第15話
8時に清を食べた化け物はグラウンドの中央に戻って静かになった。
けれどどこかに移動する気配は少しもない。
「ここに食べ物があるってわかったのかな」
窓の外を見つめて理沙が呟く。
「だとしたら化け物はもうここから動かないね」
答えたのは妙子だ。
妙子はさっきから利秋をジッと見つめている。
「なんだよ?」
その視線に気が付き、椅子に座っていた利秋が顔を上げた。
ここに閉じ込められてからもう3人の人間が死んでしまった。
みんなの顔には疲労が現れている。
「化け物がここにいついたのはあんたのせいじゃないの?」
妙子の言葉に利秋が目を見開いた。
「はぁ? なに言ってんだよ。なんで俺のせいなんだよ!」
突如かけられた疑いに利秋は椅子をなぎ倒して立ち上がる。
椅子が倒れる大きな音が教室中に響いて、緊張が走る。
「だってあんたが清をエサとして差し出したじゃん! ここには食べ物があるって化け物に教えたようなもんでしょ!?」
「清の前に2人も食べてんだから、そんなの関係あるかよ!」
ふたりの言い争ういの間に割って入る用に理沙が妙子に近づいた。
「私も妙子の意見に賛成する。さっき清を食べさせなければ、化け物はどっか行ってたかもしれない」
「なにふざけたこと言ってんだよ!」
利秋は顔面層把握になって叫ぶ。
妙子と理沙のふたりは聞く耳を持っていなかった。
「利秋は悪くないよ。あの化け物、ここに来てからずっと動かないだろ」
そう言ったのは昂輝だった。
昂輝の言葉に利秋がホッとため息を吐き出す。
妙子は昂輝からのフォローに内心舌打ちをした。
化け物がここからいなくならない理由なんてこの際どうでもいいのだ。
問題は9時の生贄を誰にするかということ。
清のときもそうだったけれど、自分が死にたくないのなら矛先を誰かに向けないといけない。
こいつなら次にいなくなってもいいと思える相手。
それは利秋だった。
残っているメンバーの中で一番乱暴者で、清をイジメていた本人。
クラスの和を乱すことが大好きなのか、みんなに迷惑をかけてきた人。
「化け物うんぬんは置いといてさ、利秋はどうしてあんなに清のことを嫌ってたんだ」
そう質問したのは仁だった。
仁も、妙子たちの味方だ。
利秋を擁護しようとしている昂輝が黙り込んだので、ひとまずは話題を変えてくれた仁に感謝だ。
「別に。もう死んだんだから関係ねぇだろ」
利秋が吐き捨てるように言う。
「もう死んだんだから言えるんじゃないの?」
妙子は更に追い詰める。
利秋は妙子を睨みつけた。
バチバチと音がしそうなほどに視線がぶつかる。
普段なら妙子の方がそらしていただろうけれど、今は目をそらすことはできなかった。
死にたくない。
その一心だ。
「利秋はまだ生きてる。これから先私達が清みたいな目にあうかもしれない。だから知っておきたいよね?」
理沙が残っているメンバーへ視線を向けて同意を仰ぐ。
「そうだよな。今度は俺たちがイジメられるかもしれない。そんなのゴメンだ」
仁がすぐに同意して、利秋が視線を伏せた。
これで利秋はどうしてイジメを行っていたのか告白しないといけなくなる。
利秋の性格の悪さがどんどん露呈していけば、きっと次の生贄にふさわしいとみんな思ってくれるはずだ。
妙子は心の中でその展開を期待した。
「ちょっと待って」
だけどそれを止めたのは恵子だった。
恵子は相変わらずのすまし顔で、ジッとみんなのことを観察するように見ていた。
そしてここぞというときに邪魔をしてくるのだ。
だから恵子のことは大嫌いだった。
「利秋は清の秘密を知ってるんだよね? それを言わない代わりに清が生贄になった。今ここでそれを暴露させるつもり?」
やっぱり、それを言われると思っていた。
妙子は歯ぎしりしたい気持ちを抑え込んで、笑顔を浮かべた。
「清はもう死んだの。その清の秘密がなんだったのか、それは本当にイジメに発展するようなものだったのか、知っておいてもいいと思わない?」
できるだけ冷静に、焦りを表に出さないように話す。
それでも恵子は納得していない様子で腕組をした。
「とにかく、どうしてイジメてたのか教えてよ。これからもクラスメートでいるんだから」
理沙が恵子に構わずに話を促す。
利秋はなにも答えない。
重たい空気が教室内に立ち込める。
「言えないってことは、清には非がないってことかぁ? それなのに、イジメてたんだな」
「違う!」
仁からの質問に慌てて否定する。
その額には汗が滲んでいた。
妙子もイジメにはそれなりの理由があったと感じてる。
じゃないと清があれほどまで従順になるとは思えないからだ。
でも、利秋がここまで清の秘密を守るのは予想外のことだった。
もしかしたら、清の弱みとは他の誰かのプライベートなことが絡んでいるのかもしれない。
利秋が守りたいのはそっちなんだ。
だから、清へ向けて秘密をバラすと脅したのは方便にすぎない。
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