第6話【依頼選び〜等級?なにそれ美味しいの?〜】
モンスターってのは架空上の生き物である。
角の生えたドラゴンや、極悪非道なゴブリンなんてのは所詮物語の中で登場するだけで、実際に居たりはしない。
だが、今の俺は違う。
異世界に飛ばされた俺たちは、そんな架空上だけの生き物たちと向き合い、そして戦って行かなくてはならない。
この状況、もしかしたら羨むやつも居るかもしれない。というか、前までの俺はずっとそう思って来た。
しかし、やはり空想も現実になってしまえば案外良いものでも無かったりするのだ。
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テオさんから昔冒険者をしていた時に使っていたという武器を貰った俺たちは、朝食を食べ終わると昨日と同じ様に依頼の紙にサインをして貰い、メディー牧場を後にした。
そして今、俺たちは冒険者ギルド内の受け付けカウンターの前に居る。
「――はい、これで依頼は完了です。報酬をどうぞ。」
「おう、ありがとな。」
俺は受け付けお姉さんの方に片手を伸ばすと、報酬金額の銅貨5枚を貰う。
これで前貰ったのと合わせて10枚か、ってことは……
メディー牧場で朝食を食べさせて貰っている時、みさといわく、この世界のお金の価値は、
金貨(1枚で銀貨10枚分)
↑↑
銀貨(1枚で銅貨10枚分)
↑↑
銅貨(一番下)
らしい、だから今の合計所持金額は、銀貨1枚分って訳だな。
すると、そこで何か俺たちの変化に気づいたのか、お姉さんは、首を傾けて俺の背中に背負ってあるものを見ながらこう言ってきた。
「あれ?その背中に背負ってある武器は何ですか?」
「ん?あぁ、これはだな――」
そこでさっき起きた一部始終を軽く説明してやると、お姉さんは笑顔でこう返してきた。
「なるほど!じゃあこれでモンスター討伐の依頼も受けられますね!」
「ま、そうだな。」
コイツ、昨日の夜はあんなに弱気だったってのに、まるでそれが俺の妄想だったんじゃねぇかって思うくらい面影無いな。
弱音を吐いても仕事中にそれは絶対出さない。
そう決めてるんだろう。
コイツもこうやって頑張ってるんだ、俺も頑張るとするかね。
すると、そんな俺の心を読んでいたかの様にみさとが後ろから元気よく、こう言った。
「じゃあ、武器も手に入ったことだしやりましょうか、モンスター討伐!」
「お!それ良いな!」「うんうん!私もやりたい!」
「お、お前らな……」
確かに頑張ろうとは思ったが、流石に今からモンスター討伐はちょっとな……
「っていうかみさと!お前俺の考えを読んでいたかのように喋りだしたよな!」
「うん、読んでたわよ?」
「はッ!?そうだった!」
ユニークスキルのこと忘れかけてたが、コイツ人の心を読めるんだった!
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その後、俺以外の3人は完全にモンスター討伐したいムードになり、それに対して当然俺が反対することも出来ず、一発目のモンスター討伐依頼はどれにしようか、という話になった。
「皆さんはまだ一番下の等級ですので、出来るのはこういう依頼ですね。」
「ん?等級ってなんだ?」
「あぁ、等級というのはですね――」
俺がお姉さんの発した聞き覚えの無い言葉、「等級」に説明を求めると、お姉さんは説明を始めた。
説明内容は前居た世界と常識がまず違うため度々分かりずらい部分もあったが、簡単にそれをまとめると、等級というのは全部で6段階あるもので、その冒険者の実力を分かりやすくしたランクの様な物らしい。
等級の名前は上から、
上級上位
上級下位
中級上位
中級下位
下級上位
下級下位
らしく、等級を上げるには度々現れる昇級クエストなるものをクリアしないといけないらしい。
(ちなみに当然、俺たちの等級は一番下の下級下位だ。)
「ってことは、俺たちが上の等級に上がらない限り、強力なモンスターとは戦えないってことだよな?」
「はい。」
「それで今の状態でも討伐可能なモンスターがコイツらと。」
「そうですね。」
俺はカウンター上に置かれた何枚かの依頼が書かれた紙を見る。
そこには、ゴブリンやスライムなど、比較的ポピュラーなモンスターの名前が書かれていた。
やっぱりコイツらは、アニメとかと同じで弱いのか。
もしかしたらファンタジー物の作品を作った作者は、異世界での生活をしたことがあるヤツらなのかもしれないな。
「この中だったらスライムが良いわね、だってあれでしょ?青いあの可愛いやつでしょ?」
「いや、それはゲーム内の話で、必ずしもこの世界でもそうとは限らんが……」
まぁだが、確かにこの中だったらスライムが一番妥当だろう。
ゴブリンとかは意外に強そうなイメージあるからな。
俺はスライム討伐の依頼の紙に視線を移した。
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下級下位クエスト〘スライム討伐〙
・内容:スライムを一体討伐する。(討伐確認の為に、袋にスライムの一部を入れてギルド内まで持って来る事。)
・報酬:銀貨1枚
・場所:ヨーセル森
・期限:特に無し
・依頼主:冒険者ギルド
・備考:初めて受ける依頼にどうぞ。
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なるほど、スライム一体で銀貨1枚か――ってことはう○こ集めの2倍ってことだよな……?こりゃすげぇ。
まぁ、命が掛かってるんだから当たり前で、これでも少ない方なのかも知れないが。
もしかしたら俺たちがしてたメディー牧場の依頼は、子供が夏休みにする短期バイトの様な、そんな立ち位置なのかも知れないな。
「じゃあこの依頼で頼む。」
「はい、分かりました。では、今回は依頼の紙は依頼主がギルドであるため持って行かなくて大丈夫なので、皆様はスライム討伐を確認した後、この袋の中にスライムの切れ端を入れて持ってきてください。」
「了解。」
俺は受け付けお姉さんから皮でできた小さな袋を受け取る。
こうして、俺たちの初めての討伐クエストが始まった。
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