第11話:バカハジメ。

ハジメと一緒に家に帰ったミンクはギャル曽根ばりに、一番家のご飯を、

お父さんの分もお母さんのぶんもたいらげた。


「まあ、よく食べる子ね」

「あ、そうそう、あんたたち今日、都心で大変なことがあったみたよ」


母親がそう言った。


「またエイリアンの侵略みたいだぞ」


今度は父親の発言。


「なんか女の子が一人で侵略者を撃退したんだって」

「掃除しながらテレビ見てたからそう言ってたわ、詳しく知らないんだけど・・・」


「まあこの辺に被害がなくてよかったんじゃないか」


「そうよ、そうよ」


自分に直接被害が及ばなければ、みんな対岸の火事なのだ。

ハジメとミンクは顔を見合わせて笑った。


お腹が満腹になったあとハジメとミンクはハジメんちの家の申し訳程度の

ベランダにいた。


「狭いなこのベランダ・・・とってつけたみたいに・・・」


「窮屈・・・ハジメちゃんの病気が移りそうですぅ・・・」


「僕は病気なんか持ってないよ」

「ところでさ、ミンクはこれからもずっと、ここにいるんだよね?」


「そのつもりですけど・・・」


「ハジメちゃんは?・・・私にいてほしいですか?」


「いてほしいけど・・・強制できないしね」

「束縛したくないし・・・どうしても帰るって言われたら止められないだろ?」


「止めないんですか?・・」

「ハジメちゃんの私に対する気持ちってそんなものですか?」

「じゃ〜私たちもう別れ?」


「別れる?・・・」

「あ、そうか、俺たち付き合ってるんだよな」

「今日、すごいことがあったから、忘れてた」


「忘れてるなら、私はそれでもいいですけど・・」


「いや、いや、いや・・・忘れたりしないよ」

「僕の彼女になってくれたばっかなのに・・・」


「矛盾してます」

「私に帰って欲しくないんでしょ?」

「なのに帰るって言っても止めないって、おかしくないですか?」


「そんなに責めるなよ・・・正直言うと帰って欲しくないよ」

「止めないなんて・・・強がってみただけだってば・・・」


「そう・・・ハジメちゃんの気持ちが大事ですからね・・・私にはね」

「安心してください・・・ずっと、いるつもりですから」

「でも、浮気なんかしたら怖いですよ」


「しないよ・・・ギガトンパンチ食らいたくないからね」

「でも僕は、あんな強烈なシーン見ても君のこと不思議と怖いって思わないよ」


「あんなに街を破壊したのに?」

「どこの星だって、あんなことしたら追い出されますよ」

「なのになんの、おとがめもありませんでしたね」


「政治家は国民のためとか言ってながら自分の私利私欲に夢中だからね、

世の中が国民がどうなろうと関心ないんじゃないか?」

「それに地球を守ってくれたんだから逆に感謝してもらわなくちゃな」


ハジメはほんとにそう思った。


「上にいる人たちは、どこの星も似たようなもんなんでしょうね」


ミンクは嘆かわしいって言うように言った。


「それに地球人は少し平和ボケしてます・・・危機感まるでないですもん」

「目の前にある危機も他人事だと思ってるからダメなんですよ」


「言えてる・・・」


「でも、そう言うのが一番危ないんだよね」

「イチゴのオバさんみたいなやつがいる限り油断はできないからね」


「だから、私はずっとここにいたほうがいいんですよ」

「もし、私がいなくなったせいで地球の人やハジメちゃんに、もしものことが

あったら私一生後悔しちゃいますから・・・」


「え?そんなふうに僕のこと思ってくれてるの?」


「当たり前でしょ」

「私もハジメちゃんの彼女になったことだし、また街に出て、あなたともデート

したいですからね・・・美味いものたくさん食べてね」


「そう言う充実した時間を共有するのが恋人同士って言うんだろ?」


「そうですね・・・恋人同士・・・恋人っていい響き・・・」


「じゃ〜さ・・・手始にチュー・・・とかしていい?」


「ウイルスが移るから嫌です」


「そんな連れないこと言わないでさ・・・ウイルスなんか持ってないよ」

「今、恋人って言ったじゃん」


「私とハジメちゃんもほどよい関係がいいんです、ほどよいバランスがいいの」


「そう言うのは無理にバランス取れてなくてもいいんじゃないか?」

「人の心は揺れ動くもんだろ?」

「じゃないと、いつまで経っても君に近づけないよ」


「じゃ~100回歯磨いてきたら、チューさせてあげてもいいですよ?」

「あとお風呂に入って体洗って綺麗にしてきたらハグもさせてあげます」


「ハグはまあいいとして・・・」

「歯磨き、ひゃっかいって?・・・百回はちょっとな・・・」

「せめて半分の50回にしてくれないか?」


「バカハジメ・・・本気にして・・・」


「え・・・うそ、今のからかったの?・・・勘弁しろよ本気で歯、50回磨いて

こようと思ったじゃん」


「いいよ、チューして・・・ハグも・・・」


「まじで?」


「10秒あげる・・・」

「私の気が変わらないうちにしたほうがいいと思いますけど・・・」


「じゃ〜早くしないと・・・」


慌てたハジメは、勢い余ってバランスを崩してミンクにのしかかった。


「なにやってるんですか?」

「慌てない、このヘンタイ!!」


「なにもしてないだろ、バランス崩しただけだよ・・・それをヘンタイって」


「ハジメちゃんはほんとに不器用ですね・・・でもそういうとこ私、好き」

「不器用で可愛い・・・ね、ハ・ジ・メちゃん?」


今の二人はとりあえずラブラブ?な感じみたいだけど、その関係が長く続くと

いいね。


ところでハジメは本当にミンクの星、第10惑星4771-1002、セーブルに養子に

行くつもりでしょうかね。


つづく。


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