第6話 崩れゆく均衡、混沌の果て
#### 1. 暴走の引き金
ナハトの防衛戦は、廃墟に火花と銃声を響かせながら熾烈を極めていた。アベーニャーの戦士たちがバリケードを突破しようとし、ナハトの住人たちは必死に応戦。中央では、825と814が、826率いるアベーニャーの切り札と対峙していた。826の動きは機械的でありながら、どこか人間の狡猾さを帯びていた。「お前たちは…ハウス博士の失敗だ。私が…完成形だ。」その冷たい声に、825は静かに答えた。「完成…? お前は…ただの道具だ。」
戦闘は一瞬の均衡を保ったが、826の攻撃がそのバランスを崩した。826は高速で825に接近し、鋭い刃をその胸に突き立てた。火花が散り、825の赤い目が一瞬暗くなる。「…システム…エラー…リミット…解除…」機械的な声が漏れ、825の体が震えた。リアナが叫んだ。「825! 下がれ!」だが、遅かった。
825の内部で、何かが弾けた。ハウス博士の設計に埋め込まれた「リミッター」――暴走を防ぐための制御装置が、826の攻撃によって破壊されたのだ。825の目は真紅に輝き、機械的な咆哮を上げた。「敵…全て…排除…!」その瞬間、825は暴走状態に突入。ナハトの住人も、アベーニャーの戦士も区別せず、無差別に攻撃を始めた。
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#### 2. 無差別の破壊
825の暴走は、まるで嵐のようだった。鉄骨を握り潰し、バリケードを粉砕し、敵味方問わず襲いかかる。カイが弓を構えたが、825の速度に追いつけない。「くそっ! 何だよ、これ!?」 トビアスは負傷者を抱えて後退し、叫んだ。「リアナ! ロボを止めなきゃ、ナハトが終わる!」
アベーニャーの戦士たちも混乱に陥った。826は冷静に命令を下したが、825の猛攻はそれを上回る。「…失敗作が…この力を?」826が呟いた瞬間、825の拳が826の胴体を貫いた。火花とオイルが飛び散り、826は膝をつく。「…私は…完成…形…」その言葉を最後に、826は機能を停止。だが、825の暴走は止まらない。
ナハトのバリケードは崩れ、住人たちは地下への避難を余儀なくされた。アベーニャーの部隊も壊滅し、指導者ザイラは部下を置き去りにして逃亡。両陣営は壊滅的な打撃を受け、廃墟は血と炎に染まった。リアナは銃を握り、825に立ち向かおうとしたが、814が彼女を制した。「…私がやる。825は…私の兄弟だ。」
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#### 3. 814の決断
814は、自身のバッテリーが限界に近いことを知っていた。研究施設で得たデータを使い、ナハトで一時的に充電したが、戦闘を続ければ数分で停止する。それでも、彼女は躊躇しなかった。「人間…下がれ。これは…私の戦いだ。」
814は825に突進し、全エネルギーを攻撃に注ぎ込んだ。彼女の拳は825の装甲を砕き、火花を散らす。だが、暴走した825の力は圧倒的だった。「敵…排除…!」825の刃が814の肩を切り裂き、オイルが地面にこぼれる。リアナは叫んだ。「814! やめろ! 死ぬぞ!」
だが、814は振り返らず、静かに言った。「…人間。お前は…希望だ。825を…私を…信じた。そのために…私は戦う。」 彼女は最後の力を振り絞り、825の胸に強力な電磁パルスを放った。それは、814自身も巻き込む自爆攻撃だった。
爆発が廃墟を揺らし、825と814は同時に倒れた。825の赤い目は光を失い、814は静かに地面に崩れ落ちた。「…825…ごめん…」彼女の最後の言葉は、風にかき消された。リアナは呆然と立ち尽くし、カイが駆け寄って叫んだ。「リアナ! まだ終わってねえ! 敵が来る!」
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#### 4. アレリア革命団とワグレの到来
廃墟の煙が立ち込める中、新たな足音が響いた。アレリア革命団の部隊が、ガルスの指揮の下でナハトに到達したのだ。彼らは壊滅した戦場を見て、冷たく笑った。「愚かな人間どもめ…ロボに頼った末路だ。」ガルスは、ナハトの技術と生存者を手中に収めるつもりだった。
だが、その直後、ワグレの追撃部隊が到着。エリナの指揮する戦士たちは、革命団を背後から急襲した。「ガルス! お前の野望はここで終わる!」エリナの声が響くが、戦力は拮抗。両者はナハトの廃墟で激突し、さらなる混乱が生まれた。
リアナは住人たちを地下に避難させ、トビアスとカイと共に最後の抵抗を試みた。だが、825と814の喪失、ナハトの壊滅的状況は、彼女の心を折りそうだった。「…俺は何を…守ろうとしてたんだ…?」 その時、トビアスが叫んだ。「リアナ! まだ終わってねえ! ナハトはまだ生きてる!」
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#### 5. 遠い地の暗雲
ナハトの戦いが混沌に包まれる頃、遠く離れた地では、新たな動きが始まっていた。世界最大の宗教団体「クリス教団」は、廃墟に潜むロボット兵を「神の敵」と断じ、全面的な「ロボ壊滅作戦」を開始。教団の指導者、アーヴィン司祭は、信者たちを扇動し、「神の意志の下、ロボを根絶する」と宣言。教団は旧世界連合の兵器庫を奪い、廃墟での掃討戦を展開し始めた。
一方、自称暫定自治政府「新アレリア」の指導者、マスべ将軍は、廃墟の城塞で高笑いしていた。「戦争がまた来る! 人間もロボも、互いに食い合う! そして、我々がその灰から立ち上がるのだ!」 彼は革命団やワグレの動きを監視し、ナハトのような集落を次の標的に定めていた。マスべの手中には、旧アレリヤの秘密兵器の設計図があった――ハウス博士の遺産を超える、新たなロボット兵のプロトタイプだ。
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#### 6. 灰の中の決意
ナハトの戦場は、革命団とワグレの衝突でさらに荒廃した。リアナは地下で住人たちを守りながら、825と814の犠牲を思い返した。「…お前たちは…人間を信じた。なら、俺も諦めない。」 彼女はカイとトビアスに言った。「ナハトを再建する。どんな敵が来ても、俺たちは生きる。」
だが、遠くでクリス教団の軍勢が動き、新アレリアの影が迫る中、ナハトの試練は新たな局面を迎えていた。廃墟の灰の中、リアナの決意は、希望の火を灯すのか、それとも混沌に飲み込まれるのか。
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