第40話 久しぶりのダイニングルーム


 食事を終えて、レインは仕事に出かけていった。


 私にも仕事はあるかもしれないが、今の私の仕事は弱った身体を回復させることだ。


 あまり私が落ち込むので、レインは主治医に私の今の状態を話してもらったのだ。


 私も多少、医療の知識を学んで来たので、今、私が話したり歩けたりできる事が奇跡だと思える。


 医師に説明してもらったので、私なりに納得しておとなしくしている。


 レインが私を抱かない理由は、私の具合が万全ではないからだと分かり、気を遣ってくれるレインに感謝した。


 もう少し、安静にしたら、今度は身体の筋力を鍛える練習が始まる。


 そうしたら、また宮殿を綺麗に掃除しよう。


 新しいお部屋のお風呂は、以前のお風呂よりゆったりしている。


 シャワーも付いているので、自分で髪も洗える。


 お風呂の横に、マッサージをするためのベッドが置かれている。


 この宮殿にはメイドはいないので、お風呂にはいらないと思うが、タオルやバスローブを置いておくのに丁度いい。


 別の意味で使い勝手がいいので、レインにいらないと言うのは止めておいた。


 少しずつ、身体を動かしていってもいいと言われたので、食事はダイニングルームで摂るようになった。


 食事の時間になると、レインが王妃の部屋に迎えに来てくれる。


 ダイニングに行くと、ごった返していた男達のバイキングはやっていなくて、とても静かなダイニングルームになっていた。


 バイキングコーナーは、宮殿の外に作られた食堂に移動したという。


 私が寝込んでいる間に造られた建物で、宮殿で働いている者達が、食事をしているらしい。


 宮殿のダイニングには、ハルマ様とビストリ様が寛いでいた。


 いよいよサーシャさんが来るのだろうか?



「下りてきても、もう大丈夫なのか?」


「医師の許可が出ましたので」



 私は二人にお辞儀をした。



「倒れていた私を助けてくださいまして、ありがとうございます」


「もう、今更って感じだよ。お礼はいらないよ」とハルマ様。


「それにしても、ずっと目を覚まさないのかと思ったよ」とビストリ様が言葉にした。



 椅子を引いてくれたのは、レインだ。


 私は椅子に座った。


 私の隣に、レインは座った。


 キッチンからシェフが、食事を運んできてくれる。


 機嫌が悪いと聞いていたが、皆さん、笑顔を浮かべています。


 私は一人ずつ「ありがとうございます」と声を掛けます。



「今日はデザートに、アイスクリームを作ってみました。直ぐに溶けてしまいますので、お食事が終わりましたらお知らせください」と、シェフ長が声を掛けてくれた。


「楽しみだわ、アイスクリームを食べたことがないのよ」


「では、お楽しみに」



 テーブルに並べられた食事は、パーティーでも行われるのかと思えるほど豪華だった。


「凄いわ」


「皆、ニナの回復を願って、ここに帰ってくるのを待っていたのだ」


「嬉しいわ」


 給仕のシェフが、にこやかに鶏の丸焼きを捌いてくれる。


「どうぞ、たくさん召し上がってください」とシェフ長が声をかけた。


「今日はご馳走だな」


 レインも嬉しそうに呟いた。


「大袈裟だな」と呟いたのは、ハルマ様でした。


 ビストリ様は黙って食べている。


 せっかく料理が美味しいのに、空気が悪い。


 食後に、他国のデザートだというアイスクリームを頂いた。


 口に含むと、冷たい。


 冷たいだけではなく、甘く濃厚なミルクの味が舌の上で溶ける。



「美味しい」


「お代わりもございますので、どうぞ仰ってください」


「ありがとう。いただくわ」


 シェフの皆さんが、喜んだ。


 それを見ていたレインの表情は、優しげでしたけど、ハルマ様はレインを睨んでいた。


 何か不満があるようで、苛々しているのが伝わってくる。


 仲良くして欲しいのだけれど、どうしたら以前のような雰囲気になるのかしら。



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