第480話 【最終演目】覚悟の準備を
単純に『夜の闇』というものは、それだけでもなかなかに恐怖が掻き立てられるものだろう。
おれやラニみたいに『魔法』による探知魔法を使えるならばいざ知らず……単純に真っ暗だと見通しの悪いし、灯りがなければ何も見えない。
おまけに聴覚に頼ろうにも、山の中の大自然ともなれば『ざわざわ』とか『がさがさ』とかの環境音が多すぎる。
音で周囲の状況を探るのは難しいだろうし……場合によってはその環境音が、恐怖を掻き立てる結果となってしまう。
「オーケーオーケーオーケー怖くない怖くない怖くない」
「ま、まぁ……いうてそんな仕込みあらへんやろ。せいぜい先パイらのと同じ感じやろ……」
「な、なぁんだ……そっか、そういえば予習済みなんだよね私達」
「…………カラスの鳴き声せぇへんなぁ」
「「「…………………」」」
おぉ、さすがくろさん。危機察知能力というか、カンが鋭いというか。
こがねさんと
『先日とは違う』ということをいち早く察知したくろさんの働きによって、彼ら彼女らは気を引き締め直してしまったようだ。
(ドローンからフェアリーワンへ。間もなく所定の位置)
(フェアリーワン了解。カラスちゃんズも準備万端みたいだよ)
(おっけー。タイミングは任せますって言っといて)
(了解ー)
いよいよ始まりました配信夜の部、暫定呼称『肝試し・バージョンⅣ』。
チーム編成はお料理対決と同様、四人対四人の団体戦。現在は白組のターンである。負けちゃったからね。しかたないね。
Ⅰ期生のチームワルノリの人員協力と『おにわ部』の技術力が加わった、なんとも豪華な一夜……その記念すべき第一手。
この日のためにダイユウさんたちが作り上げた『仕掛け』が……ついにその牙を剥く。
「「「わああああああああ!!!」」」
「おぉー」
幽鬼のようなぼさぼさの髪を垂らし、ボロ布を纏った亡者の人形。……とうの仕掛人たちは『あの程度、只の骨組みに過ぎませぬ』などとおっしゃられていたが、頭部があって毛髪が生えてて布を纏っていれば充分ヒトの形に見えてしまうわけで。
そして……それが一気に三体。
『逆さ吊りされたヒトのようなもの』が、いきなり背後に現れたとしたら。
普通に考えて、めっちゃびびるよなぁ。
「ばっっか! ばぁーーか!! バーカバーカ!!」
「嘘やろ前あんなん無かったやん嘘やろ!!」
「無理無理無理無理無理無理!!」
「んふゥーー」
「ガァァァァァァァァァ!!!」
「「「うわぁーーーーー!!?!?」」」
「おぉー!?」
「じゃーーーーーーん!!!」
「「「オアーーーーーー!!!!?」」」
「んふゥーーー!!」
注意を完全に『逆さ吊り人形ズ』に引き付けられ、周囲を警戒出来ないでいた彼ら彼女に襲いかかった次なる刺客は……チームワルノリのお二方。
引きずるほどに長いぼさぼさのカツラを被っただけの、ハデスさまとティーリットさまである。
「いまハデス兄ィ見えたんだけど……ッ!! ちくしょう! 加害者がわ回りやがったチクショウ!」
「ティー様も居ったやろ今……あのヒトら何しとん……ほんまヒトデナシやん……」
『俺様魔族だもーーん』
『わちエルフじゃもーーん』
「そういうコト言っとると
『『わはははははははは!!』』
「んふふゥーー! ええなぁーー!」
Ⅰ期生の華麗なる
高笑いする大御所仕掛人配信者おふたりに、物理的にも比喩的にも頭を抱えながらも……早くもダメになりそうな
そんな彼らの進む先に現れたのは、可愛らしい新たなる刺客。
暗闇のなかにぼんやりと佇む……どこか儚げにも感じられる白無垢を着せられた、赤毛混じりの黒髪の少女。
そしてその少女の傍らで、今にも泣きそうな表情で周りを見回している……ふわふわの黒糖色の髪の小柄な少女。
「……あっ! そこな旅のおかた! お願いが御座いまする!」
「「「……………………」」」
「ええよもごもごもごもご」
「
「そこな
「どしたんお嬢ちゃん。言うてみ? カッコいいお兄さんが力になるで」
「「「…………………」」」
予想以上のチョロさで
今回の仕掛けとは、つまり『メンバーの分断』だ。
気になるその筋書きは……『
「……なんでウチの事務所がピンポイントで滅ぶねん」
「知らんわ。妙に細かい邪龍だな。いったい誰ルムさんなんだろ」
「わからんなぁ。ドジっ子邪龍さんがこんな
「頼むぞ、カッコいいお兄さん」
やがて……白無垢の黒髪少女こと
……そこで残された三名へ、
「あっ! 小生思い出しまして御座いまする! 邪龍を倒すためには『聖なる剣』が必要にございますれば、此のままではあのカッコいいお兄様が顔以外地面に埋められてしまいまする!」
「なんて?」「なんで?」
「んふふゥーー!」
……というわけで。
彼らは道中で待ち構えていた
「「「なんでここに
「えっ? アッ、ご、ごめん……?」
見るからに『わるい邪龍』であろうウィルムさんがコッチにいたことに、三人仲良く全力でツッコミを加えていた。
ちなみに配信欄のコメントのほうも、綺麗にツッコミ一色だった模様。
やったぜ。
――――――――――――――――――――
「わっはっは! よくぞ来たカニ道楽! さあ早くわたしの嫁ちゃんをよこすのだ!!」
「ゥエエエエ邪龍!!? 邪龍なんで!? いやいやいや何してんすかセラさん!?!?」
「ちがうのだ! 今夜のわたしは真理の天使エメト・セラフではなく『わるい邪龍』なのだ! わるいので勇者のおかずだって横取りしちゃうのだ! 『邪龍』とだけ聞いてウィルくんだとでも思ったか愚か者め! わーっはっはっは!」
「ぐゥ……ッ、思ってもうたッ!!」
「わっはっはっは! ……さあさ、早く嫁ちゃんをよこすのだ。わたし
「ええんか?」
「だめなのである」
「ダメやって」
「ぬわーーーー!!」
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