これがわたくしのテクニックよ。
8回裏、マイアミの攻撃。
カキッ!!
「いい当たりだ!左中間、ヒットになります!ロアス、2塁を狙うか!?センター、バーンズが処理して2塁へ!!止まりました、止まりました!!
これは行っていたら……。ロアスとはいえ、アウトになっていたでしょうか。バーンズからの好返球です!しかし、ノーアウトからロアスがまた出塁!3安打、猛打賞になりました!」
ヤバい。盗塁王が出てしまった。
「スティール!!」
そして走られる。
カンッ!
真ん中のボールをバッターが打つ。
ベースに入ろうとした平柳君の逆。彼は切り返して飛び付いてく。
シュン!
グラブを掠めるようにしながら、打球は抜けて左中間。回り込む俺の目の前へ。
当然、スタートを切っていた1塁ランナーは3塁に向かうのが見えて、しっかり引き付けるようにしながらボールを捕った俺は左足をしっかり向けて、必要以上に体を入れつつ、3塁へ。
投げるフリをした。
その後ろで、2塁を狙うバッターランナーが見えていたから。
もう雰囲気を感じ取ってしまっていたからね。どうせ慌てて、目の前で3塁を狙った先のランナーを刺そうとするんだろう?と。
その隙に俺はツーベースにしちゃうぜ。という過信というラインにギリ引っ掛かって来るような考え方というのを俺は察したのだ。
だから多少緩慢っぽい動きを入れ、後戻りが難しい位置まで誘い出し、ザム君に鋭くボールを返した。
そんな狙いにバーベで仲を深めたザム君もしっかり感付いている。
知らん顔しながら、俺からの送球をもらうと、素早い身のこなしで1塁にボールを送る。
俺の偽投にようやく気付き、まずいと戻ったバッターランナー。
しかしもう既に、1、2塁間の真ん中辺りまで飛び出してしまっていた。
そこから引き返し、ヘッドスライディングで1塁に手を伸ばす。ザム君からの送球を受けたファーストのアンドリュースがタッチ。
「アウッ!!」
かなり際どいタイミングにはなったが、アウト。バッターランナーは一瞬セーフをアピールしたが、自らの飛び出しをなんとかしたいという気持ち。
仰け反るようなリアクションをする味方のランナーコーチおじさんの顔を見ながら悔しそうに立ち上がり、ゆっくりとベンチに戻っていった。
「シャーロットの守備陣は、3塁を狙ったロアスではなく、バッターランナーのバーディーを刺しにいきましたね」
「上手いプレーでしたよ。3塁に投げてもどうかなというタイミングだったんですか。いい機転でしたね。
レフトのアライがですね、ちょっとゆっくり打球を処理したんですよね。それが絶妙でバーディーの飛び出しを誘いました。罠を張られていたわけですね」
「そうでしたか。レフトのアライ、セカンドのザムも状況がよく見えたナイスプレー。しかし、勝ち越しのランナーが3塁に行っています」
ノーアウト1、3塁と、1アウト3塁ではだいぶお話が違うわけだが、1点取られたら正直試合がきつくなるという案件に置いては、全然相手に有利な状況であった。
逆にノーアウト1、3塁から、走ってもらって2、3塁から淡白なバッティングをしてもらう。
そっちの良かったのではと思ったのは、2ストライクと追い込んでから3番バッターに渋いバッティングをされてしまったからである。
ピッチャーは、防御率が1点台前半。シャーロットで1番のリリーバー。オールスター選手のイェーガーである。
95マイルのボールが最速ではあるが、レベルの高い多彩な変化球と抜群のコントロールが武器のピッチャー。
この場面も最後はストライクからボールになるゾーンにいいシンカーを投げ込んだが打球はライト前へ。
バッターのマテオはガッツリ詰まらされながらも、怖がらずに右方向へおっつけ打球を飛ばした。
ザム君も真後ろに飛びながら懸命にグラブを伸ばしたが、僅かに届かず。
8回裏、マイアミが勝ち越しの1点を獲得。さらに直後。ワンバウンドのボールをロンギーが僅かに弾いた間にマテオは2塁を陥れ、久々のホームランで気分を良くした4番がセンターへタイムリー。
5ー3とリードを広げられてしまった。
「バッティワン。ショートストップ、ユータ、ヒラ、ヤナギー!!」
2点を追うシャーロットの攻撃。平柳君が打席に向かう。
ピッチャーは、マイアミのクローザー、シーズマン。右のオーバーハンド。スライダー、カッター使いである。
力強いファストボールと、左バッターにしてみれば足元に向かって曲がってくるボールを投げてきますから、かなり難しい。
結果、平柳君はまさにインローのカッターを難しく打ち損じる形となり、打球は高く跳ねながらピッチャーの後ろへ。
「ガリッ!」
「ガリッ!」
打球にチャージしてきたのは、ショートのロアスとセカンドのバーディー。マイアミが誇る、俊足の1、2番コンビである。
その2人がトップスピードに迫りながら、同時に突っ込み、同時に掛け声を発してしまった。
ちょうどピッチャーの真後ろ。
ちょうど、どっちも捌ける位置と打球の跳ね方になったが、送球のことを考えると、ショートが行くべきかなといったところでして。
だから掛け声をした直後、セカンドのバーディーが譲った形になったのだが、それがロアスのステップする方向と重なってしまい、若干の接触。
全速で前に出てきて、そのままの体勢でランニングスローしないといけないタイミングでしたからね。
バランスを崩したロアスの送球はワンバウンドで左方向に逸れてしまったのだった。
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