神様のオススメを探して4
なのでその日は遅い時間に公園にいれば麗に確実に会えることになるのだ。
「ん?」
大きめのメガネ、地味目な格好の女の子が目の前を通っていった。
ここ数日何回か見ている子でいつも1人で公園を通っていた。
どうやら武蔵原女子大の子のようであるが将暉の記憶の中の麗とは違うのでぼんやりとその姿を見ていた。
しかしここ数日見ていたために気がついた。
その子が通った後すぐに毎回同じ暗い格好をした男性も目の前を通っていく。
「……まさか」
記憶の中の麗は髪を短くしていた。
動くのにも邪魔であるし物資が乏しい中では洗う手間なんかを考えると短い方が便利だったから。
対して目の前を通った子は大きめのメガネに服装は地味で髪は長い。
いつもやや俯いているような感じで歩いていて顔をまともに見ていない。
だけど思えば背格好はなんとなく麗に似ているように思えた。
どうせ他にすることもない。
将暉はストーカーの男をさらにストーカーしてみることにした。
男は女子大生しか見えていないようで将暉には気づかない。
女子大生が止まれば男も止まり、女子大生が動き出せば男も動く。
やはりストーカーで間違いない。
ストーカーにつけられている女子大生を観察していると顔も見えた。
大学生にまでなるとそんなに顔が変わるものじゃない。
記憶よりも幼い雰囲気はあるが麗でも間違いない。
麗を見つけた。
見つけたのはいいのだけどそこからどうするのかが悩みどころだ。
いきなり声をかけても今の段階で将暉と麗は知り合いでもない。
ナンパ程度で済めばいいけど下手すると不審者、将暉がストーカーだと思われてしまうかもしれない。
どうにかストーカーを利用して近づけないかと将暉はストーカー越しに麗を観察する。
しかし良い考えも思いつかなくて麗はそのまま家まで無事に帰った。
小綺麗なアパートの2階の端の部屋に入っていった。
ストーカー男はしばらく電気のついた麗の部屋を眺めていたが1時間ほどして出てくることはないと思ったのか帰っていった。
将暉も悩んだけれど夜ずっと見張っているわけにもいかないので一度退却することにした。
家に帰ってどうやって麗に近づくかを考えたが何も思い浮かばない。
女性と交流した経験値が圧倒的に不足している。
スマートなナンパ師になりたいだなんて思うことはないけれど自然な形で女性に話しかける勇気ぐらいは欲しいと思った。
とりあえずストーカー男をさらにストーカーする形で麗を見守ることにした。
麗とストーカーも見つけたので覚醒する当日になったら確実に接触はできると言っていい。
その前に接触できるのであればその方が良く、機会があれば麗に接触を試みてみようと考えた。
次の日は昼過ぎに麗は家を出た。
例に漏れずストーカーも例の家の近くで待っていて麗が出てくるなり後をつけ始める。
今のところ手を出しそうな気配もないが後々性欲に負けて麗に襲いかかる。
覚醒して無事だったとはいえその時のことはトラウマらしくしばらく男性がダメになったと言っていた。
出来るなら襲われる前に止めてあげたい。
しかし話しかけるのに都合の良い事件なんて起こるはずもなく麗は大学に着いた。
流石に女子大には入れないのでストーカー男も大学前で止まり麗を見送る。
ストーカー男は一度帰るようなのでストーカー男をストーカーしてみることにした。
俯くように背中を丸めてのそのそと歩くストーカー男の歩みは遅くてイラッとする。
苛立ちが将暉に悪い考えを浮かばせる。
ここでストーカー男を処理してはどうかと思った。
殺害しようだなんては思ってない。
例えば少し脅すとか、ちょっと骨を折ってやるとか。
そうすればストーカー男は本来の時に麗を襲わなくなるはずだ。
麗は平和的に覚醒を遂げてストーカー男に対抗する力も得られる。
襲われた時に覚醒するのとは大きく違う結果になる。
「リスクはあるけど……」
ただ人を襲うのも簡単ではない。
見られれば終わる。
今は将暉も覚醒者なので一般人を襲えば厳罰は逃れられない。
まずストーカー男に負けることはないだろうからやはり見つかることが大きなリスクとなる。
逃げ道、人の多さ、時間、タイミング。
頭の中でストーカー男を襲撃する想定をしながらついていく。
するとストーカー男は一軒の家に入っていった。
表札には山田と書いてある。
ストーカー男の家か、それとも両親なんかと暮らしているのか。
両親と同居なら忍び込んでストーカー男に襲いかかるのは難しくなる。
ストーカー男を脅して済ませようとしても息子がケガをしたら通報される可能性は高い。
まだ起きてもないことでストーカー男を痛めつけるのも完全にアウトな行為なのだ、その両親に何かしては人の道を外れすぎてしまう。
しょうがないのでストーカー男の家を見張ることにした。
見張っているとストーカー男の家から女性が出てきた。
年配の女性で年の頃からするとストーカー男の母親ぐらいに見えた。
アイツちゃんとした母親がいながら女性のストーカーなんてしているのかと将暉はため息をついた。
「はぁ……帰るか」
何時間も同じ場所で家を監視していれば不審者なのは確実。
見ていても変化がないしお腹も空いたので退散することにした。
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