【第4部〜西洋の神々編〜】第51話 五大厄災

 ようやくここまで来た。夢の中で見た未来が順調に進んでいる。魔王も10人になった。私は魔界史上初めて統一した闇の女帝・虞帝(ユー・ディ)として即位した。内政を整えたら、いよいよゲートの確保に向かう。

 前ループでは、魔王10人で戦った後、私が阿籍(ア・ジー)の前に現れると、戦闘は終了した。

(では最初から私が説得すれば良かったのでは?)

この疑問が拭えない。女帝の身で、こっそりと城を抜け出すのは難しい。ゲートの下見を提案し、強引に承諾させる事に成功した。その代わり、魔王2人を連れて行く事になった。

「では、ロードとビゼルでお願い」

ビゼルは露骨に嫌そうな顔をし、ロードは目線をビゼルに合わせず、仕方なさそうに頷いた。

 すぐに出発し、ゲートに辿り着いた。

(そうそう、夢で見た感じだ)

夢の中で見た景色と同じで、もう驚きもしない。確かめる様に草木を掻かき分けて進むと、辺り一面の花畑の中心にゲートはあった。

 ゲートの下には、我々に気付いて警戒する様に立っている鎧武者の男がいた。遠目から見ても、阿籍だと分かる。胸が高鳴り、心が躍おどる。笑顔で駆け寄る。

「陛下!」

ビゼルが何やら叫んでいたが、私の耳には届かない。すると斬撃が飛び、私の目の前の地面を割った。

「キャッ」

砂埃が舞い、腕で払いながら阿籍を見た。

「そこから一歩でも進めば、女でも容赦はしない」

「待って、阿籍(ア・ジー)!私よ、小虞(シャオ・ユー)よ!」

飛んで阿籍の近くに行こうとすると、袈裟斬りにされた。

「進むなと言っただろ?」

意識が遠のきながら、そう言っている声が聞こえた。

「陛下、陛下しっかり!」

目を開けると、ロードが心配そうな顔して覗き込んでいた。ロードに膝枕され、柔らかくて良い香りがするな、と思った。

「ゲートはどうするんだ?あいつはお前の事を知らなさそうだったが?謀ったのなら、約束通り死んでもらうぞ!」

「待って、チャンスを頂戴。その代わり、こっち見ないでね」

私はビゼルに背を向けると全裸になった。

「阿籍、私の事を忘れちゃったの?見て、丸腰の女を斬るつもりなの?」

「ふしだらな、俺の妻の名を騙るとは許せん!」

「本当に私は貴方の小虞なのよ。どうしたら信じてくれるの?」

私は阿籍が着ていたマントを羽織られると、抱きかかえられた。

「抱けば分かる」

「えっ!そんな…」

ゲートの裏に砦が築かれていて、そこに連れ込まれた。阿籍に口付けされ、胸を揉まれながら吸われた。指と舌で濡れて来ると、挿入れられそうになった。

「わぁぁ、ダメダメダメ!お願い。抱く前に私の話を聞いて!でないと、舌を噛かんで自害するわ」

阿籍はまだ、私が不死とは知らないので、舌を噛んだくらいでは、死ねない事を知らない。抱き起こされ、「聞いててやるから話してみろ!」と言いながら、私を愛撫し続けた。首筋から肩にかけて舐められ、胸に触れる手は止まらない。

 阿籍は実は超絶イケメンだ。愛撫されるうちに段々と私もその気になって来る。

(流されてはダメだ。処女でなくなったら聖女の称号を失う。そうなると唯一神に勝つ事は出来なくなる)

私は一通り阿籍に説明したが、止めようとはしてくれない。

「今更止められんよ」

「ごめんなさい。本当に無理なの。決して嫌いな訳じゃない。ううん、むしろイケメン好きだし…強いのはカッコ良いし。友達に自慢出来ちゃう。でもダメなの。お願い」

愛撫される手も舌も止まらない。男性が相手で初めて絶頂に達した。Hはしなかったけど、ここから先は口に出しては言えない事をさせられた。

「小虞、本当に生まれ変わったんだな?」

そう言われて、阿籍に口付けをされた。

「お前がいるならゲートはもう俺には必要ない。好きに使えば良いさ」

「ありがとう、阿籍」

前ループとは全く違う展開でどうなるかと焦ったが、何とかゲートは確保出来た。待ってろよ、天界。ヴィシュヌが前ループとは違う展開で現れるかも知れない。身を守る方法を考えてから地上のゲートを開かなきゃ、誰も守ってくれない。

 阿籍に抱きかかえられたまま、ルシエラの待つ城に戻っていた。胸に頭を乗せ、恥ずかしくて顔を手で覆い隠した。

(私のファーストキス…。それに裸を見られたのも触られたのも初めてよ)

「責任取ってよね?」

「ん?何か言ったか?」

「私、初めてだったんだから!全てが終わったら責任取って結婚してよね?」

「何を言っている?もう既に妻だろう」

あー、この人は死んで生まれ変わったけど、まだ私と夫婦のつもりなんだと驚いた。

「私、まだ納得してないんだけど?私を斬り殺したじゃない?話を聞いて、待ってよって言ったじゃないの」

「陛下、斬られた衝撃で気を失われましたが、項羽が花を操り、クッション代わりにして無事でした。斬られた傷も深くはなく、初級回復ヒールで治る程度で手加減されておりました」

ビゼルが答えた。

「もう1つあるわ。何で私が本物かどうか判断するのに抱かれる必要があったのよ?」

「それは、抱き心地とかでは?」

「あんたには聞いてないのよビゼル!」

「国色天香を知っているか?」

「唐の詩人、李正封の詩でしょ?」

「唐?詩とは何だ?」

「国色(こくしょく)朝(あした)ニ酒ヲ酣(たの)シミ、天香(てんこう)夜ニ衣ヲ染ム」

「知らない詩だな。それに、国色天香は昔からある言葉だ」

「そうなの?」

てっきり李正封が作った造語だと思ってた。

「どう言う意味なんだ?」

ビゼルが尋ねて来た。

「う~ん、私が言うのも恥ずかしいけど、意味は2つあるのよ。阿籍が私に使った意味で言うと、国色は、国1番の美女の事で、天香は、この世のものとは思えない、天のものかと思うほど良い香り(匂い)がするって言う意味で、美しい女性に対して使う形容詞よ」

「もう1つの意味は?」

「結局似た様なものなんだけど、一言で言うと牡丹の花よ」

「?」

「中国では牡丹が最も美しい花とされているの。花の王様が牡丹とされているわ。だから美しい花の王様なので、国母とされる皇后陛下の例えに使われたり、美しい女性を牡丹に例えたりするのよ」

「つまり、国色=牡丹もしくは美女の事を指すのよ」

「なるほど」

「1つ間違っているがな」

「何が間違っているの?」

「天香は桃の花に似た香りがするが、本当に桃の様な味がするのだ。お前からは確かに、匂いも味も天香だった」

「止めてよ、変態!」

「誰が変態だ!」

「そもそも顔を見れば分かるんじゃないの?」

「面影はあるがな?小虞はこんな小娘じゃなく、もっと色気のある女だった」

「悪かったわね!乳臭い小娘で!」

「そこまで言っていないが…。今のお前は17歳だろう?俺の知っている小虞は31歳だ。前世のお前が俺の目の前で自害した姿は、まだ目に焼き付いている」

頬を伝う涙は、前世の私を想う涙だ。1人の女性を2700年近く、想い続けられるものだろうか?私は前ループよりも15年も早く魔界のゲートを確保した。未来は少しずつだが、確実に変わっている。

 城に戻ると、ルシエラは平伏した。

今後は全力で私を支えると、忠誠を誓った。その場でルシエラを宰相に任命して、全権を委ねた。夢の中の私もそうしていた。

 正直、私はただの女子高生だ。政治なんて何も分からない。授業で習った程度だし、歴史は好きで覚えたけど、公民や現社(現代社会)は苦手だし、地理も得意ではない。テストの点で言うと、歴史は90点以下を取った事は無いけども、地理はせいぜい80点前後、公民、現社に至っては70点前後も取れれば良い方だ。欠点スレスレの時だってあったくらい苦手だ。もっと勉強しておけば良かったなぁ。しみじみと痛感している。

 私は、魔王達全員と模擬戦を行った。連日の様に繰り返して戦った。来る日も来る日も戦った。そのお陰で、固定スキル以外のスキルは、模倣ラーニングで習得した。そしてレベルが遂に1000を超えた。今の私は、間違いなく人類最強だ。魔王のレベルは約10万だけど…。

 ロード達をもう魔王とは呼べない。大魔王として、魔界を10分割して領地を与えた。その領地を更に3分割し、彼らの副将らを新たに魔王として統治させた。大魔王達は中央で政治や軍事を司ってもらう。

「魔獣狩り」を提案した。

魔族達も魔獣には苦しめられた事もあり、狩りと言う名の討伐に皆んな賛成した。フェンリルのフェンにも会いたい。前ループで私が名付けていたっけ。それにそろそろ隊商が、四手熊(クワトロハンドベアー)に襲われる頃だ。被害が出る前に討伐する。

 それに「五大厄災」のうち、蛇龍(ミズガルヅ)、神猫(バステト)、狂神象(ベヒモス)をまだ見た事が無い。前ループと違う行動を取れば未来に影響があるに違いない。それが吉と出るか、凶と出るか分からないけども。

「所で、五大厄災の中で1番強いのはどれなの?」

「どれも災害級の強さですが、1番は蛇龍(ミズガルヅ)でしょうね」

ルシエラが教えてくれた。

「狂神象(ベヒモス)じゃないのか?」

ビゼルが話に割り込んで来た。

「いえいえ、実は神猫(バステト)が1番強いと聞いたわ」

アーシャが珍しく口を開いた。

アーシャは普段、フードで頭を覆い、格好も男物を着ていて声も低いので、男性だと思っていた。前ループで実は女性だったのを知っていたから、別に驚かない。魔王達は別に性別なんか気にしていない、と言うか興味無さそうにしていた。

「意見が分かれるって事は、甲乙付け難いくらい皆んな強いって解釈ね」

統一された魔界の脅威は、魔獣しかない。これを取り除くべく、軍事行動を起こした。フェンリルに会う為、前ループで出会った場所付近に、新鮮な獲物を山積みにして誘い出そうとした。

「警戒して来ないかも知れないから、離れて待とうか」

と言って皆んなを下がらせて、私1人で待った。他の大魔王がいたら絶対に反対されていた。案の定、女1人なんて警戒するには値しないと思われたのか、魔獣が現れた。残念ながらフェンリルでは無くて、砂虎だった。前ループでは、コイツに驚いた地龍に振り落とされて、上半身の骨が粉々になったんだっけ?

 虎に似ていて、サーベルタイガーの様な牙を持ち、毛の色は砂の様な色で、虎の黒い縞模様部分は白色をしている。家族なのか、5、6頭の群れに取り囲まれた。

「おしっこ漏らしちゃいそう。めっちゃ怖い」

見た目は虎だ。囲まれて怖いのは当然だ。

 低い唸り声を上げて威嚇しながら、にじり寄って来る。凄まじい殺気を浴びて、全身の鳥肌が立った。

「怖がるな。私は強い。私は強い。私は…」

呪文の様に自分に言い聞かせた。

「陛下!」

取り囲んでいた魔兵が弓矢を一斉に放つ。

砂虎(サンドタイガー)は、飛んで来る矢を全く意に返さず、私に牙を剥いて飛びかかって来た。

 上半身を逸らしながら、剣を薙ぎ払って1匹目を仕留めた。ゆらゆらと左右に揺れてフェイントを入れながら、2匹目の攻撃を躱しざまに横に払って斬り倒した。2匹が倒されると警戒して、迂闊に近寄って来なくなった。1匹が私の注意を引きながら、残る2匹が背後に回ろうとして来る。

(そうだ、なんで剣にこだわっているんだ私は?せっかく銃神スキルを入手したんじゃないか…)

背後から飛び掛かって来た砂虎を空を飛んで躱し、拾った石を思いっきり投げ付けた。貫通効果が付与されている為、砂虎(サンドタイガー)の腹に風穴を開けた。

続け様に投げ付けて、もう1頭も仕留めた。最後の1頭は、後退りをすると、逃げ出した。

しまった。

逃げるとは思っていなかった。他の仲間を呼ばれたり、何度も付け狙われるのも面倒だ。ここで仕留める。

『光速飛翔(ライトニングレイヴン)』

砂虎の正面に回り込んで下から上へ斬り上げたが、身体を捻ひねって躱され、左前足を斬った。

「凄い身体能力ね。今ので殺せたと思ったわ」

左前足を斬られ、次の私の攻撃で死を覚悟しているはずだ。一矢報いるつもりなのか、姿勢を低くして私を睨み、唸り声を上げて警戒している。

左前足を失った状態で、全身バネの様にしならせて飛び掛かって来た。剣を振り上げた瞬間、砂虎が笑った様に見えた。

「うぐっ」

背後の茂みから飛び出して来た砂虎に、左脇腹を食いちぎられた。

「しまった、もう1頭いたのか…」

意識が遠のいて行く。

 気が付くと、2頭は私の身体を貪り食っていた。1頭は内臓を引き摺り出して食い、もう1頭は太腿を食らっていた。通常、ネコ科は獲物の首を噛んで窒息死させてから喰らう。私の場合、腹を割れて動かなくなった為、絶命したと思い内臓から食べ始めたのだ。

 不死である事は地獄だ。こんな目に合っても死ねない。それどころか身体状態異常無効で、失った身体が修復していくので、彼らにとって私は、永遠に減る事のない最高のご馳走なのだ。

 食われながら頭を傾けると、魔兵達はフェンリルに襲われて食われていた。私を助けられないはずだ。

(食べられちゃってる…。私は美味しい…?)

再び私は意識を失った。

 中国において唐代以降、盛んに人肉食が行われた。我々が世界史で習う「資治通鑑」にもその記述が見える。遣唐使で訪れた倭人(日本人)を町に案内した時、皮を剥いで露店の軒先に吊るされている人肉を見て、腰を抜かすほど驚き、やがて平静を取り戻すと、狗肉(犬の肉)より安く売られているのか?等と興味深そうに聞き、書き留めていた、と記されている。

 また、人の肉は、「二本足の羊」と呼ばれ、羊肉に似た味がすると言う。最も美味いのは小児の肉であり、子供の肉がトロけるほど柔らかくて1番美味しく、次に女性が美味く、特に乳房の肉が最高だと言う。男性の肉には堅い筋があり、肉も堅くて美味しくなく、アル中の肉は粕漬けの様な味がしたと書物に記されている。

 また唐代以降、人肉料理に関する書物が盛んに書かれた。人の肉をも料理として昇華させた国は、世界中を探しても中国しかない。

 身体中を舐め回されて、くすぐったくて目が覚めた。既に修復された私の身体に付いた血を舐めていたのは、フェンリルだった。

「目が覚めたか?お前を食おうと思っていたら、身体が治っていくのを見てな、もしやと思ったが、死者の臭いがしないな。お前は…」

「ええ、不死者よ。貴方達を天界(バルハラ)に連れて行く者よ」

「おぉぉ、やはりそうか!」

 フェンリル達は言い伝えで、不死者が自分達一族を再び天界に戻してくれると言うのを信じていたのを、夢で、前ループで見たから知っている。

「主に忠誠を誓う」

「有難う、フェン」

「フェン?」

「今から貴方の名前はフェンよ」

立ち上がり、大きく背伸びをした。

砂虎(サンドタイガー)は、フェンリル達に食べられていた。

「うぅ…まだ食べられた身体が痛い気がする。それにしても、私の仲間を皆んな食べちゃったのね?」

『死者蘇生(リアニメーション)』

魔兵達は生き返ると、フェンリル達に身構えた。フェン達は唸り声を上げて威嚇する。

「待って、この子達はもう味方よ」

「この五大厄災のフェンリル達が?」

信じられない様な顔で、お互い顔を見合わせていた。

「ねぇ?近くに四手熊(クワトロハンドベアー)がいるでしょう?案内して欲しいの」

「ふむ、アレの縄張りには我らでも近付かぬ。この戦力では勝てぬぞ」

「大丈夫よ。ボス以外は倒せる。ボスと戦う頃には援軍が到着するはずよ」

「それならば良いが。無理はするなよ」

そう言うと、フェンの背に跨がった。振り落とされない様に立て髪にしがみ付くと、景色が飛ぶ様に流れて消えて行く。新幹線の上にしがみ付いているみたいで、とてつもなく怖い。これに比べたら、どんな絶叫マシーンも児戯に等しく思える。

「気を付けろ、飛ぶぞ!」

そう言うと地面を蹴った。その瞬間、地面が割れ、後続の魔兵を飲み込んだ。飛んだ上空から見たそれは、毛の生えた象。マンモスに似てるが、牙はあれほど反り返ってはおらず、その中間ほどの長さだ。降り立って正面から見ると、象とは似ても似つかず、むしろサイと牛を足して2で割った感じで、鼻の長さも少し長いくらいで中途半端、何とも醜悪な姿をしていた。前ループで、大聖歓喜天(ガネーシャ)に狂神象(ベヒモス)と呼んで、あんなのと一緒にするな!とキレられたのも頷ける。

『死誘鎮魂歌(レクイエム)』

効果が無い。

『聖光讃美歌(ホーリー)』

光呪文の即死呪文も効果が無い。

「嘘でしょ?」

狂神象(ベヒモス)のステイタスを見ると、「即死無効」スキルがあった。

『光之神槍(ライトニングジャベリン)』

当たったが、厚い肉の壁でほとんどダメージを受けていない。

「どうやって倒すの、こんなの?」

思わず愚痴が溢れた。

「雷刃(レェィレェン)」

感電するかと期待したが全く効果は無かった。

「そう言えば、こいつ食べられるのよね?ユダヤ教の神話か何かにあった気がする。世紀末に義人(聖人の称号の1つ)の食料になるとか書いてなかった?」

「主よ、良く知っているな。確かにコイツは美味いんだ」

舌舐めずりしながらフェンが忍び寄る。

「へぇ~美味しいんだ?」

そう聞くと食べたくなって来たから不思議だ。

 ゲテモノは美味いと相場が決まっている。ダイオウグソクムシとかもその1つだろう。見た目は完全に大きなダンゴムシだけど、実はフナムシの仲間だ。食べると、蟹味噌と海老の様な味がすると、今では人気の食材だ。私も食べた事はあるけど、見た目で無理だったので、中身だけ出してもらって食べた。悔しいけど、美味しかったのを覚えている。

 私が斬り込むと、鼻息は荒く、牙を剥いて噛み付いて来た。

「?もしかして、私を食べようとしてる?」

「雑食だからな、腹が減ったら食べる為に襲って来るぞ」

「そうなのね?肉は食べないのかと思った…」

思い返せば前ループは負けっぱなしだった。今ループでは、ロードから1本取れ、フレイアやクラスタとも互角以上に渡り合った。模倣ラーニングのお陰もある。

技は覚えられても、自力の貧弱さはどうしようも無い。

 レベル17の時の筋力12は、レベル1003となった今でようやく筋力601になった。人間が相手なら楽勝だ。ロードの筋力は10万を超えていた。しかしこの狂神象ベヒモスの筋力は、27万以上もある。パワーの差はどうしようもなく、斬りかかっても分厚い皮膚の上を撫でる程度で、血の1滴も流させる事が出来ない。それなら同じ場所を何度も狙えば良いのでは?と思い、さっきからやっているが、同じ場所にヒットさせるのは難しい上に、当たっても大したダメージを与えられていない。これを一体何度繰り返したら倒せるのか?いや、とても無理だ。何か別の方法を考えなくては、と思い始めていた。

『猛毒吸収(アシッドドレイン)』

狂神象(ベヒモス)の背中に乗って、両手を当てて呪文を唱えた。

 初め、この呪文は、毒にかかった相手の毒を吸い出してあげる呪文だと思っていた。しかし呪文の説明を良く見ると違っていた。

(相手の体力を吸いながら猛毒を与える呪文)であった。

 私を振り落とそうと暴れ回る狂神象(ベヒモス)にしがみ付くのではなく、飛行スキルで飛びながら背中に張り付いた。

たまらずに地面を転がり、背中に張り付く私を押し潰そうとしたが、『完全対物理攻撃障壁(パーフェクトシールド)』を張って耐えた。貫通スキルでも無い限り、この障壁で防げないものは無い。

「巨体が仇あだになったね」

パオォォーンなのかグオォォーンなのか、はっきり聞き取れなかったが、断末魔の叫び声を上げて倒れると、動かなくなった。

『毒回復(アシッドヒール)』

狂神象ベヒモスの屍体から毒を取り除いた。

「さぁ、今日はご馳走よ」

フェンリルは勝利の遠吠えを上げ、魔兵達は歓声を上げて喜んだ。

 手際よく狂神象(ベヒモス)が解体されて行く。牙は素材に出来るとかで、大切そうに渡された。何だか使い道が良く分からないけど、後でルシエラに渡そうと思い、『魔法箱(マジックボックス)』に半分以上の肉と一緒に収納した。

『魔法箱(マジックボックス)』の中の時間は停止しており、食材が腐敗したりしないのである。

 フェンリル達は血が滴したたる狂神象(ベヒモス)の肉にかぶりつき、私達は焼いて塩胡椒をかけたり、野菜と炒めたり、スープで煮込んだりして食べた。肉は堅いのかと思っていたが、ステーキではナイフがスッと通るほど柔らかく、スープの肉はぷるぷる、コラーゲンもたっぷりで、肌に良さそうで嬉しい。味は濃厚で、猪と牛肉を足した様な味がして美味い。皆んな笑顔で食べていた。食は楽しく食べるのが一番よね。無理してお腹いっぱい食べた。まだ半分以上残っているから、当分は兵糧には困らない。

 臭いに誘われたのか四手熊(クワトロハンドベアー)が現れ、フェンリル達がかぶりついている肉に目掛けて突進して来た。振り上げた張り手を躱せなかったフェンリル2頭がモロに受けて、腹を割かれて内臓が飛び出た。更に3頭の四手熊(クワトロハンドベアー)が現れてフェンリルの内臓を貪り食った。

 ダンプカー2台分くらいの大きさはある。立ち上がると5階建てビルくらいの高さだ。人間も動物である為、捕食されるかも知れない、と言うのが本能的に戦慄するほど恐怖を感じる。なけなしの勇気を振り絞って呪文を唱えた。

『死誘鎮魂歌(レクイエム)』

心肺が停止し、即死した四手熊(クワトロハンドベアー)は、ゆっくりと前のめりに倒れた。

『死者蘇生(リアニメーション)』

殺されたフェンリル2頭を生き返らせた。

「主よ、こいつらも美味いんだぞ」

フェンが私の横に並んで来て教えてくれた。

 魔兵達が手際良く解体を始め、爪、牙、皮を素材として渡された。肉の大半を『魔法箱(マジックボックス)』に入れた。

 正直、お腹いっぱいだったけど、どんな味なのか気になって、少量食べてみる事にした。肉は臭みを取る為にハーブやチップで燻して燻製肉にし、串焼きにして塩胡椒や焼肉のタレの様なものをかけて食べた。肉はかなり弾力があるが、これはこれで美味い。聞いていた臭みは取れていて、全く感じなかった。

「ちょっと堅いが、鍋やスープにしてもっと煮込むと柔らかくなって美味しくなりますよ」と料理人に言われた。

「それは楽しみね。帰ったら皆んなで食べましょう」

狂神象(ベヒモス)、四手熊(クワトロハンドベアー)も美味しかったのだ、実はフェンリルも美味しいのでは?と思ってチラリとフェン達を見た。

「ふふふ、食べないけどね」

四手熊(クワトロハンドベアー)が現れた森の方向に向かって進んだ。そうそう、確かにこんな感じの場所を通った気がする。ボスが近いかも知れない。縄張り内は結界になっていて、その恩恵を受けるボスは手強い。

 先を進むと空気が変わった。何かに見られている気配を感じる。前ループでは感じる事も出来なかった。私のレベルが上がったから、感じられる様になったのだろう。これは、ボスの結界に入った事によって感じた気配だ。結界内では、獲物の動きが手に取る様に把握出来る様になる。私達は既に奴の捕食対象だ。いつ襲われても不思議じゃない。

 フェン達がいるとは言っても、犬や狼の嗅覚は人間の1万倍以上と言われているが、熊はその犬の嗅覚の100倍以上と言われている。これはあくまでも動物の場合で、魔獣である神狼(フェンリル)や四手熊(クワトロハンドベアー)の嗅覚が、どれほど優れているのか分からない。結界内の上、相手は嗅覚も優れているので、圧倒的にこちら側が不利な状況だ。

 森林を抜けると開けた平原の様な場所に出た。ここは見覚えがある、そう思った時、向こうから現れた。

でかい…。

平家2軒分、もしくは2階建一軒家くらいの大きさはあるのではないか?この森の王者としての余裕なのか、不意打ちなど仕掛けて来ずに、ゆっくり歩いて向かって来る。足が震えている事に気付いた。

勝てる見込みが薄かった狂神象(ベヒモス)よりも、間違いなくこいつは強い。

(まてよ…)夢の中、つまり前ループでの私は、どうやって倒していたのか?思い出せ…。

 フェンリル達が姿勢を低くしながら、唸り声を上げて威嚇する。それを全く意に返さず、私を睨んで目線を外そうとしない。この中で私が1番強いと思っているのか?それとも、私がここのボスだと感じ取っているのか分からないけど、光栄だね。

 振り上げるモーションも無く、繰り出された張り手は全く見えなかった。それでも剣帝の剣技を身に付けている私は、身体が反射的に反応して爪を受け止めた。しかし、勢いよく吹き飛ばされた。身体を宙で回転させてバランスを取り、着地すると地面を蹴って間合いに入り、剣で薙ぎ払った。斬った手応えが無い。剛毛が鋼よりも硬い鎧みたいだ。そうだ、思い出した。

『聖石像化(ホーリーストーン)』

四手熊(クワトロハンドベアー)が徐々に石になって行く。

勝った。

振り返ってフェン達に微笑んだ。瞬間、首を飛ばされて地面に転がった。首を失くした身体が、ゆっくりと前のめりに倒れて行くのを見ていた。油断した。ボスとしての意地だったのか、一矢報いられた。身体状態異常無効で治るはずの身体が修復しない。結界内だからだろう。それでも四手熊(クワトロハンドベアー)のボスが完全に石化すると、結界は解け私の身体は元に戻った。

「焦ったわ。このまま死んじゃうかと思った」

首をさすりながら立ち上がった。

「討伐完了ね」

「ワォォォーン!」

フェンリル達が勝利の遠吠えを上げるのを聞きながら、その地をあとにした。

 隊商が四手熊(クワトロハンドベアー)に襲われる未来を変える事が出来た。運命と言う名の未来は、自分の意思と力で変える事が出来ると証明してみせた。

 来た道を戻っていると、狂神象ベヒモスを倒した辺りを通りかかった時、何かの気配を感じて振り返ると、いつの間にかケモ耳の女性が立っていた。刃物の様に鋭い爪の長さは20㎝ほど有り、血が滴したたり落ちていた。爪に付いた血を舐めながら、私の方に振り返った。魔兵達は全員、死んでいた。

いつの間に?

姿が消えると、私の横に並んで立っていた。凄まじい速さだ。戦慄して冷や汗が止まらない。私の匂いを嗅ぐと、頬の流れる汗を舐められた。

「美味しいね。貴女以外は要らないわ」

また姿が消えると、フェンリル達が次々と惨殺されて行く。

「何なのコイツ?」

「神猫(バステト)だ」

「コイツが?」

目を凝らして見ると、確かに猫耳だった。なるほど、神猫(バステト)が実は最強説があると言っていたのを思い出した。フェンリル達がまるで赤子の様に、手も足も出ずに殺されていく。フェンは辛うじて攻撃を避けたが、深い傷を負った。

『小回復(ヒール)』

フェンを駆け寄って回復し、剣を構えた。

「貴女は殺さないって言ってるのに、そんなに死にたいんだ?」

剣帝の剣技は、目で見えない神猫(バステト)の攻撃でさえも防いでみせたが、2撃目で剣を持つ右手を斬り落とされた。

「あぁぁぁ!」

痛いフリをして油断をさせると、懐に飛び込んで治った右手で剣を突いた。神猫(バステト)のお腹を掠めたが、擦り傷を与えただけだった。

 背後に回られて背中を蹴られると、一撃で背骨が折れて地面に転がった。そこへ馬乗りになり、手刀で両足の骨を折られると、捻って引きちぎられた。両足を失うと、左手を掴まれて、引っこ抜く様にして左手をちぎられた。

「ぎゃあぁぁぁ!」

悲鳴を上げると顎を掴まれて、握力だけで砕かれた。

「私の負けよ、もう止めて」

「なんで?そっちから仕掛けたんじゃない?責任取りなさいよ」

そう言うと、引きちぎった足の太腿を食いちぎり、私の見ている前で食べ始めた。私の身体が修復されて行くと、「へぇ、治っちゃうんだ?」と言ってニヤニヤ笑った。

「ならこれはどうかな?」

私の腹を割いて、内臓を引き摺り出して、クチャクチャと音を立てながら、わざと私に見える様に食べ始めた。自分の内臓を食べられている所なんて見たくない。顔を背そむけると、修復され回復して行くのが分かった。

「凄いねぇ。これも治っちゃうんだ。貴女がいれば、うちの食料問題は解決よ。皆んなで分けて食べよう」

私を小脇に抱きかかえて、もの凄い速さで走り始めた。

(私は永遠に無くならない餌にされちゃうんだ。逃げないと)

しかし、腕を引き剥がそうとしても、力が強くてびくともしない。それに気付いた神猫(バステト)に、更に強く締め付けられて私は意識を失った。

 意識を取り戻すと、岩穴を掘って作られた様な住居の中にいた。全裸にされている事に気付くと、先ほどの神猫(バステト)がやって来た。

「目が覚めた?男どもが貴女に欲情しちゃって、意識の無い貴女を代わる代わる犯しちゃった」

レ◯プされたの私?

「うえぇぇぇん」

このループは失敗に終わった。もう唯一神には勝てない。絶望で死にたくなった。呼吸が苦しくなるほど号泣した。

「あははは。驚いた?そんな訳無いじゃん。ボク達は、多種族と交わる趣味なんて無いんだから」

髪の毛を掴まれて顔を上げられた。

「良かったね。貴女、まだ処女なんでしょ?でも中には多種族とも交わってみたいって言う変態もいるから気を付けてね」

良かった、と安堵すると更に涙が出て来た。

「ボク、長老に報告して来るよ」

入れ替わりに男の神猫(バステト)が2人入って来た。

「おほぉ。上玉じゃないか」

「見た目は耳の位置が違うだけの神猫(バステト)だからな、どうせ食い殺すなら1発姦ってからでも良いだろ」

両手両足を鎖に繋がれている私は、逃げる事が出来ない。無理矢理キスして来たので顔を背けて抵抗すると、顔を掴まれて代わる代わる無理矢理にされた。舌を入れて来たので噛みちぎろうとしたら、顔を殴られて骨が砕けた。

「ごほっ」

「ごめんごめん。抵抗するから強く殴っちゃったわ」

「ほら、上の口がお留守だぞ」

1人に口淫させられ、もう1人に下の口を舐められた。下腹部がゾクゾクして来る。

(やだやだ何感じてるの。こんな奴らにイカされたくない)

意識とは裏腹に身体は感じ、絶頂に達してしまい、泣きじゃくった。

「そろそろ良い具合だろ?自分だけイったんじゃ、不公平だろ?俺達も気持ち良くしてくれよ」

両足首を掴まれて、足を広げられた。

「うひょお~。良い眺めだ。身体だけなら、俺達と何も変わらないな。んじゃ、頂きまーす!」

「何をしている!」

「何だ、ミネル?お前が連れて来たからって、お前の獲物じゃないだろ?」

「全ての獲物の配分は長老様が決める。その長老様が、その獲物をご所望だ」

私を連れて来た神猫(バステト)は、ミネルと呼ばれていた。

男達を追い払い、鎖を外されて服を渡された。

「まだ処女か?」

こくっと首を縦に頷いた。

「良かったな。涙を拭いてから出て来い」

ミネルは巣穴の外に出て行った。

『自動洗浄(オートクリーン)』『衣装替(チェンジ)』

連続で生活魔法を唱えた。魔法で身体を綺麗にしたが、まだ男達の唾液に汚されている様な気がして気持ちが悪い。神猫(バステト)は神速な上に、尋常ではないくらい強い。逃げるのも戦うのも無理だろう。死地に活路を見出すしかない。それに魔軍にも私が攫われた事が伝わる頃だ。きっと助けに来る。それまでは耐えよう、性的なこと以外は、と悲壮な決意を胸に抱いた。

 長老は私の身長の半分くらいで、いかにもおじいちゃんって感じだった。

「おぉぉぉ。まさかと思うてみたが…」

と言って平伏された。他の神猫(バステト)達は、ぽかーんっとして何が起こったのか理解出来ずにいた。

「早く跪かんか!」

長老に言われ、訳も分からずに従う者がほとんどだった。

「まさか唯一神様の娘御様とは、村の者達の非礼の数々、なんとお詫びすれば良い事か…」

「唯一神の娘…?」

何故それを知っているの?と思い、自分のステイタスを見ると、今まで無かった「虞美人の生まれ変わり」と「唯一神の娘」と言う称号が2つ増えていた。

 神猫と言うくらいだ。元々バステト達は天界で暮らしており、神々のペットだったらしい。ある時、先祖の兄妹が戯れあっていると、共に穴から落ちた。それが、自分達が今ここに、魔界にいる理由だと言った。いつの日か天界に戻りたいと、先祖以来の願いだそうだ。

「それなら話は早い。ゲートは手に入れたの。一緒に天界に行きましょう?」

村人達から歓声が沸き起こった。

私を交えて歓迎の宴が催された。

「ごめんね。酷い事をして」

「ううん、もう良いの。犯されそうになった時、助けてくれたし、恨んでないよ」

「ふふふ、貴女が美味しくて、食べても無くならないから連れて来ただけなんだけどね?私も村の英雄扱いで鼻が高いわ」

イタズラっぽい笑顔をして、髪を掬う仕草をした。

「飲んでる?今日は酔って、嫌な事は忘れてね?仲直りよ」

「乾杯!」

「乾杯!」

ミネルとキャンプファイアーの火を見ながら、「未成年だからお酒は飲めない」と断って、飲んでいるノンアルコールの果樹酒で乾杯した。

 寝床に案内され、ミネルと別れて洞穴に入ると、背後から羽交締めにされた。

「待ってたぜ、昼間の続きを楽しもうや」

「何をっ!私に手を出して…」

「抱いて何が悪い?死ぬ訳でもあるまいし」

頬っぺから首筋にかけて舐められ、背後から胸元の服を引きちぎられると、胸が露わになった。

「くうぅ~、たまらない良い女だ」

胸にしゃぶりついて来た。

「誰か~!助けっ」

羽交締めにしてたもう1人に口を手で塞がれた。

「何やってんの!またお前達か!こりもせず!」

「ミネル!毎度毎度、邪魔しやがって、お前も混ざりたいのならそう言えよ」

ガハハハと下品に笑った。

「いい加減にしろ!お前ら!」

屈強な身体つきの男の神猫(バステト)が入って来て制した。

「何だ、ライオネル。お前には関係ない」

身構えて睨み合うと、諦めて2人の男は出て行った。

「分かった、分かった。そう睨むなよ」

私は、はだけた胸を隠して、その場に座り込んだ。

「大丈夫?怖かったね。今夜は私と一緒に寝ようか?」

ミネルが優しく背中をさすりながら言ってくれたので、お言葉に甘えた。

「少し狭いんだけどね?」

と案内されたミネルの住居には、5歳くらいの男の子と3歳くらいの女の子が寝ていた。

「意外でしょう?」

ミネルの年齢は17歳の私よりも若く見える。話を聞くと神猫(バステト)の女性は、12歳から14歳までには結婚して、子供を産むと聞いて驚いた。ミネルは11歳で結婚し、12歳で子供を産んだらしく、私と同じ17歳だった。学年で言えば1つ下かな?私は来月で18歳になるので。

 ミネルの旦那は優しくてイケメンだったらしいけど、一昨年の雨の日に蛇龍(ミズガルヅ)に襲われて、食べられて亡くなったと言われた。その日、村人の半数が蛇龍ミズガルヅに食われたそうだ。敵を討ちに行きたいが、子供らの事を思うと躊躇うと言っていた。

「話はこのくらいにして、もう寝よう」

「うん、おやすみなさい」

「おやすみ」

色んな事があった1日だった。

目を閉じると疲れていたのか、すぐに眠りについた。

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