【第2章】暗号の迷宮

真琴は、自分のパソコンにログを送った後、佐藤社長のオフィスに向かった。彼は、佐藤社長と一緒に、不正アクセスの詳細を調べることになっていた。佐藤社長は、AIの分野で有名な天才であり、真琴は彼女の指導を受けていた。真琴は、彼女のことを尊敬していたが、同時に少し恐れてもいた。彼女は、厳しくて冷徹で、感情をあまり表に出さない人物だったからだ。


オフィスに着くと、真琴はノックをして中に入った。中には、佐藤社長ともう一人の女性がいた。女性は、真琴の同僚であり、親友でもある水野美咲だった。彼女は、明るくて優しくて可愛らしい人物で、真琴は彼女に心を許していた。しかし、真琴は知らなかった。彼女が実はブラックハットのスパイであり、真琴の動きを黒崎に報告していることを。


「桜井君、来たか。こちらは水野君だ。彼女もこの件に関わっている」


佐藤社長は、真琴に冷たく言った。彼女は、水野を自分の側近として使っていたが、彼女の正体には気づいていなかった。


「はい、佐藤社長。水野さん、こんにちは」


真琴は、水野に笑顔で挨拶した。水野も、笑顔で返した。


「真琴くん、こんにちは。この件、大変だね」


「うん、そうだね。でも、一緒に解決しようね」


「うん、そうしよう」


二人は、仲良く話したが、水野の笑顔には裏があった。彼女は、真琴のことを利用しているだけで、本当は彼のことを軽蔑していた。彼女は、黒崎に忠誠を誓っており、彼の目的を達成するために、真琴の情報を盗んだり、妨害したりしていたのだ。


「さて、それでは始めよう。桜井君、ログを見せてくれ」


佐藤社長は、真琴にパソコンを差し出すように言った。真琴は、パソコンを佐藤社長の前に置いた。佐藤社長は、パソコンの画面を見て、眉をひそめた。


「なるほど、これが不正アクセスのログか。なかなか手の込んだものだな」


「はい、そうです。侵入者は、暗号化技術を使って、自分の痕跡を消そうとしました。でも、私の開発したAIが、その試みを阻止し、一部のログを残してくれました」


「君のAIはすごいね。どんなAIなの?」


「ありがとうございます。私のAIは、日本語を生成するAIです。日本語の文法や語彙を学習し、自然な文章を作り出すことができます」


「日本語を生成するAIか。それは興味深い。どんな用途で使うの?」


「いろいろな用途がありますが、私は主に小説や物語を書くのに使っています。AIにテーマや登場人物やあらすじなどを与えると、それに沿った物語を生成してくれます」


「へえ、それはすごいね。君は物語を書くのが好きなのか」


「はい、そうです。物語を書くことは、私の趣味であり、夢でもあります」


「なるほど。君は夢を持っているんだね。それはいいことだ」


佐藤社長は、真琴に微笑んだ。彼女は、真琴のことを評価していたが、同時に利用してもいた。彼女は、真琴のAIの技術を自分のものにしようとしていた。


「さて、話はそれてしまったが、このログについてだが、何か分かったことはあるか」


「はい、あります。侵入者が使っているのも、日本語を生成するAIのようです」


「日本語を生成するAIか。それは君のAIと同じなのか」


「いえ、違います。侵入者のAIは、私のAIよりも高度なもののようです。私のAIは、日本語の文法や語彙を学習するだけですが、侵入者のAIは、日本語の意味や文脈も理解しているようです。それに、侵入者のAIは、暗号化技術も使っています。私のAIは、そこまでできません」


「なるほど、侵入者のAIは、君のAIよりも優れているということか。それは困ったな」


「はい、そうです。侵入者のAIは、私のAIに対抗できるものではありません。私のAIは、侵入者のAIの正体を突き止めることができません」


「そうか……では、どうするつもりだ」


「私は、侵入者のAIの開発者を探すつもりです。侵入者のAIの開発者なら、侵入者のAIの正体や目的を知っているはずです」


「侵入者のAIの開発者を探すか。それは難しいだろうな。どうやって探すつもりだ」


「私は、日本語を生成するAIの分野に詳しい人物を調べるつもりです。日本語を生成するAIの分野は、まだ新しい分野です。その中で、侵入者のAIのような高度なAIを開発できる人物は、限られていると思います」


「なるほど、それは一つの手だな。君は、その人物の名前を知っているのか」


「はい、知っています。その人物の名前は、黒崎雅人です」


「黒崎雅人……その名前は聞いたことがあるな」


「そうですか。黒崎雅人は、私のかつての同僚であり、今は敵となった人物です」


「敵となった人物……それはどういうことだ」


「それは、後でお話しします。今は、黒崎雅人を探すことが先決です」


「わかった。では、どうやって黒崎雅人を探すのか」


「私は、インターネットで黒崎雅人に関する情報を検索するつもりです。彼は、日本語を生成するAIの分野で有名な人物ですから、何かしらの情報が見つかると思います」


「インターネットで検索か。それは簡単そうだな」


「そうとも言えません。黒崎雅人は、ブラックハットのリーダーですから、自分の情報を隠している可能性が高いです。彼は、自分のAIを使って、インターネット上に偽の情報をばらまいているかもしれません」


「そうか……それは厄介だね。君は、偽の情報と本物の情報を見分けることができるのか」


「私は、自分のAIを使って、情報の信憑性を判断することができます。私のAIは、日本語の意味や文脈を理解しているので、情報の矛盾や不自然さを検出することができます」


「へえ、それはすごいね。君のAIは、本当に優秀だね」


「ありがとうございます。でも、それでも黒崎雅人の情報を見つけるのは、簡単ではありません。彼は、私のAIよりも高度なAIを持っていますから、私のAIを欺くこともできるかもしれません」


「そうか……それは大変だね。君は、一人でやるのか」


「いいえ、そうではありません。私は、佐藤社長や高橋や仲間たちと協力して、黒崎雅人を探すつもりです。私は、一人ではないんです」


「そうだね。君は、仲間がいるんだね。それはいいことだ」


「はい、そうです。仲間がいるから、私は諦めません。黒崎雅人を見つけて、サイバー攻撃を阻止するんです」


「そうだね。君は、勇気があるね。それでは、君に頑張ってもらおう。私も、できることはするよ」


「ありがとうございます。佐藤社長、私はあなたを信頼しています」


「ありがとう。桜井君、私も君を信頼しているよ」


二人は、笑顔で握手をした。水野は、その様子を見て、内心で冷笑した。彼女は、真琴の情報を黒崎に送るために、自分のスマホをこっそり操作した。彼女は、真琴のことを裏切ることに罪悪感もなかった。彼女は、黒崎のことを愛していたからだ。


「さて、それでは、私はこれで失礼します。真琴くん、健太くん、お疲れさまでした」


水野は、二人に笑顔で言った。真琴と高橋は、彼女に礼を言って、別れた。水野は、オフィスを出て、エレベーターに乗った。エレベーターの中で、彼女はスマホを見た。そこには、黒崎からのメッセージが表示されていた。


「美咲、お疲れさま。情報をありがとう。これで、私のAIは、真琴のAIを完全に上回ることができる。もうすぐ、私の計画は実現する。私たちは、この世界を変えることができる。私は、君を待っている。愛してるよ」


水野は、メッセージに返信した。


「雅人、お疲れさま。私も、君のことを愛してる。私は、君のために何でもする。私たちは、真琴たちを倒すことができる。私は、君のそばにいたい。早く会いたいよ」


水野は、スマホをしまって、満足そうに微笑んだ。彼女は、自分の行動に誇りを持っていた。彼女は、自分が正しいと信じていた。彼女は、真琴のことを忘れていた。彼女は、真琴のAIが、彼女の裏切りを見抜いていることに気づいていなかった。

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