これもメジャーですわね。

コンッ!!



「セーフティバント!!1塁前!ファーストが捕る!ピッチャーがカバーに入る!!際どいタイミングになった!……セーフだ!セーフ!!内野安打です!」



「ヒラヤナギは足が速いですね!!転がった瞬間はアウトかなと思いましたが、あっという間にピッチャーを抜かしていってしまいました。素晴らしい技術と脚力です」




「そしてバッターは新井です。打率はいまだ高い水準をキープ。4割1分3厘というところまで来ました。日本での通算打率も4割オーバーというバッター。1打席目はセカンドゴロでした。……またバントだ!1塁側!!」



見よ、ニューヨーカー!!これがジャパニーズセカンドバッタースタイルだ!!



平柳君と同じ、1塁側のトライアングルゾーン。守備側にとってのデンジャーゾーンにまたボールを転がしてやった。



ファーストが飛び出し、ピッチャーも反応して走り出す。



しっかりいいところに転がった。後は全力で走っていくだけ。2連続で多少心構えがあったら部分もあるだろうけど、やはりこの辺りが苦手なのか、スムーズな連携とは言えず。



また際どくなったのだった。






「アウッ!!」



1塁の審判おじさんが力強く拳を握り、俺は頭を抱えながら、引き返してベンチに戻っていく。



惜しい。俺にも平柳君にあと少しでいいから迫る足の速さがあれば……。




「バティスリー、センターフィールダー、バーンズ!!」



バッターは、シャーロット最強の男なのだが、スタジアムはなんとも言えない雰囲気。




またバントか?また狙われるんじゃないか?



という疑心暗鬼のようなものがニューヨーク側に取り憑いているようにも感じるのだ。



しかし、やっぱりバーンズですから。2年連続3割40本を打っているわけですから。来年には、5年で450億円の契約かと言われている男ですから。



よほどのことがない限り。バントするなんてわたくしは認めたくありませんよ。



どんな状況になっても、バーンズがバントするようなことになったら、シャーロットの優勝はないねと、もみじちゃんも言っていましたからね。



まあ、この前の3連続はボケの天丼みたいなもんで。



もちろん、去年以上に自分が打てれば、それだけ優勝に手が届くというのは分かっていますから。


年上の日本人選手のお膳立てをお残しするわけにはいかない。



ただでさえ格闘家やアメフトの選手と遜色ないスーパーな体をしているのに、足を高く上げてタイミングを取り、力一杯のフルスイング。



それでも、打球の行方は、前2人のバントとほぼ同じ転がり方であった。



「打ちました!バットの先!ボテボテ!ファーストの前だ!今度はピッチャーがいく!!バーンズも俊足だ!ファーストがベースに戻る!またまた際どいぞ!あーっと!?暴投になりましたー!」




「あっと!?これは最悪ですね」



「ボールは1塁側ベンチの前を転々!ヒラヤナギは3塁を回りました!!セカンドがカバーしますが、バックホームはされません!ホームイン!バーンズも2塁まで到達しています!!シャーロットがさらに1点を追加!ニューヨークは痛いミスが出てしまいました!」



「普通に捌けば、何てことのない打球だったんですが。コーチも怒っているようです。試合後、2人は朝まで居残り練習になるでしょうね」



「慌てる必要のない打球だったんですが、冷静さを欠きましたかね」



「「イエー!!」」



ホームインした平柳君を出迎えながら、盛り上がるシャーロットベンチ。



バーンズの打球はバットの先っちょに当たり、ファーストの前。ピッチャーが勢い良くチャージして1塁にトス。


ファーストの選手もちゃんとベースに入っていたので、しっかり投げていればアウトだっが、送球はランナーコーチャーの方へ。



平柳君はもちろん迷わずホームを駆け抜け、バーンズもベンチの前に転がるボールを確認しながら2塁に到達した。



うちの1塁コーチおじさんが、暴投になった瞬間、自分の顔目掛けて飛んできたボールを首を鳴らすような動作でヒョイっと避けて、すました顔をしているのが面白かった。





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