第22話

???視点



「オラッ!」


ザシュッ


「よっと!」


グサッ


「フンッ!」


ドゴッ


「……」



私の前で3人の男がゴブリンを倒す。


彼らは昨日、街へ入る列で冒険者の集団に囲まれて身体を触られていた私を助けた……らしい。


怪しいとは思っている。


彼らが声を掛けてきたのは私の用事が済んで暫くのことだった。


その場で正体を明かさなかったのは、あの男達の中で衛兵に連れて行かれていない者が居た場合を考えてのことだったらしい。


自分達のことがあの男達の所属している"宝石蛇"に報告されるのを警戒しての判断だったようだけど、連中が諦めない可能性を考えるとその後も私に近づくことは避けたほうが良いはずよね。


だから疑いの目で見ていたのだけど……彼らは私の"あの男達に何をしたのか"という問いに答えることができた。


"見えない糸で首を絞めた"と。


あの時"宝石蛇"の連中の首に出来ていたのは、近くにいた私でもなんとか見えるほどの細い食い込み。


つまり、当事者しか知らない情報を知っていたのだ。


問題はという点で、本当に私を助けた側かもしれないし……"宝石蛇"の仲間かもしれない。


後者の可能性が大きいのはわかってる。


ただ……用事が"ハズレ"で済んでしまった私としては前者に掛けたい気持ちが大きかった。


まぁ、そうなった理由の半分はあの男達のせいなのだけど……


用事が終わったところに彼らからチームに誘われ、それを断ると昨日私を助けたのは自分達だと言うのでその力を見せて証明して欲しいと言った。


その結果……無駄に使うのは嫌なのでダンジョンへつい来て使っている所を見ればいい、とのことでこうしてダンジョンへ同行することになっていた。


どうやらあの力には回数や時間などの制限があるらしい。




今は第1区でゴブリンの一団を倒したところだ。


一団と言っても遭遇したのは2体だけなのもあって、少なくともこの程度は難なく処理できる力があるんでしょうけど……



「スキルは使わないの?」


「この程度なら使う必要がねぇだろ?」



私の問いに男の一人……私を助けたスキルを持つ"らしい"ムロンがそう答える。


まぁ、今の戦闘で使う必要がなかったのは事実ね。


ただ、私は彼らがスキルを使うところを見に来ているので、楽に処理できる相手でもいいから見たかった。


それを察してなのか、ムロンは私に提案する。



「そんなに見てぇんならとっとと2区まで行くか。あそこまで行きゃ魔物の数も増えるし使う必要もあるからな」


「ま、元々2区には行く予定だったしな」

「元気な内に奥へ行くのは悪くない」



他の2人がそう返し、私もそれに異存がなかったので第2区へ向かうことになった。






「こっからが第2区だな。魔狼も出てくるし、一度に遭遇する数も増えるから気をつけろよ」


「わかってるわ。でも私を助けたスキルで動きを止めればいいでしょう?」


「必要なら使うが、そうでなきゃ使わねぇよ。だからお前もこっからは松明だけじゃなく、腰に下げたその剣も持っておきな」


「……」


ジャッ



ムロンの言葉に私は無言で剣を抜いてみせる。


その剣を見たムロンは訝しげな表情で言った。



「……普通のショートソードだな」


「それが何か?」


「いや、女で冒険者ってなると、本人に何らかのスキルがあるか特殊な装備を持ってるかだろ。魔法使いなら剣はなるべく持たねぇし」


「……」


「で、武器が普通の剣だってんならお前自身に何らかの力があるんじゃねえかって話なんだが、そうなると"宝石蛇"に絡まれて自力で対応しねえのはおかしい。どうやって冒険者やっていくつもりなんだ?」


「スキルと言っても戦いに向いたものだとは限らないでしょ。あなた達が私を助けた力を見せてくれれば……私も見せるつもりよ」



私がそう返すとムロンは前を向いて進み始める。



「ま、後でじっくり見せてもらうさ。周りに気をつけろよ」


「わかってるわ」



剣に注目していたみたいだから、この剣が値打ち物……魔剣か何かだと思っていて、機を見て奪うつもりだったのかしら?


でもその割にはあっさりしていたから、単純に私のスキルを知りたかったのかもしれないわね。




そうして第2区を暫く進むのだけど……



「おかしいわね」



私のつぶやきにムロンが反応する。



「ん?何がだ?」


「結構歩いてるのに魔物と遭遇してないわ」


「あぁ……腕の良い新人が居ると偶にこうなるんだよな」



ムロンの言葉に続き、他の2人が口を開く。



「あ、昨日結構稼いでそうな奴がいたって聞いたな」

「でも持ってたのは一抱え程度の袋だって話だろ?それでそんなに稼いでそうに見えるかねぇ……」



2人の言葉にムロンが応じる。



「人数が少なくて1人当たりの取り分が多かったんだろ。ただ、そんだけの実力はあるってことだろうから、今日もそいつ等が暴れてんのかもな」


「……」



その新人達も気になるけど、目下の問題はムロンのスキルを確認できないことだ。


このまま魔物と遭遇しなければ無駄足になってしまう。



「ま、安心しなって。何にも遭遇しねぇってことはねぇはずだからよ。ほら、行くぜ」



私の不安を感じ取ったのか、ムロンは気遣うようにそう言った……と思っていた。


実際、というのは確かだったのだけど、それは私が想定していなかっただった。






「んー、こっち行ってみるか」



あれから暫く。


度々分岐点で足を止め、先頭のムロンが決めた道を進む。


他2人は後ろからの襲撃に備えて私の後ろにいるのだけど……どうも雰囲気がおかしい。


何と言うか、ソワソワしている。


それともう1つ。


分岐点で進路を考えるムロンだ。


時々私も進路を提案するのだけど、受け入れられる進路はあっさり受け入れるのに、受け入れられない進路は決して譲らないという態度を見せる。


どういうことかしら?


まさか……私を襲うつもりで、場所を事前に決めている?


魔物がいつ何処に現れるかわからないダンジョンでそれはあり得るの?と考えていると、その答えが判明した。



「行き止まり?」



暫く続く一本道のあと、やや急に曲がる場所を通過すると……その先には私が泊まった宿の食堂に近い広さの場所があった。



「歩きっぱなしだし、そろそろ休憩にしようと思ってな」


「こんな所で?」


「こんな所だからだよ。ある程度広くて入口は1つ。魔物が来るにしてもそこからだし、一度に入ってこれる数も抑えられるからな」


「中に魔物が現れることは?」


「誰かに聞いてねえのか?いくつか魔物が湧いて出ない場所があって、ここがそうなんだよ。だから休憩所によく使われてんだ」



ムロンはそう言うと、中へ足を進め自分の鞄を下ろす。



「おい、松明持ってんのはお前なんだから早く来てくれよ!そこじゃ鞄の中が見えねえ!」


「え、ええ……」



一応、今回は松明を持つ役としての参加なので、言われてその中へ入るとその瞬間、



「よう」



という言葉とともに、昨日絡んできた"宝石蛇"の男達が私の松明に照らされて現れた。



「っ!?」



この部屋で光が届きにくい、入口の陰に出来た暗がりで待ち伏せをしていたらしい。


口を布で覆っているのは気配を抑えるためか。



バッ


「へへ……」



振り返ってみると、同行していた2人がニヤけた顔で入り口を塞ぎ、そこへ部屋に潜んでいた男達から数人が加わっていた。


怪しいとは思ってたけど……ムロン達はこの男達の仲間だったようね。


昨日の今日で、こんな行動を取るなんて。


昨日はだいぶ目立っていたし、数日は大人しくしてるかと思ったのに。


ただ、今回はすぐに拘束などされず口も開ける。


その理由はこの男達のリーダーらしき男がご丁寧に説明してくれた。



「すぐにとっ捕まえないのを不思議に思ってそうな顔だな」


「……ええ。大声で助けを呼んでもいいのかしら?」


「呼んでみな。何箇所かに普通のチームを装って人を置いて、無関係な奴がこっちには来ねえようにしてある。1区まで届くぐらいじゃねぇと誰にも聞こえねえと思うぜ」



衛兵が便宜を図るぐらいだから、規模が大きく動かせる人間も多いんでしょうね。


そうなるとこの男が言ってることは事実か。


何とかこの場を切り抜けたいところだけど……あ、そうだ。



「昨日のことを考えると私の身体が目当てでしょう。でもいいのかしら?また苦しむことになるわよ?」



そう、昨日この男達の首を締め上げたあの力だ。


あれが私の力だと思われていれば、有事の際には使われると考えるはず。


しかし、話はそう上手く進まなかった。



「あ?あの力を使ったのがムロンだって聞いて一緒にここまで来たんだろうが。その時点でお前の力じゃねえってバレてんだよ」


「っ……て、適当なところで嘘なのを指摘して、締め上げてお金を奪うつもりだったかもしれないでしょう?」


「ならやってみりゃいいじゃねえか」


「くっ!」



余裕の表情で返すリーダーらしき男に、私は返す言葉がなくなる。


そんな私を囲んだ男達が、その輪を徐々に縮めてきた。



ドガッ


「キャッ!?」



後ろからお尻を蹴られ、部屋の奥に進まされる。


このままいくと……仕方ないか。



「俺達のモノになって大人しくヤられてりゃ食うには困らねえぜ。まぁ、今日だけは30人以上を相手にしてもらうからよ、それに耐えられればの話だがな」


「「おおおおっ!」」



その言葉で一気に距離を詰めてくる男達。


その一部を指差し、私は言葉を発した。



「”解放リリース”!」


ボウッ!


「「ぎゃあっ!」」



私の言葉とともに現れた炎が、指を指していた方向へ放たれた。


炎に包まれた数人の男が地面を転がり、何とか火を消そうとしているけど……リーダーの男が冷静に指示を出す。



「チッ!口を抑えろ!」


「「おうっ!」」


「っ!"解放リリース"!」


ボウッ!


「ぐぅっ!」



再び放った炎だったが、逃走を阻止するために持っていたのか大きめの盾で受けられ、そのまま突撃してきて私は倒され剣も落としてしまう。



ドガッ!


「きゃっ!」


ドサッ


「押さえろ!」


ガッ、ガッ、ガッ……


「くぅっ!むぐっ」



瞬く間に両手両足を押さえられ、全くと言っていいほど身動きが取れなくなる。


口には何らかの……おそらく手ぬぐいのような物を詰め込まれた。


そんな私にリーダーの男が近づいてくる。



「まさか魔法使いだったとはな。剣を持って防具を着けてたのはそれを隠すためか。ったく、思いっきり騙されたぜ」


「ぐ……」



喋ることが出来ない私に男は言葉を続けた。



「しっかし、魔法にゃ呪文と触媒が必要だよなぁ?短すぎる呪文はまぁいいとして、触媒はどうした?」


「……」



答えられない私に代わり、男達の1人がそう予想を立てる。



「手袋の中にでも仕込んでたんじゃ?」


「そういう手もあるのか?まぁ……どうせ全部脱がすし、触媒が残ってたら回収しろ。大した量じゃねえだろうが、"上"には使う人も居んだろ」


「「へいっ!」」



リーダーの指示に男達が応える中、私の魔法を受けて倒れている連中への対応を聞く声が上がった。


なるべく巻き込む人数を多くするため、範囲を広げたので威力が薄れたので生き残った者がいるらしい。



「あの、あいつらは……」


「ああ?……動けるようになったら参加させてやるよ。帰るときに生きてたら運んでやれ」


「は、はい」



怪我人の処遇も決まったことでリーダーの目が私に戻ってくる。



「さて、始めるとするか。とりあえず全部脱がせるぞ。触媒のこと忘れんなよ」


「「へい!」」



がちゃ、かちっ、ずっ、ずっ……



背負っていた鞄をはじめ、革の防具やブーツ、剣を下げていたベルトなどが次々と取り外されていく。



「むぅっ!んーっ!」


「へへっ、やっぱ最初は元気だよな。元気な内に挿れてぇとこだなぁ」

「俺は弱ってからでもいいんだけど、そんときゃ相当汚れてんのがなぁ」

「何言ってんだ、それがいいんじゃねぇか」



何とか男達の手から逃れようと暴れる私だけど、男達はそれを大して気にせず談笑しながら手を動かしている。


程なくして全ての装備を外されると、服だけになった私にリーダーの男が馬乗りになる。



わしっ、ムニムニ……


「やっぱ良い物持ってんなぁ」


「っ!」



遠慮なく揉まれる胸に嫌悪感が増大する。


そういった知識がないわけではないけど、決してこんな形で経験したくはなかった。


暫く……男にとっては少しの間私の胸を捏ね回すと、その手が少し服の真ん中辺りをグッと掴む。



「人数もいるからゆっくりは愉しめねえんだよな。ってなわけで……よっ!」


ビリィィッ!


「んーっ!」



服が引き裂かれ、下着が露出する。


時期的にまだそこまで寒くはないので、ダンジョンで動き回るというのもあって上は1枚しか着ておらず、革の防具である程度固定されるというのもあってその下の下着も生地が薄めの物だった。



「ああ、ブラの生地が薄かったのか。いい感触だと思ったんだよ。ま、それもこう、なるんだけどな」


びっ


「おお……」



男がそう言いながら両手を再び動かすと、下着はあっさりと裂かれて私の胸が男達の眼前に晒される。



「ほう、仰向けでも潰れてねえな。体質かもしれねえが……もしかして生娘か?」



私の胸を見てそう評するリーダーの男。


かなりの恥ずかしさではあったのだけど、続く男の発言は私への恥辱が未だ序章に過ぎないことを思い知らせてきた。



「んー……よし、誰でもいいから下を脱がせろ。俺はを始めるから、手が空いてるやつも好きにしな」


「「へい!」」


もぞもぞ……カチャカチャ……ズルッ



胸元を引き裂いて露出させるのが趣味だったのか私に乗っていた男が立ち上がり、私を押さえていない男達と共に股間を露出した。



「ほら、よく見な。今から突っ込まれるモノだぜ」


グイッ


「ぐぅっ……」



大きさは違えどどれもが硬そうに上を向いている光景を、手が空いていた男に無理やり目を開かされて見せられる。


こ、こんなものが私の中に?


と呆気にとられていると私のズボンが引き下ろされ、そのまま脱がされてしまった。


下着と一緒に。


まずいまずいまずいまずい



「んんんんんん!」


バタバタバタバタ!


「最後の抵抗か?まぁいい、股ぁ開かせろ」


「……」


グイッ



無言で開かれる私の足。


そこにリーダーの男が我が物顔で座り込み、再び頭と目を向けさせられてその股間を見せられる。



「ほら、最初に突っ込まれるモノだぞ。この後30本もあんだから、ちゃんとで慣れておけよ」



そう言いながら握ったを軽く左右に振ると、男は私のに先端を向けた。



「じゃ、いただくとするか」



そんな軽食でも食べるかのような態度で、は私との距離を縮めてくる。



「んんんんんんんんんんんんんんん!」


バタバタバタバタ!



嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!



「へっ、諦め……なっ!」


ギチィッ



その言葉と同時に私へ非情な経験を齎すはずだったが……その音が聞こえてきたのは私の身体からではなかった。



「ぐぅっ!?」


「「なっ!?」」



男達の声が上がったのも無理はない。


今まさに私を犯そうとした男の首に、見覚えのある"線"が出来ていたからだ。


あれは……間違いない、昨日のものと同じだ!



「だ、大丈夫ですか!?その女から離れたほうがいいんじゃ……」



手下のその声に昨日のことを思い出したのか、リーダーの男は自分の首を絞める何かから逃れるため私から離れようとする。


だが……男は首だけでなく手足も拘束され、"何か"に引っ張られたように壁へ張り付けられた。



グンッ、ドンッ!


「ぐっ!」



リーダーの有り様にこれを私がやったのだと思ったらしい男が、髪を掴んで私を怒鳴ってくる。



がしっ


「お、お前か!?」



口は布を詰められて喋ることができないし、そもそも私がやったわけじゃない。


どうしたものかと考えていると……その男もリーダー同様に壁へ張り付けられた。



「グッ!」


ドンッ


「どういうことだ!その女から離れれば、首を絞める"何か"は解けるんじゃなかったのか!?」

「昨日はそうだったはずだ!でもその女の力じゃなかったんだろ!?」

「じゃあ誰がやってるってんだよ!?」

「知らねぇよ!……ぐぁっ!」

「なっ!?くそっ誰が……ぐぇっ!」



慌てる男達は次々に壁へ張り付けられ、少なくともこの場にいた男達全員が壁に並ぶ。



「?」



当然解放された私は辺りを見回したのだけど……自分とあの男達以外には誰もいない。



「……ふう」



口に詰められていた布を吐き出すと、私は立ち上がって男達に右手を向けた。


私の魔法を見ていた男達は何をされるのかがわかっているので、何とか思い留まらせようとする。



「ぐ……ま、待て!俺達を殺せばうちのカンパニーが動くぞ!」

「そ、そのまま帰れば見逃してくれるかもしれねえ!」

「あっ、持ち金ならそこそこあるから……」



そんな男達に私は応える。



「生かしておいてもいつ狙われるかわからない。ならダンジョンですれば……ダンジョンの中ではスライムが片付けてくれるって聞いてるし、それなら証拠は残らないわ」


「み、見張りの連中はどうする気だ!?お前がここに連れ込まれてるのを知ってるし、カンパニーに報告されて追手が放たれるぞ!」



首を絞められ、苦しそうにしながらもそういう声が上がったが……それに私は答える。



「同じ目に合わせるだけよ。今からあなた達に起こる事と同じ目にね」






そうして……暫く後、焦げたが散らばる中、私は全裸のまま部屋の入口へ左手を向ける。



「出てきたらどう?」


「……」



少しの間があった後。



ザッ



私の呼びかけに応じて通路から姿を現したのは……昨日のトラブルが収まったときに見かけた同年代の男だった。

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