第2話【町に着いたよ〜冒険者ギルドへ〜】
中世ヨーロッパの街並みが醸し出す雰囲気は、日本やアメリカなどとは違う。
実際に行った事は無いから分からないが、まるで大昔にタイムスリップしたかのような、きっとそんな気分になるんだろう。
そして今、俺はそれと似た感覚に包まれている。
「すげぇ……まるで本物の中世ヨーロッパに来たみたいだ。」
というか、きっとさっきの巨人のようなモンスターに追いかけられるという経験をしなければ、俺はきっと中世ヨーロッパの建物が残る歴史ある場所にでも飛ばされたんだと思うだろう。
――いや、やっぱ今の発言は取り消しだ。あんな経験しなくても、どうせ今目の前に広がっている光景を見れば、同じ世界だなんて絶対思わないだろう。
「凄い……本当に地球じゃないのね……」
「ま、ここが地球ならあんなのは普通に歩いて無いわな。」
俺は砂利道の先にあった町、ラペルに入ってすぐ、目の前で村人2人がしている会話を聞く。(ちなみに町の名前は入り口に書いてあった)
「昨日はいつもよりゴブリン討伐数が多いらしいな。」
「冒険者の方々が頑張ってくれてるのかしらね。」
この会話、ところどころにファンタジーな単語が入ってはいるが、さっきした経験もあって、そこまで驚きはしない。
(転生させたやつの気遣いなのか、この世界のヤツらの言葉は正常に聞き取ることが出来た。)
だが、その会話をしている片方の村人、そいつの見た目が完全に人では無いのだ。
服の袖から見える青い鱗に包まれた肌、鋭く伸びた黒い爪、そして頭に生えた2つの角。
龍人とでも言うのだろうか、その人物が普通の俺たちのような村人と話しているんだから、それだけでこれが前いた世界とは違うという事を感じさせていた。
「とにかく、まずは泊まれるところを探さないとな。」
「そうだね。」
だが、ちなつやくるみが言う通り、だからと言って仕事をしない訳にはいかない。
俺はこの世界の仕事やルールは知らないが、働かなくては生きていけない。その前提はきっと一緒だろうからな。
(まぁ俺は働かなくても親に養って貰っていた訳なんだが。)
「よし、まずは誰かに声を掛けて、働く場所を教えて貰う事にするか。」
だから町に着いてすぐに、俺たちは早速この世界で生きていくための仕事探しをする事にした。
---
それから30分後、俺たちは冒険者ギルドという建物の前に立っていた。
あれから数人の村人に声を掛け、俺たちはこの世界の仕事事情を教えて貰った。
簡単に言うとこの世界での職は、四割が農家、二割が大工、そして残りの四割が冒険者。この世界にいる害獣、要するにモンスターを狩る仕事らしい。
そして俺たちのようにこの歳までこの世界での生き方を知らない人間は、農家にも大工にもなる事は出来るが、すぐになる事は出来ない。
しかし、それに比べて冒険者は、戦うことが出来れば良いのが条件だから、すぐになる事は出来る。
だから、自分がそう名乗れば冒険者らしい。
そしてイコール、俺たちでもなれるという事だ。
だから俺たちは今、村人に教えて貰ったのを頼りに、冒険者ギルドまで来た。のだが――
「えっと……これほんとに入るのか?今から?」
なにせさっきから冒険者ギルドを出入りしているのは物騒な剣を背中に刺している屈強な男や、身長と同じくらいデカい杖を持っている魔法使いのような女性ばかりで、俺たちのような日本の情報社会で生きてきた人間には、とても入る様な場所では無さそうだった。
「とうまが怖いんなら私が先に入ってやる。」
「な、別に怖くねーし?」
だが、ここで突っ立っていても何も変わらない。
だから俺はそうちなつの気遣いに強がると、勇気を出して足を動かし、冒険者ギルドの扉へと近づいて行った。
---
「失礼しまーす……」
申し訳程度にそうボソリと呟きながら、重い扉を引いて4人で中に入ると、一気にギルド内に居た冒険者の視線が俺たちに集まる。
中に入ると、正面におそらく受け付けのお姉さんであろう人がいるカウンターがあって、入り口すぐの右側の壁に木でできた掲示板。左側には冒険者が使う椅子&机が多数。天井は高く、壁沿いに取り付けられた階段から上がる中二階にも机や椅子が置かれていた。
建物の内装は木と石のみで出来ており、まんま中世ヨーロッパ建築という感じだ。
だが、そんな事よりも冒険者たちからの視線が気まずい。
「なんだアイツら、戦いに行く格好じゃないだろ、舐めてるのか?」
「あの子たち、見ない顔ね。」
「今の時期に新人か、珍しいな。」
「どうせまた初心者のフリしたヤツらなんじゃねぇか?――なんて、それは無いか。」
ギルド内がそこまで大きく無いという事もあり、話し声をちゃんと聞き取ることが出来た。
――覚悟はしていたが、やっぱり色々言われるよな。
「――とりあえず、受け付けに武器が無くても出来る仕事が無いかどうかを聞くか。」
「そうね」「だな」「だね」
入り口で冒険者たちの視線に若干気圧されてはしまったが、とりあえず俺たちは受け付けに行く事にした。
「おはようございます!――って、見ない方ですね。この町は初めてですか?」
「そうだ。」
俺の顔を見て元気よく挨拶をしてきた金髪ボブのお姉さんは、俺たちがこの町の冒険者では無いということに気づき、首を傾げながらそう聞いてくる。
「ではまずはパーティー全員の等級を教えて頂い――」
「い、いや、」
「なんですか?」
「俺たち冒険者とかじゃないんだ。」
「え?」
露骨に嫌な顔をされた。
まぁ相手は仕事でやってるんだから当たり前の反応だとは思うが。
「冒険者様では無いと言う事でしたら、モンスター討伐の依頼でしょうか?でしたら後ろのカウンターで――」
「いや、そういう事でも無くて、俺たちは今武器が無くても出来るクエスト?を探してるんだよ。」
「は、はぁ……」
「あるか?」
「まぁあるにはありますけど。」
そういうと、お姉さんはカウンターの下に置いてある山のような依頼の紙を取り出し、置くと、ペラペラとめくって、その武器が無くても出来るクエストと言うのを探し始めた。
そして、
「これです。」
お姉さんは、一枚のある依頼が書かれた紙を俺たちに渡してきた。
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