第13話 俺の腕試し!

 ……


 教会が管理する養護施設。

 その養護施設で出される食事を、明後日の夕食時。俺が担当する事と成った。


 今回。教会からの食材指定は無いが、子どもたちの完食が必須と成るだろう。

 不味い料理を作る、料理人なんて要らないからな///


 現在。養護施設で出されているメニューもシスターから聞いて、夕食の始まる時間や軽い質問を終えた後。俺とリンはシスターと別れて教会から出る。

 ちなみに、リンを手伝いに使っても問題は無いらしい。


 逆を言えば、リンを使ってでも凝った料理を作るべきだ。

 作る料理は、約25人前だ。


 シスターも一人で料理をしているのでは無く、戦争孤児の中では年長者になる、アスと言う女性が、シスターのサポートをしているそうだ。

 俺は養護施設見学をシスターに申し出たが『スズヤには悪いけど、子どもたちには何も言っていない(汗)』の関係で断られた。


 俺とリンは教会から、市場の有る商業地域に向って歩いているが、リンは尋ねる表情で俺に話し掛ける。


「ねぇ……お父さん!」

「お父さんは、何を作るつもりです?」


「そうだね、リン。この国の主食はライ麦パンであるから、ライ麦パンのサンドイッチと、リン母親自慢のスープを出そうと思っている!」


 俺は穏やかな表情でリンに話すと、リンは『?』の表情をしながら俺に聞き始める。


「お父さん。サンドイッチってなんですか?」

「また、初めて聞く名前ですよ……」


「なんだ。サンドイッチを知らないのか?」

「リン!?」


 俺は少し驚きながらリンに話す。

 まだ、メルメーサ王国には、サンドイッチの調理方法が発見されて無いらしい!


 説明する口調で、俺はリンに話し始める。


「リン。簡単に言えば、パンとパンの間にを挟むんだよ」

「マヨネーズで和えた茹で卵とか、ハムやチーズを挟んだりと……」


「わぁ~~。そう聞くと凄く美味しそうです。お父さん♪」

「それで今回は、何を挟むのですか!♪」


 リンは興味津々の表情で俺に聞いてくる。

 食パンのサンドイッチなら、何を挟んでも旨いが、このライ麦パンと言うのは少し酸味が有る。


 ライ麦だけでなく、ライ麦に小麦を混ぜたライ麦パンが、メルメーサ王国のライ麦パンである。

 ライ麦パンは家で焼く事も出来るが、市場などで買った方が手軽で有る。


 スープと一緒に食べたり、チーズを乗せて食べるには問題ないが、パン単体だとこの酸味が気に成る時も有る。

 俺は頭を上に向けながら、リンに話し始める。


「そうだね……パンの下にレタスを敷いて、茹でた鶏胸肉を裂いたのを、オリーブオイルと塩で和えたのを乗せて、その上からマヨネーズをかけて、最後はくし形に薄く切ったタマネギでも乗せようかな?」


「~~~♪」


『じゅるり///』


 俺の言葉を聞いているリンは、凄く食べたそうな表情を見せる!

 そして、その表情で俺に言い始める。


「お父さん!」

「明日の夕食で、それを作ってくださいよ!!」


「私。凄く食べたく成ってしまいました!///」

「当日は、きっと食べられないと思うから、その予行練習も兼ねまして!♪」


「……」


(適当に言ったのに、リンをその気にさせてしまったか)

(パンとサラダチキンは合うし、それにマヨネーズをかければ、子どもは100%喜ぶからな!?)


(そしてこれなら、ライ麦パンでも問題ないだろう!)

(マヨネーズも、酸味を強めれば良いし!!)


 俺はそう、心の中で感じた……

 俺も適当に言ったので、リンの言う通り。予行練習や試食も兼ねて、明日の夕食で作らないとな……


 ☆


 それから、翌々日。

 今日はいよいよ。俺の異世界での料理デビューの時で有る。


 前世界の時は、本当に自炊で有ったが、今日からは料理と成る。

 教会養護施設の夕食時間は17時で有るため、その時間に合わせて、俺とリンは商業地域(市場)で食材を揃えてから、教会の厨房に入る。


 ライ麦パンで、サンドイッチを作るから、なるべく柔らかそうなのを買う。

 今夜のメニューは、ライ麦パンサンドイッチ(サラダチキン(茹でた鶏胸肉の塩オリーブオイル和え)・レタス・オニオン)と、リン母親から聞いた。リン母親特製スープで有る。


 スープは塩味で有るが、スープに入れるハムがポイントだそうだ。

 リン母親のスープに入れるハムは、市場で売っているハムでは無く、専門行商人が売りに来る特別のハムだそうだ。


 これが、優しい味の秘訣らしい?

 なのでリン母親から、今日の為にハムを分けて貰うと言うか買う。


 今回の食材費は、全て教会が支払ってくれるらしいので、贅沢な料理が作れる。

 前日の夕食で、俺とリン親子で試食をしてみたが、凄く好評で有った。


 スープの方は言うに及ばずで有るが、リン親子はサンドイッチを知らないし、食べた事も無いので、パンをで挟んで食べると言う発想には凄く驚いていた。

 サンドイッチも好評で有ったが、リンは『マヨネーズが少し濃いですね』と、味の濃さを気にしていた。


 メルメーサ王国民はコクのある物や、濃い食べ物を食べ慣れていない感じだ。

 また、マヨネーズも市場には売っていないので、手作りしないといけないが、卵が1個50キランもするし、オリーブオイルも小さな瓶でも800キランするので、マヨネーズは止める。


 サンドイッチの具材カットなどの包丁作業をリンに任せて、俺は火を起こしたり、鶏胸肉を茹でていく。

 この世界は異世界のわりに、鶏の胸肉だけが買えたり、マヨネーズが発明されている割りにサンドイッチを知らなかったり、ヘンテコな世界で有るが、これも異世界の醍醐味なんだろう!?

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