第264話 カロリー

 僕と導師と宰相は龍族の浮島に来ていた。

 悪龍を倒したお礼らしい。

『二人には面倒をかけた。あのものは同族を食らうことで、力が強くなると勘違いしていた。その行いは自分自身の破滅と知らずにな。だから、人族にと共に龍族は討伐とうばつしようとした。だが、あのものは強かった。人族の援護もなしに捕らえることはできなかった。今回は本来なら同族である私たちの仕事だった。だが、人族の魔法は龍を弱体化して拘束する魔法だ。私たちではその魔法にからめ取られて戦うことはできない。だから、今回も人族の力を借りた。人族には感謝しかない』

 龍族の長老はいった。

『いえ。こちらも助けてもらっています。龍の牙で神霊族の干渉はとまっています』

 宰相は胸に手を当てて礼をした。

『力になっているのならうれしい。今回はこれを持っていて欲しい』

 長老は本を背後から出した。

 その本は僕の手の中に収まった。

『この本は?』

 導師はきいた。

『過去の人族の魔法だ。区別なく色々な魔法が書かれている。少しは役に立つと思う。それから、これも持って行っておくれ』

 長老は龍の牙を三本出して、宰相に渡した。

 三つの牙は宰相の空間魔法の倉庫に入った。

『ありがとうございます』

 宰相は答えた。

『人族には気を付けて欲しい。有翼族の動きが変なのだ。私たちの声にも応答しなくなった』

 長老はいった。

『有翼族が動くのですか?』

 導師はいった。

『わからない。だが、注意して欲しい。有翼族は白と黒に別れている。一枚岩ではないのだ。なので、どう動くか予想はできない』

『わかりました。気をつけます』

 導師は答えた。

息災そくさいを願っているよ』

 長老の言葉を聞いて僕たちは王都に帰った。


「今回はどう思う?」

 城に走る馬車の中で宰相はいった。

「有翼族は問題があります。戦略級魔法を使われていますが、それでも下に見ています。最悪、戦争になるかもしれません」

 導師はいった。

「その話なら、有翼族に戦略級魔法使いがいると?」

「いえ。いないと思います。使われても使ってこない。それから、ないと推測しています」

「だが、確定ではない」

「ええ。ですが、龍族も戦略級は持っていません。有翼族が龍族と同等なら持っていないと判断します」

「なるほど……。だが、有翼族は魔法に長けていると聞く。話は聞かないか?」

「ないですね。それに、ゴーレムを使った一件を考えると、有翼族には戦略級はないと確信します。回りくどく、あれだけの用意が必要なことをしているのですから」

「なるほどね……」

 宰相は考え込んだ。

 導師は顔を上げるのを待っているようだ。

 僕は大人の会話だと思って入らない。ただ黙って聞くことにした。

 宰相は考えるのをやめたようだ。

 息をはいて、首を鳴らした。

「考えても、らちが明かない。防衛網を強化しよう。今回は城に来てくれ。王に有翼族も含めて報告する」

「わかりました」

 導師は答えた。

 僕たちは登城して、謁見の間で報告した。


 午後からカリーヌの家に行った。

 無詠唱の魔法の家庭教師と、ダンスの生徒として通っているが、建前になりつつある。

 その証拠に家長であるジスランに迎えられた。

「やあ。競馬場の食堂の立候補者がたくさんいる。一緒に考えてくれないか?」

 僕はジスランの書斎に入った。

「今、現在で選ぶのは危ないですよ。色々な料理ができています。その中で生き残るのを選ばないとなりません」

 ジスランは意外だったようである。

「そうだね。考えにいれていなかった。すべてが残ると思っていたよ」

「人族でも地域や環境で好みは変わります。それに決めるのは、今でなくていいと思います」

「うん。そうだね。僕が早まったようだ。……それより、フライドポテトは知っているかい?」

 ノーラが誰かに話したようだ。

「ええ。知っています。だれから聞いたんですか?」

「それは秘密。作らせてみたらおいしかったよ」

「あまり、量を食べないでくださいね。太りますので」

「あれでかい?」

「ええ。油であげているので。ステーキでいうとあぶらみを食べていると思ってください」

「うん。あぶらみもおいしいと思っているよ。でも、それで太るのかい?」

「はい。ぜい肉がつきます。ジャガイモと思っても危ないです。油であげていますから」

 カロリーが高いといいたいが、カロリーという言葉がない。なので、上手く説明できない。

「そうか。そうなると、油であげたのは太りやすいということかな?」

「はっきり断定ができませんが、その傾向が高いです。油をたくさん使うのです。ぜいたくな料理と思ってください。そして、うまいものだけを追い求めると太ります」

「ん? ぜいたくな食事は太りやすいのかね?」

「ええ。なにごともいきすぎると危険なのは同じです」

「うん。なら、たまに食べる方がいいんだね」

「はい。毎日では太って病気になりますから」

 僕は糖尿病とうにょうびょうを思い出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る