11月 Composition
第15話、Composition of Möbius strip
2021年11月某日
入社2年目になったけど、相変わらず、よくわからない。言わなきゃいいこと、たぶん、世の中っていっぱいあると思うんです。
「お前は喧嘩売っとんのか!」
「今言わなかったら、後工程でさらにデカい不具合になると思うから言ってるんです!あんたも技術者なら、まずは現状把握に考えられる懸念点を全部挙げるのが優先だってわかんでしょうが!」
「まあまあ、否定は後からできますので、今は全部挙げましょう。ここはメンツ争いの場ではないので」
「!!」←半端なく怖い顔。
どうして、こうもいらん事を更に言うのかな、この2人。調達の部長、顔色変わったし。
今回の判明した懸念点に議題、打ち合わせ内容は、事前に社内システムで共有済み。会議は30分を予定していて、現在11時35分。
「ボードに書きます。えーと」
パソコン上の共有画面を操作して、議事を取る。
残り24分。
今、次期フルモデルチェンジに合わせて、現行モデルの課題洗い出し作業で発覚した懸念点について会議してます。
出席者は設計、製造、生産技術、調達、法規認証、知財、法務部の課長級。設計、調達、法規認証は部長級が出席、と。
え、僕は議事録係です。設計部主催なんで議事録は設計が発行するんで。あ、今回発覚した懸念点は以下の3つです。←え、別に説明いらないって?
1. 設計時の材料に対して、強度に関わる配合材料の比率が下がっていることが図面に反映されていない。
2.強度実験が現行法規と前法規の狭間で現行法規での実験ができていない。
3.図面と実験レポートが紐付いていない。
今回の材料変更は原価低減活動(原低)として、調達部メインでやったことです。
「現行の社内ルール上、問題ありますか?」
「現行ルールでは材料変更は納品メーカーの実験レポート添付でOKです」
法規認証部の部長が確認したように、現行ルール上は問題ありません。ただ、万が一、事故が発生した場合、社内システムで履歴が追えないし、欠陥隠しとされたら炎上する可能性を否定できません。
そこで今回、設計部の呼び出しで緊急会議となり、調達部は冒頭から怒り心頭で設計に食ってかかってきました。
「他にありますか?」
生産技術の課長が皆様に問いかけます。
「いえ、続けましょう。大切なことは、今回の懸念点が顕在化したとして、お客様に危害がないことです。そのための洗い出しです。誰か1人、どこの部署に責任を取らせる為に集まって貰った訳ではありません。会議出席者は全員、今は役職ではなく、一技術者としての責任で発言をしてください」
その発言が一番、責任が重いって思わないのかな、部長。
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