ライトのあいつ、カバーとか知らんねん。
今では日本でも当たり前になりつつある、トラックマンシステムにより、即時三次元化されたハイライトビューの視聴も可能。
ピッチャーの投げたボールの初速や回転数などがすぐ露にされる。
メジャー平均2500とされるファストボールの回転数を彼らの真っ直ぐは、軽く凌駕している。
フォーシームの回転数ならばどちらも現メジャーのトップクラスの数字。
もちろん、純粋な縦回転のフォーシームをみんながみんな投げるわけじゃないから何とも言えない部分はあるのだけれど。
スタンドにいるお客さんはもちろん、中継をご覧になっている皆様も、両日本人投手が投げる、浮き上がるようなストレートに息を飲む。
首位をいくチームのメジャーリーガーが苦しんでいるのだから、点は入らずともなかなか見応えのある試合になって来ているのではなかろうか。
そんな試合は、意外なところから綻びが出ることとなった。
「ファウルボール。ここも真っ直ぐ。98マイル。これで1ボール2ストライク。追い込みました。追い込めば前村には伝家の宝刀があります」
「そうですね。バッターも1打席目と同じボールにやられるわけにはいかないでしょうけども」
「4球目。投げました!……落とした!空振り!しかし、ボールを後逸!ロングフォレストがマスクを外して追う!バックネット前!……バッターランナーは俊足だ!1塁に送りますが、セーフだ!!」
振り逃げ。
それを狙っていたかのように、バッターの走り出しが早かった。
ロンギーも急いで拾いにいき、バックネットとの距離も短いスタジアムではあるが、バッターランナーはあっという間に1塁を駆け抜けてセーフ。
わたくしは好きですわよ、そういうプレーも。
記録は三振ながら、振り逃げでアナハイムは2アウトからランナーを出した。
そして打順は1番に返るところである。
9番バッターが何か変な感じで出塁したりして、思い切りいいタイプの1番バッターに回ると、ちょっと嫌な感じになる。
先発投手として鬼門と言われる3巡目に入ってくるところだし。それでも、前村君は盗塁を狙う1塁ランナーを牽制しながら1ボール2ストライクまで持ってきた。
4球目。右バッターの膝元。いわゆるクロスファイヤーと呼ばれるゾーンに抜群の99マイルをズドン。
ロンギーの構えにドンピシャ。バッターは手が出ず見送るだけだった。
「ボール!!」
ボールをポイっと手離そうとしたロンギーと、マウンドを降りようとした前村君の2人。
判定に面食らった彼らのリアクションがシンクロした。
いやー、今の取らんかね。チラッとバックスクリーンに表示されたトラックマンの映像ではボールの半分がきっちりストライクゾーンの角に入ってしまっていますけど。
まあ、絵面的には完全にジャストルッキングな雰囲気でしたから、両チームのファンは共に苦笑いといった感じ。
これで平行カウント。
ランナーからすれば盗塁を狙えるチャンスでもある。
「スティール!!」
ファーストのアンドリュースが叫ぶ。
前村君が投球動作に入った瞬間、ランナーはかなりいいスタートを決めていた。
カンッ!!
そしてバッターが打つ。
打球はハーフライナーとなって、センター前
へ。
バーンズが突っ込む。これは、ワンバウンドで押さえるようなことなど微塵も考えていない突っ込み方。
俺も走った。
ライトのクリスタンテがカバーには走らないだろうという予測を立てることが出来たから。
バーンズが緑色のキャップを飛ばしながらダイビング。体、腕、グラブ。全てを伸ばしたがそこそこ届かずに、打球はバーンズの後ろを跳ね、一瞬にして歓声が湧き上がった。
どう贔屓目に見なくても、右中間寄りに転がった打球を俺のピンクグラブが掴む。止まって体勢を立て直してなんかいられる暇はない。
ワンステップの振り向きざまスローを発動。
1塁ランナーが3塁を回っていくのが見えた。
流石は平柳君。抜群の距離感で俺からの送球を受け取った。
平柳君も膝の高さ辺りで捕球したグラブから素早い持ち替えでバックホームした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます