真夜中の秘密の冒険
藤原 清蓮
第1話 メアリーとロイ、そしてバロン
とある町の小さなお家に、メアリーとロイという姉弟が住んでいました。
メアリーとロイは、ひとつ違い。メアリーが6歳でロイが5歳。ふたりはとっても仲良し。
そして、ふたりの大切なともだち。ウェルシュ・コーギーのバロンは、遊ぶ時も、ご飯を食べる時も、寝る時も。何をするのも、ふたりと一匹は、いつも一緒。
クリスマスまで、あと少しのある日の朝。
メアリーとロイはお母さんと一緒にクリスマスのアドベントカレンダーを一つ
カレンダーの中には、かわいらしい雪の妖精がプレゼントを抱えています。プレゼントの中身はきっと雪に違いないと、お母さんが言いました。
「なんで、雪なの?」と、メアリーが
「サンタさんのため?」
ロイが小さく首を傾げます。お母さんは、にっこり笑って頷きました。
「そうよ? クリスマスに真っ白な雪で街を覆うと、ソリが滑りやすくなるでしょう?」
と、お母さんは言いました。
メアリーとロイは、プリスクールで先生が読んでくれた絵本にも、サンタクロースがソリに乗ってやって来ていたと書いてあった事を思い出し、そうなのかと頷きました。
「メアリーもロイも、バロンもね? 今年はとっても良い子に過ごせたから、きっと素敵なプレゼントが贈られるかも知れないわね」
「「ほんと?」」
「ええ。もちろん。みんなは、どんなプレゼントが良いかしら?」
お母さんの問い掛けに、ふたりは真剣な表情で悩みます。バロンは、暖炉の前で不思議そうにふたりを見上げて大人しくしています。
ふたりは「バロンの分のプレゼントも考えないとね」と言いながら、バロンの頭を撫でると、バロンは嬉しそうに「ウォン!」とひと鳴きしました。
その日の夜。
暖炉の上に飾った靴下を見ながら、サンタクロースに何をお願いしようか、ふたりで相談をしていると、お父さんがお仕事から帰って来ました。
「やぁ、僕の可愛い子供たち。今日も良い子に過ごしていたかい?」
「「お父さん! おかえりなさい!」」
ふたりは嬉しそうにお父さんに駆け寄ると、お父さんはふたりまとめて抱きしめました。バロンがテコテコと足元にやって来ると、優しく頭を撫で、お母さんには、ほっぺにキスをして挨拶をしました。
「今日は何をして過ごしたのかな?」
「今日は、ロイとバロンと、サンタさんにお願いするプレゼントを考えていたの」
「ほぉ? それで、みんなはどんなプレゼントにするのかな?」
お父さんは、ふたりと一匹を連れて暖炉の前へ移動して、ふたりに訊ねました。
「まず、バロンのプレゼントが決まったの!」
「バロンの? どんなプレゼントかな?」
「咥えるとピーピーって音が鳴るボールと、新しい首輪をお願いする事にしたんだよ!」
「新しい首輪?」
お父さんが不思議そうに聞き返します。何故なら、バロンの首輪は、ちっとも傷んで無いのです。
「ボクとメアリーとバロンで、お揃いのハンカチを首に巻きたいんだ!」
その言葉に、お父さんは「ああ、なるほど」と頷きました。ふたりが言いたいのは、バンダナの事だと気が付いたのです。
「きっとサンタさんは、そのお願いを聞いてくれるだろうね。みんなが仲良く過ごしていたら、サンタさんは嬉しいだろうからね」
「ボクもそう思う!」
ロイが嬉しそうに頷くと、メアリーが続けて言いました。
「わたしとロイも、バロンとお揃いのハンカチが欲しいってお願いする事にしたの」
「他には、頼まないのかい?」
「ボク、靴下いっぱいのお菓子がほしい!」
「わたしは、お人形のお洋服!」
しっかりと自分達の欲しいものも決まっていたふたりに、お父さんは大きく頷きました。
「それじゃ、お父さんがサンタさんにお手紙を書いて、お願いをしておこう」
「お父さん、サンタさんの住所、知っているの?」
ロイが驚きながら訊くと、お父さんは少し胸を張って「ああ、友達だからね」と言いました。
メアリーとロイは顔を見合わせてから、キラキラした瞳でお父さんを見上げます。お父さんは誇らしげな笑みを浮かべて、ふたりの頭を撫でました。
「さぁ、ご飯の支度が出来ましたよ」
お母さんがみんなを呼びに来たので、お父さんからサンタクロースの話を聞くのは、また今度にする事にしました。
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