第6話[過去]美雪は初めて女の子とキスをしたいと思った。
【表紙】https://kakuyomu.jp/users/akatsukimeu/news/16817330668804704296
「そんな息苦しそうにしてたらいつまでも終わらないでしょ。気晴らししようよ、ほら来なさい」
私は半ば強引にカンナを連れ出した。
校内を適当に散策しつつ、私は校舎の中でカンナと一緒に写メを撮る。
「は、はずかしいよ写真なんて」
と、恥ずかしがる彼女を強引に撮影する。
そして後者の外も軽く散歩する。
すると目の前の茂みが動いて、なにか黒いものがもぞもぞと動いた。
「あ、黒いウサギがいる」
「メイ」
「え?」
「あ、このウサギの名前……」
カンナが「メイ」と呼びかけると、メイと呼ばれた黒いウサギはカンナに駆け寄る。
カンナはうさぎの頭をなでている。
「メイ、この子美雪ちゃんだよ」
メイは私の方を見て、しかし私の方には近づこうとはしなかった。
ただ私の方をじーっと見ている。
「そういやカンナって飼育委員会だったっけ」
「そうだよ」
「ふーん、黒いウサギなんて学校で飼ってたんだね」
「うん、一羽だけ黒いウサギがいるの。わんぱくな子で、甘えん坊さん。勝手に外に出ちゃうこともあるの。私はこの子が一番好き」
「よくなついてるみたいだしね」
「よしよし、メイ、また後でねー」
するとメイは再びどこかに走り去っていった。
「そろそろ戻る」
「あ、もう一つだけ寄りたい場所があるんだけど……」
そう言って私は、再び校舎に戻り、今度は屋上へと向かう。
「ねえ、今時学校の屋上なんて解放されてるのかな?」
「まぁ一か八かで、もしかしたら誰かが開けててくれてるかもしれないし」
そう言いながら、屋上へと続く薄暗い階段を上る。
ふと上の方から人の気配がした。
「待って」
「えっ……」
「しー」
私は人差し指を立てて口元にあてる。
見ると、屋上の扉の前で、女子生徒が二人仲良く座っていた。
「先輩かな?」
「多分、リボンの色的に三年かな」
二人は仲良く手をつないで身体を寄せ合っている。
おもむろに一人が顔を寄せ、
そのままキスをした。
「――――っ!」
カンナが声を出しそうになって、私はとっさに彼女の口を押えた。
ギリギリその先輩たちには気づかれなかったようだ。
私たちは驚いてそのままその場を後にする。
「あー、びっくりしたぁー。てかカンナ、声を出しそうになってたでしょ?」
「ごめん、びっくりしちゃって、女の子同士でキスなんて……」
「私もビックリ。でもまぁ女子校ってそういうの多いって聞くし」
「そういうのって?」
「だから、その、女の子同士で恋人関係になるっていうか」
「…………」
「カンナ、聞いたことない?」
「う、うん。私そういうのよく分からないし」
「そうなんだ。ま、アンタはそういうの興味無さそうだもんね」
自分で言うのもなんだが、私はけっこう発育は良い方だし、そっち系の話も実は嫌いではない。
でもカンナは、他の同い年の女の子と比べても小柄だし、発育もあまりよろしくない。
ちゃんと覚えてはいないけど、もしかして小学生5年のあの時から成長が止まっているんじゃないかと思ってしまうほどだ。
「美雪ちゃん、私そろそろ戻らないと……」
「あ、ごめん。美術の似顔絵やんないとだもんね」
「うん、あの、絵は私一人で何とかするから」
「そう、カンナがどんな絵描くか見てみたいけど」
「見られたくない」
カンナにしてはすごくはっきりとした拒絶。私はついぽかんとした。
目を丸くした私を見て、カンナはハッとする。
「……ごめんね、また明日ね!」
カンナは逃げるようにその場を立ち去った。
置いてけぼりにされた私。
もうやることもなくなったし、とりあえず一人で帰ることにした。
遊ぶ気にもなれなかったので、今日はこのまままっすぐ家に帰ろう。
夕暮れ時、私はぼーっと先ほどの光景を思い出す。
女の子同士のキスの光景が、脳裏に焼き付いて離れなかった。
「はぁ。キス、かぁ」
意識してたわけじゃないけど、はっきりと私は口にした。
「私もしてみたいなぁ……カンナと」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます