。

言葉が相手に伝わらなければ結局もう一度説明をしなくてはならない、二度手間だからだ。


それでもうまく伝えられない時?じゃあ手短に簡潔に相手に言おう。



「フィリック、もらってきたんでしょ?貸して!!」



そう、さっきフィリックがもらいにいってたもの……それは聖水だったのだ。

魔法解除の対策のため、パーティーの間に掃除という名目で聖水をばら撒くつもりだったのだ、ロベリアの透明魔法対策として。


贅沢な使い方だけれど、この国の聖水は神殿でしか取れないとはいえ、川で流れてる水だし、ジャンジャン湧き出て流れてるし、この時期水も豊富な時期で汲みたい放題。


こんなもったいない使い方してもノープロブレムなのだ。


それで掃除用の聖水が入ったタルがどこかに届いているはずだが……護身用に何本か手持ちの瓶に入った聖水も送ってもらっているのだ。


まぁ何はともあれ、フィリックとすれ違えたのは本当奇跡だ、これで魔法が解ける。


私はフィリックからガラスの瓶に入った聖水を受け取ると



「ありがとう!」



彼にお礼を言う。

そしてリオスに彼女の居場所を聞く。



「リオス、ロベリアは!?まだいる!?」



「ちょうどそこの角曲がるところです!」



「OK!」



そして、思いっきり魔女に向かってそれを投げた。



パリンッ



そしてガラスが割れると、中の聖水がどうやら、ロベリアにかかったようだ。



「くっそ、またっ!」



姿を現した。



しかしそれでも足を止めずに逃げる。



そのままの勢いで廊下の角を曲がった。



まずい。追いつけない。

このままだと……せっかく姿が見えても、何らかの方法で巻かれる!!



でも……



そんな時




「枯れ木に花を……」



なぜか部屋で眠っているはずのリイナの声が聞こえた



「さかせましょう!!」



直後、ロベリアの悲鳴が聞こえてくる。



何が起きたのかわからなかったけれど、直後、うねうねと動く緑の太い植物が見えた。



その場の全員が察した。



リイナが力を使ったのだと。



そして……それを理解した私たちは



敵であるはずのロベリアを心底哀れに思った。


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