第20話 抜け出すルート



「いいでしょ?ルナは親族だし。親族に聞かれてまずいような話じゃないでしょ?」



キラキラした瞳でフェリっくにそう懇願するリイナ。


なんか、神父のところに行きたくない、というより、私と離れたくないという強い意志を感じた。


とはいえ、いくら婚約者の懇願とはいえ、そんな私情を許すわけもない。



「いや普通にダメ。情報漏洩とか問題が色々あるから、一人で行け」



「どうしても?」



「リイナ」



フィリックから少し強めのトーンで嗜められるリイナ。

その様子に少しビクリと方を振るわれるリイナ。


珍しいこともあるものね、普段こんな風に注意しないのに。


まぁ、いうこと聞かないリイナも悪いけど、何もそんなに怒らなくても。

ちょっとだけかわいそうに思ったその時、フィリックは言葉を続けた。



……ルナの耳に入れるつもりか?」



それを聞いて、またリイナの表情が真剣なものに変わる。



「……神父様の話って……それなの?」



「そうだったらどうするかって聞いてるんだ」



それを聞いたリイナは押し黙ってしまう。


な……なによ……

思ったより深刻そうな話なの?


具体的に何の説明もなく、そんなツーカーで理解されちゃ、聞いてるこっちが怖いじゃないのよ。


そんな深刻な話をツーカーでわかるほど、この一週間リイナ私から離れてなかったはずだけど……


まぁ、どんなに悩んだところで私の耳に入れてはいけない内容なら、待っていたとて2人が教えてくれるわけもないし、それだけ重要なことなら、リイナが動かないのをフィリックが許すはずもない。


結局この数秒後



「いい加減にしろ。だいぶ待たせてるから、いくぞ。」



煮え切らないリイナの首根っこを捕まえて、フィリックが、力づくで私からヒキがはし、神父様のところへ強制連行していくのだった。



「あぁ……ルナ〜……」



名残惜しく、そして助けを求めるリイナを私は「言ってらっしゃーい」なんて言いながら手を振って笑顔で見送った。



そして2人の姿が見えなくなると伸びをしてくるりと後ろを振り返る。

今、私の視線の先には例の小さな滝を見ながら伸びをする。



「さて、どのルートでとんずらしようかしら……」



私は逃げ出すルートを計算し始める。


正々堂々と正門から出るわけにもいかないし……やっぱ裏門とか、どこかの柵を越えようかしら……


神官の服とはいえ、今は女性用のだからスカートなのよね……足が隠れるレベルの。



「裏門が開いてることを願って、一か八かやってみる?」



でも、神官たちと鉢合わせたら……リイナに連絡いって……ヤダ、後でめんどくさい。


あとは……あの滝を登ることかしら……あの上は柵ないし、



「でも罰当たりよね……それに、この滝の水は聖水だから、私の足で汚すのもねぇ……」



っていうか、そもそもこの滝、そこそこ高いから登るの無理だわ……。

まぁ、だからこそ上には柵がないんだけれど。



「あとは……聖水のんで魔力に目覚めるとかないのかしら……その力で魔力目覚めて、空を飛ぶとか」



それはないか……だって治療のために、あの日聖水を神父が飲ませてくれたんですもの。

体は回復したけれど、魔法が使えない……ということはそういうことだ。


まぁ、でも力には目覚めなかったけれど、神様には会えたのか。

それだけでも御の字ね。



そういえば、リオスの出したあの鳥、どこにいるのかしら……リイナの監視するとか言ってなかった?

あの夢の中で見せてくれた鳥……あれ以来ずっと見てないけれど、どこに行ったのかしら。


リイナのそばにはいないみたいだけれど……夢の中じゃないと見えないとか?

もしくは別の場所にいるとか?


だったら探してみようかしら。


「もし話せれば、神様に抜け出すいい方法教えてくれるかもしれないし、魔力くれるかも……あーでも、こっちにいない可能性もある?そもそも監視するだけで鳥が話せない可能性も……じゃあ聖水飲んだ方が早いかしら」



実際それでリオスにあった実績はあるし、試してみるかな。


私は滝に近づくと両手で皿を作り、滝に手を突っ込もうとした。


そんな時



「聖水飲まなくても、声かけてくれたらお話しできますよ」



水を飲むより先に、リオスの声が聞こえてきた。


振り返ると、あの夢で見た白く、でも透明な鳥の姿が見えた。

その声の主は間違いなく……



「リオス!」


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