第9話 追い出されても負けない

まぁ、部屋から出て行けとは言われたけれど、儀式に出るなと言われたけれど、そうは言ってもロベリアがいつどこから現れるのかわからない。



一瞬たりとも一人にするわけにはいかない。

ここにいるうちは、一人になることはないだろうけど……それも保証はない。



そこで私は考えた。



リイナに私とバレずに見守る方法を。



そして思いついた。



神官に変装して、リイナの部屋の前で護衛することを。



こうして、私は知り合いの神官から服を調達し、

私は懲りもせず、リイナの部屋の扉の前にしれっと立ち、誰にもバレることなく警備することに成功する。



ちなみに、女性だとバレる確率が高くなるため、着ているのは男性用の神官の服である。

もちろん髪も纏めている。



今日の儀式の後、リイナは完全に聖女になる。

そうなると神官たちの護衛がついて、一人の時間が少なくなる。


それに、今日の儀式を機にリイナはリオスと会話できるようになる。

危険が近づけば、彼がリイナに助言をするはずだし、神の言うことを流石に無視しないはず。


今日一日……いや、儀式までの残り数時間。

その間さえロベリアのことを警戒できれば、リイナが呪われる確率は低くなる。



もう誰も頼れない、自分でリイナのことを守るしか方法がない。

嫌われたって構わない、残り数時間、やってやるわ。



そう息巻いて、キョロキョロと廊下を見回しているが、小一時間経ってもそれらしき子供の姿は見えなかった。


小一時間も立ちっぱなしで流石に疲れてきたな…と思った頃、見慣れた二人の男性がこちらに向かってくる姿がみえた。



クロウと、リイナの婚約者フィリックだ。

なるほど、親族じゃないからクロウは中に入るのに少し時間かかったのね。

神殿についた直後、クロウのことほっぽり出して先に来ちゃったし…どこかでフィリックと会えて中に入れたって感じかしら……。


まぁ着付け中だから、二人は部屋の中には入れないだろうけれどね。


でも、一体何か会話をしているらしいので、声をかけず耳を傾けると……こんな話をしていた。



「いくらなんでも過剰に心配しすぎだろ……一週間も缶詰にして。」



「それでリイナを連れ出したの?」



「リイナも参ってたしな……それに息が詰まってたのはこっちも同じだったし……あれだけの根拠でリイナが危ないとか言われてリイナの屋敷に一週間……どう言うことだよ」


「まぁ……ルナなりに心配してるんだよ。」



「行き過ぎなんだって……クロウも大変だっただろ、なんか頼まれてなかったか?」



「あぁ、リイナの屋敷と儀式当日の警備を厳重にって……騎士だからってなんでも頼まれればできるわけじゃないんだけどね……立場もあるし。」



「何も知らないご令嬢が、あれこれ指図して来れれるのも困りもんだって。」



こんな感じの話をしていた。

はっきり言おう、私の悪口だ。


まぁ、あの二人度胸あるわね……不特定多数の人間がどこで何を聞いてるかもわからないのに人の悪口言うなんて。


バレたくないから、スルーするつもりだったけど……それも悔しいわね。


私は2人が近くを通るのをじっと待つ。



「っていうかいつからあそこまで過保護になったんだ?最初はそうでもなかったよな?」



「やっぱあの日じゃない?なんだかんだ罪悪感あるんだよ。まぁ、かといって、僕の立場でできるのは限度がある。その上人探しとなると……」



「……敵対心持たれるよりは今の方が断然マシだけど……ここまでくるとなぁ。」



「あんたたち……人の悪口言うんじゃないわよ」


そして、私は2人が目の前を通り過ぎようとしたところで呼びつけた。

まさか神官から声をかけられるなんて思ってなかった2人は方をびくっと震わせて驚く。


そして声の主が高い声だったにも関わらず、男性の神官服を着ていることに2重に驚き、そしてそれが私だったとわかると3重にも驚いた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る