育成会議①

 第1回変異種育成会議


 時は魔性植物園が小型変異種を引き取る前に遡る


 参加者は商業ギルド、冒険者ギルド、魔性植物園からそれぞれの長と担当責任者を含む3~5人、各ギルドから検証を打診し同意を得た業者の代表者と育成責任者などで、総勢約40名ほど。

 商業ギルド長から更に詳しい説明を受けた業者は話しを持ち込んだヘルマンを除いて、一斉に騒ついた。

「打診を受けた時はどんな話しか、どの程度利益が出そうか想像もつかなかったが、これは本当だとしたら凄いことだゾ!」

「変異種のことで内密な話しと聞いていたが、これはなるほど内密に検証する価値はある」

「検証に我が商会を打診をしてもらえて嬉しいです」

「こんなに簡単な事で長年の苦労が報われるなら、喜んで検証に参加させていただきたい」

 など概ね高評価な声ばかりだった。

「レナードさんのところのコッコの変異種は偶然食べたのがミミズ擬きという魔虫だったそうだ。

 それを食べたら体が楽になって、探して食べている内に不調が減ったと。

 だからレナードさんは魔素を体内に取り込むと良いのではないかと、魔獣や魔物の肉や魔虫、魔性植物を食べさせたり、魔素の多いところへコッコの変異種と話し合って実施してみたと言っていましたよ」

 今後のためにレナードさんから詳細な話を聞いておいたのだ。

 聞けば聞くほど、我が魔性植物園にとって願ってもないことばかり。

 このメンバーの中で一番恩恵を受けるに違いない。

「変異種の元の動物や魔物がどんな種類かによって、調達する物も違うだろう。

 魔虫や魔物は我々冒険ギルドが担当する。

 現在理由を公に出来ないため、それらしい理由を探して要るところだ」

「魔性植物は基本的に私達の魔性植物園で用意しよう」

「では商業ギルドではこちらにいる業者から定期的に経過報告をしてもらい、それをもとに類似点や共通点などを洗い出し、マニュアル作りの素案や改善点などをまとめよう」

 各ギルド長からの方針が発表された。

「私のところでは既に実行してますが、まだ日が浅く効果は感じられておりません」

「うちはちょうど先週に牛と馬に変異種が生まれたばかりなので、早速取り入れてみます」

「私のところも先々週に変異種が生まれたが、馬と馬系魔物のどちらも生まれてしまって、取り入れたいが手が足らない。せめて馬だけでも手放したい」

「我が商会は今現在は居ないので引き受けても良いが、魔物の方が力もあって使い道があるのだが」

 発言は伝書屋、貸車屋、貸馬屋、商会の順だ。

「ちょっと意見を言っても良いだろうか?」

 冒険者ギルド長から発言があった。

「馬の変異種の引き取り先をレナードにしてはどうだろうか」

「おぉ、それは良いかも知れないですな。

 レナードさんのところなら件のコッコもいますし、実績もある。

 しかも今は魔獣の血が入ったとはいえ、牛しか居ないので将来の急ぎの時の足になりますね」

 すっかりレナードさんが気に入って、自宅まで様子を見に行ったらしい伝書屋のヘルマンさんが続く。

「それでは貸馬屋から馬をレナードさんに、馬系の魔物の1匹を商会に譲ると言うのでちょうど良いのでは?」

「2匹減るのはありがたいので、私の方は構いません」

「我々も馬より魔物系の方を譲っていただけるなら喜んでお引き受けしましょう」

「では、今回はそれぞれの業者が最低1体は変異種を新しい方法で育てるということで決まりましたな」

 と商業ギルド長が話を締めくくる。

「それでは第1回の変異種育成会議はこれにて終了ですね」

「いや最後に各ギルド及び業者で専任担当者を作って商業ギルドうちに提出して欲しい。

 極秘扱いの間は我々か、専任担当者のみ全ての情報を管理し、他の従事者は担当業務に関することだけ伝えるようにしたい」

「それはそうですね、では決まり次第報告に伺いますよ」

 他の人々も言葉こそ発しなかったが、全員頷いていた。

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