観察記録Rその2

リス系魔物の観察記録

 ~ 1班A ~


 12日目

 朝様子を見に来た時に飼育担当者は異常を感じていなかったが、朝食を用意して部屋に戻ると様子が一変していたらしい。

 1班の当番の者から連絡が入り、当番表をチェックしてもう一人とでレスキューセットを持って駆け付けた。

 3班は2人1組で、4交代制になっているが、引き継ぎの関係で時間差の交代にしてある。

 最初のリーダーは5時間で、サブは3時間で交代するためしっかりと引き継ぎが出来る。

 こうすることによって口頭だけでは伝わりにくい様子や、世話のやり方などを実際にやっていきながら伝えることが出来る。

 これは従魔士に教わったやり方を採用した。

 さて観察の開始だ。

 ぐったりとして苦しそうに目を瞑り横たわっている。

 息も苦しそうに短くなっている。

 今日の相方にジュースにしやすい魔性果実の採取依頼と準備を頼む。

 リスの様子をカルテに記入していく。

 このカルテも従魔士の物だ。

 観察が終わるとレスキューセットから柔らかい厚手の布を取り出して被せ、優しく持ち上げる。

 移動用の籠にソッと乗せて、寝易いように整える。

 リス猿系の当番の者に行き先を告げ、相方が来たら伝える様に言付ける。

 リスに負担にならないようにゆっくりと魔素溜まりの1つへ移動する。

 到着すると魔道具を取り出し、魔素の濃いところを探し籠に入れたまま置く。

 相方が用意した果汁が届いたので、先ずは小さな入れ物に入れて鼻先へ置いてみる。

 匂いに反応してかうっすら目を開けるも動くことはなかった。

 この観察の合間に相方が幻獣専用におろしたシリンダーに果汁を吸い上げてくれたので相方に場所を譲る。

 布ごと掴んで顔を上向きにして飲ませやすいように片手に持ち替えていた。

 シリンダーを渡し、僅かに開いている口に先を入れるのを見守る。

 様子を見ながら果汁を押し出すのを見つつ、リスの表情や身体の異変がないかを観察する。

 少量ずつ注いで飲み込むのを待ち、また注ぐを数回繰り返すと、身体に力が入って呼吸が少し長くなってきている様子が見られたので一旦補給を止める。

 籠にソッと戻して観察を続ける。

 余った果汁は2班にお裾分けするように相方に伝えて持って行ってもらった。

 戻って来たら2人で話し合いながら観察をし、結果をカルテ記入する。

 互いの記入をチェックが終わったら、次の交代時間まで交互にメインの観察をして、気になったことがあったら追加記入をするのを繰り返す。

 幸いにも私が交代するまでは、症状が落ち着いていた。

 次のチームが時間内に飼育室に連れて行き、観察を続ける予定をしている。

 レナードさんのアドバイスを元に、数日前までに体調不良の時の手順を決めて置いたのだ。

 今回は初めての実践だが、問題が有ればその都度修正する。

 とりあえずこの素案がどこまで有効か検証が始まる。

 方法自体はレナードさんが実証しているが、体格の違いによる効果の差があるのかや、魔素の濃さでの違い、適切な時間など、確認しなければいけないことがたくさんある。

 今後何度も機会があるはずなので、データを集めて基準を作成しなければ!

 これは変異種の生存率を上げる重要な鍵の一つで、我々の新たな研究課題なのだ!


 --

 シリンダーでの給餌は体調不良の2日目で終了し、3日目からは自分で飲むようになった。

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