第345話 【一派団欒】旅番組といえばお食事
温泉を堪能して、浴衣にお着替えして、ちょっと
夕ご飯の第二部が七時半からなので、今から食事会場へ向かえばちょうどいい感じだろう。
早くもものすごい勢い(当社比)で拡散していく進捗報告のつぶやきに軽くビビりながら……おれたち大人三名と子ども一名(と妖精一名)はお部屋を後にした。
オートロックらしいので、
さてさて、こちらの温泉旅館『
そのため必然的に斜面が多くなってしまうわけだけど……食事会場のある管理棟(フロントやラウンジやロビーがあった建物)へと続く石段は歩きやすく整えられ、そこから眺めるお庭もまた綺麗に仕上げられていた。
おれは食事会場への道を進みながらカメラを回し、夜間照明によってライトアップされている木々や竹林を映像として記録していく。
「こういうのも良いな。人によっては『建物間移動するの面倒!』とか言うかもしれないけど、おれは好き」
「オレもオレも。でっかい建物の中で完結してるのも……それこそ先日の東京ベイのホテルも良かったっすけど、敷地の広さ活かす形式も良いっすね」
「よくは解らぬが……我輩はこの庭、嫌いではないぞ。木々も程よく間引かれ、下草も丁寧に刈られておる。……駆け回り易そうだ」
「
残念ながら浴衣という衣類は、着たまま運動を嗜むようには出来ていない。身体への追従性も可動範囲もそれほどではないので、大きく動けば盛大に肌蹴けてしまう。
肌の露出を防ぐための下着……和服で用いる襦袢なんかは、
つまりは、浴衣の下は(おれが無理矢理はかせた)
……うん、また今度服を買いに……今度は
そんなこんなで、各々が各々の感性でライトアップされるお庭を堪能しながら、数時間前にチェックインで訪れた管理棟へと辿り着いた。
お食事会場はこの建物の中、一階のこれまた眺望良好な和食処だ。夕食はお部屋ごとに間仕切られた個室とのことなので、この常識離れした美少女二人を連れ込んでヨロシクしていても問題ない。給仕のひとがいなければ、ラニちゃんにつまみ食いさせることも簡単だろう。
予約者でもあるモリアキが先陣を切って、和食処の受付へとお部屋名を告げる。
案内のおねえさんに個室へと通していただき……お箸とナプキンとお品書き、そして醤油皿やグラスや固形燃料コンロの準備が整えられた、四人分の席へと通された。
「すげえぞこれ。ヨッシャめっちゃ撮る。めっちゃ
「コース形式なんすね。順番に順番に出てくるみたいな……うわ、めっちゃ手ぇ込んでるっすよ」
「お、おっ、おりょうり! こうきゅうなおりょうりにございます!!」
「わ、我輩は……家主殿が
「今回は……まぁ急遽ですが、
「う、うむ……そうか。……恩に着る」
そう……
というのも、ほかでもない。
猫ちゃんは猫ちゃんで、おれも含めて多くの人々に絶大な人気がある。
猫ちゃんの姿で出演してもらったことは、それは悪手だとは思ってないが……ヒトの姿の
猫耳美少女の
しかしながらその一方で……猫ちゃんのナツメちゃんだって、既にすごい支持を集めているのだ。
超絶大人気なキャラクターは、当然それだけの注目を集めるのだ。猫のナツメちゃんと猫耳美少女の
存在を秘匿するのが永続的なのか、はたまた何らかのタイミングで披露することになるのか……そこは率直にいうと、今の段階ではなんとも言いがたい。
要するに……どっちも捨てがたいんだ。
「なつめさま、いかがでございますか? お好みのお料理はございますか? 今度
「……なんだ、これは……ヒトとは、こんなにも複雑な味覚を備えて居ったというのか……」
「うふふ。おめめまんまる、でございます。なつめさま、大変愛らしくございまする」
ヒトの姿で、ちゃんとしたお食事を摂るのは初めてなのだろう。隣の席の
子ども用とて、そのクオリティは大人用と何ら遜色ない。むしろ小さい子が大好きなメニューが多く盛り込まれてるので、正直非常に美味しそうだ。
小さなおててで懸命に匙を操り、ハンバーグや茶碗蒸しをどんどん口へと運ぶその姿を……おれたちは皆微笑ましく見守っていた。
……やっぱり、この『
おれは
あっ、高速思考中ではありましたが、お料理はちゃんとおいしくいただきました。
味はもちろん、見た目もとてもきれい。いわゆる『五感で楽しむ』ことができるコース料理、控え目に言って料理人の人の腕はんぱねぇって思いましたね。
出されたお料理すべてに大満足、同席者のみんなの関係性にも大満足。
たいへん満足感のある、すてきな夕食の席でございました。
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