名付け -ある職員視点ー
※本編と重複する部分があります
ある日レナードさんが魔性植物園を訪ねて来た日。
変異種育成計画窓口担当者に就任した私オロフ・エールンバリがこれから対外的な交渉を引き受ける。
お互いの子供達の近況の意見交換をした後、レナードさんが幼体達の名付けの仮契約のことで悩んでいることを話してくれた。
ちょうど1週間ほど前に、我々もコッコの名付けの話しを聞いた。
仮契約をすると意思疎通が出来るようになり、名付けをすると絆が深まると、知り合いになった従魔士に教えてもらった。
そのおかげで今回の計画の重要情報が手に入ったようだが、我々が注目したのは、会話が成立するということ。
もちろん元々の種族の賢さで、かなり左右されるようではあるが、それでも生き物と言葉を交わせることが出来るなんて!
従魔術だと仮契約で人間が言う言葉は簡単な言葉ならほぼ伝わるが、相手の言葉はこんな感じのことを言っているらしいという曖昧な伝わり方だと言う。
幻獣士になると仮契約で細かいニュアンスまで通じる種族もあるらしく、仮契約しなくても従魔術のように簡単な意思疎通が出来るということ。
そんな素晴らしい能力を聞いて俄然やる気になった。
その話しを園長が園内でしたところ、名前をメモをする姿をチラホラと見かけるようになった。
私もその1人だ。
レナードさんはもし名付けをするなら、狼犬の兄弟は魔性植物園が引き取るかがハッキリ分かってからのが良いのかという内容だった。
「今、私を含む一部の動物好きの職員の中で、幻獣使いの技術取得を目指しているんですよ!
最低2名は取得出来たら良いなぁと数日前に話していたところなんですよ。
ちょっと待ってて下さい」
そう言って部屋を飛び出した。
大声で見かけた職員に名前リストがある者は会議室に来いと声をかけた。
リストがある者は部屋に駆け込み、なかった者はリストを書いていた人物に声かけした。
あっという間に植物園内に情報が行き渡り、園長と5名の職員が両手にノートや紙の束を持って集まった。
「これ、
と皆興奮した状態でリストを机に乗せていく。
何故こんなに?と思うほどの量を持って来た職員もいたのには冷や汗が出た。
将来植物園の番犬として引き取られた場合の狼犬の兄弟2匹の名前候補もしっかりあって、レナードさんも引き攣った苦笑いをしていた。
ただ名前だけリストアップしていた者もいたようだ。
園長とも相談して、どちらが引き取るにしても、成獣になる前に名付けした方が良いということになった。
名付けの仮契約なら3年経てば主人変更は可能で、変わった時も同じ名前なら兄弟達も受け入れやすいだろうと。
とりあえず狼犬の兄弟の名前候補だけを集めたが、それでもひと山になった。
ここにいる7人以外の分もあったらしい。
他の人の候補をいくつか見てみた。
ズィルバァヴァイスヴォルフ
アルゲンテウスカニスルプス
銀白色の狼の意の外国語らしい
インヴィンシブルウルフ
ブレイブウルフ
フィアレスウルフ
なって欲しい姿を表す言葉を付けただけ
白丸
まだら
赤目
etc
身体的特徴を挙げただけ?
ガーディアン
デストロイ
ナイト
番犬のイメージか?
ぉぃ!
全ての候補から長過ぎたり、趣味に走り過ぎるものなどを振るい落とし、レナードさんから聞いた2匹の特徴を聞いて候補を絞るのに約2時間
そこから人数が増え多数決で決定するのに約1時間かかったが、呼びやすく覚えやすいものに決まって良かった。
元気いっぱいの子を『ソル』
ちょっと臆病な子を『ルナ』
と決まった。
何故か最終候補の中に
『フェン』『リル』
というのが残っていた。
兄弟で呼ぶ前提なのか?
狼犬兄弟を当園の警備要員に迎えるためには、国の認定試験に合格することと、命令を速やかかつ正確に伝えるため、最低でも2人は従魔術を使える者が必要。
幻獣術が理想的だが、警備員ではなく職員の取得は外せない!
まずは従魔術を覚えねば!
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