第14話 ヒーロー暗躍

 パーティーを終えてブラッディはいつもの書類仕事へと戻っていた。リリスのために無理やりパーティーに出席したこともあり仕事はたまっているのだ。



「ふーー、書類仕事がめんどくさすぎる……ナツメ、手伝ってくれ……」

「仕方ないですね……あなたの前世は社会人だったのでしょう? このくらいぱっぱとやらないと」

「会社ではパソコンを使っていたんだよ。なんで手書きなんだ。筆記魔法とかないのかな」



 書類を前に頭を抱えているブラッディを仕方ないですねと苦笑しながら、ナツメが手伝う。こんな風に前の世界の話をするのは二人の時だけだ。

 偶然異世界からの転移者であり冒険者をしていたナツメと出会ったブラッディは彼女に頼み込んでメイド兼秘書をやってもらっているのである。

 ナツメも前の世界の話ができるからか、相性が良いのか、出会ってからずっとこの関係はつながっている。



「それでな……」

「ブラッディ様。誰かがちかづいてきています。この足音は……おそらくリリス様ですね」

「なに!?」



 その言葉を聞いたブラッディはダラーっとした姿勢を即座に正して、机の上の書類を綺麗に並べできる男を演出する。そんな彼をあきれた表情で手伝うナツメ。



 コンコンっと ちょうどいいタイミングで響くノック音にブラッディは威厳が出るようにして答える。



「どうした?」

「お義兄様……少しお時間をよろしいでしょうか?」



 入ってきたのはナツメの言う通りドレスに身を包んだリリスである。彼女はブラッディの机の上を見つめ申し訳なさそうにする。

 


「お仕事でお忙しい所申し訳ありません。今度は友人とピクニックに行ったあとにニアちゃんのおうちにお泊り会をしようと誘われているのですが行っても、大丈夫でしょうか?」

「ピクニックか……」



 異世界の遊びと言えばピクニックは定番のである。そして、ニアというのはリリスの友人であり、隣の領地を治めている領主の娘だ。人脈を深めるのにももってこいだろう。

 そしてなによりも、冷酷非情で孤独だったリリスにもそんな相手ができたのかちょっと寂しいような嬉しいような複雑な気持ちを抱いていた時だった。



「街からはそんな離れていない魔物のいないところに行きますし、護衛もいます。それに女友達三人で行くので安心してください」

「ああ、そうなのか」



 何を思ったのか、リリスは女子三人というのを強調して補足する。まるでブラッディに変な誤解をしてほしくないとでもいうように……

 そして、少し様子をみるかのように口をひらく。



「もしも、心配ならばお義兄様もついてきてくださいますか?」

「なんだと……」



 突然の誘いに思わずにやけそうになるが足にペンをぶっさしてしかめっつらをキープするブラッディ。



「悪いが俺は領主の仕事があるんだ。護衛は腕の立つものを準備しておく。あとはお前のお付きのメイドのソラも連れて行ってやれ」

「はい、ありがとうございます。では失礼します」



 一瞬残念そうな顔をしたリリスだったが、それをブラッディには悟られないようにすぐに笑顔を浮かべて部屋を出ていく。

 そして、彼女の足跡が完全に遠ざかったのを確認すると……



「きいたな? リリスたんがお友達とピクニックに行くんだ。万が一がないように障害を取っ払うぞ」

「はぁ……」



 リリスが去ってから満面の笑みを浮かべたブラッディの言葉にナツメがテンション低めに答える。



「とりあえずはうちのネットワークには人さらいやヘラ教などの動きはないのはすでに把握している。そっちの線は問題ないだろう

「本当にリリス様がかかわると有能ですね……となるとあとは魔物でしょうか……安全な場所に行ってもリリス様の魔力を狙って魔物が飛び出してくるかもしれませんからね」

「ああ、あのドラゴンの時のようにな……」



 本来はあの山は安全なはずだったのだ。だが、リリスがその身に宿す力に惹かれて住処からやってきたのだろう。

 リリスは良い子だ。事情を話したりすれば今回の遊びもあきらめてはくれるだろう。だが、ブラッディが転生したのはリリスの笑顔を守るためなのだ。こんな風に友人と遊んだり自由に生きてほしいと思う。



「じゃあ、魔物を倒しに行くか」

「ですが、どうやって……まさか……」



 怪訝な表情のナツメにブラッディがどや顔で答える。



「ああ、ナツメの力を借りることになると思う。大丈夫か?」

「しかたないですね。その代わり今度高級レストランをおごってくださいね」

「ああ、そうと決まればさっさと仕事を終えるぞ」



 そうして、仕事を終えて目的地へと向かうのだった。




次はナツメちゃんの話となります。


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それではまた明日の更新で



カクヨムコンテストようのこちらも読んでくださるとうれしいです。



『せっかく嫌われ者の悪役領主に転生したので、ハーレム作って好き勝手生きることにした~なのに、なぜかシナリオ壊して世界を救っていたんだけど』


本人は好き勝手やっているのに、なぜか周りの評価があがっていく。悪役転生の勘違いものとなります。


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