第33話 無双
そんなこんなでスキルを使いながら2人を見ていたのだが、2人とも結構強い。
フィオナは俺のスキルに対して真っ向から立ち向かいオタメガは、上手いことその援護をしている。
「ギミックはうまく作動してるんだけどな〜」
隣であいながボヤいた。
まあ気持ちは分かる。どれだけ考えてもフィオナに全て潰されては考えた時間が無駄になってしまう。
「とはいえ、これ以上魔物数を増やす事もできないし、ギミックが働いている以上は考えた甲斐はあると思うよ。他の冒険者達は事実登ってこれなくなっているしね」
今10階にたどり着けているのはフィオナとオタメガだけだ。
フィオナも最初のような余裕はなく、かなり本気を出している。オタメガに関して言えば、結構傷が増えてきている。
フィオナと天下五剣、あいなの話じゃ実力が近いって事だったけど、実際のところどうなんだろ。
『若葉大丈夫か?』
『へ、平気でござる!』
オタメガは平静を装うが結構無理をしてそうだ。
『そうか』
フィオナはその言葉を聞いて走り出した。
そして目の前にいたクイーンビーを細切れにした。
スキル『堅牢』の力で防御力増えてる筈なんだけどなぁ。
「フィオナ様って本当強いよね〜」
「そーだなー。あいなの目から見てどう? この様子なら天下五剣を抑えられそう?」
「ん〜、私が見たのは鬼瓦さんじゃないからなんとも言えないけど〜。……普通の武器だった場合は止められるんじゃないかな」
そうか。やっぱりフィオナの戦闘力は頭一つ抜けてるようだ。
「やっぱ、鬼丸国綱次第かー……」
一度ため息を吐く。ちょっと前の俺なら武器でそんなに変わらないだろうと言うところだが、俺も最強の武器レーヴァテインを持っている以上油断はできない。
「そうだね〜」
「あっ、そうそう。天下五剣が来る当日あいなは来ない方がいいんじゃないか?」
そういえば言うのを忘れていた。
あいなは配信をしているし、バレる可能性が高いだろう。それなら無理に来なくてもその日は待機してもらえばいいだろう。
「む〜。私だけ仲間外れにするつもりかな?」
ほっぺたを膨らまして可愛いけど仲間外れとかではなく、純粋にあいなが心配だ。
「いや、ほら。あいなは有名人だし……出ない方がいいんじゃないかなって」
顔が近いって! やめろ! 俺は女子への耐性がゼロなんだよ!
「大丈夫だよ! 当日は化粧変えるし、ウィッグもつけるからね!」
ウィッグってカツラだよな? いやそれ以前に化粧を変えただけで大丈夫なのか?
「それ大丈夫なの?」
「うん! 私のことは大丈夫だから太郎くんは鬼瓦さんの事にだけ集中してて!」
まあそう言われたら頷くしかない。
それに俺としては最上階まで辿り着かせるつもりもないしな。
そう思い画面に視界を戻すと2人が罠部屋に入っていた。
モンスターハウスで、ジャイアントビーが大量に子供を産み落としている。
『若葉! 大丈夫か!』
『ぅ……なんとかでござる!』
うん。オタメガは無理そうだな。よし、迎えに行こう。
「ちょっと行ってくる」
「りょ〜かい!」
あいなに一言入れて転移魔法を使ってモンスターハウスへと向かうのだった。
「ストップ!」
俺がモンスターハウスに入り声をかけた瞬間蜂達は攻撃をやめてその場にホバリングしている。
「魔王様!?」
「太郎殿!?」
2人も急に現れた俺に驚いているようだ。
「ごめん、2人の事を見てたけど……ちょっと見てられなくて……」
オタメガの方を見ると痛々しい傷跡が残っている。それをすぐさまヒールで回復させる。
「太郎殿……」
「オタメガはここまでだ」
中身は俺と同じ高校生だが、この痛いけな少女の体がどんどん傷ついていくのは流石に堪える。
それに8階辺りからオタメガの動きは鈍く、フィオナがカバーをしている様子があったがこれ以上は無理だろう。
「そんな、拙者まだやれるでござる!」
オタメガは懇願するように声を出した。
「若葉、お前は良くやった。正直ここまでついてきただけでも私は驚いているんだ」
フィオナがオタメガに近づいて優しく頭を撫でた。
「フィオナ殿……」
オタメガとフィオナが見つめ合う。
2人とも見た目は美女と美少女だし、百合百合してるように見えてしまう。
「って訳で悪いけどオタメガ……上に戻ってもらうぞ」
そんな空間をいつまでも見たい気持ちが勝りそうになるが、頭を振って我に帰る。
「分かったでござる」
しょぼんとしたオタメガには申し訳ないが、俺は転移魔法を発動した。
「で、フィオナはどうする?」
フィオナはオタメガと対照的に傷ついていない。
「勿論、魔王様がいるところまで駆け上がって見せますとも!」
「おっ、じゃあ俺も本気出すからな」
まあ十分に本気なんだけどね。こう言っておかないと俺の立場がない。
「はい! 私もこれからは本気で行かせていただきます!」
ん? もしかして本気じゃなかったの? オタメガを庇いながらだったから本気を出せなかったのか?
「お、おう……じゃあ頑張ってくれ」
そう言い残して転移魔法を発動するのだった。
それからのフィオナの無双っぷりには正直引いたのだった。
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