第3話[過去]美雪ちゃん、二人で遊ぼうと約束したよね?

【表紙】https://kakuyomu.jp/users/akatsukimeu/news/16817330668804704296


 カンナと再会したのは私が中学1年生の時。だが、彼女と初めて出会ったのは小学5年生の時だ。


「ねぇ、本当に私のこと忘れちゃったの? あのさびれた洋館で一緒に遊んだじゃない」

「うん、ご、ごめんね、遠野さん」

 中学校の入学式、私は奇跡の再会を果たした蓼原カンナと一緒に下校してした。

「ちょっと、友達なんだし美雪って言ってよ。ね、カンナ」

「あ、うん、美雪ちゃん、覚えてなくてごめんね」

「まぁ2年前の事だし、しょうがないけどさぁ」

 カンナは一番最初に私と出会った時の事をすっかり忘れているらしかった。


 私とカンナとの出会いは私が小学校5年生だった時。

 私はお父さんからプレゼントしてもらったカメラで、あちこち撮影して回っていた。

 そして、危ないから近づくなと言われているとあるいわくつきの古びた洋館に忍び込んでいた。

 当時の私はレトロなものとオカルトな趣味がちょっとあって、フィルム式の一眼レフのカメラでこの洋館を撮影したいと思っていたのだ。

 そこでたまたま出会ったのがカンナだった。

 初めて見たとき、最初私はこの屋敷で死んだ女の子のお化けか何かだと思った。

 だって髪の毛がまるで老人のように真っ白で、肌も普通じゃないくらい白かったから。

 しかもカンナは私の事を後ろから驚かしてきた。それが私カンナの初めての出会い。

 カンナによると、そのお屋敷はカンナのおばあちゃんが住んでいた家だったらしく、カンナ自身もちょくちょくここに遊びに来ていたという。

 だから私とカンナはお屋敷の中をあちこち探検しながら、カンナから洋館についていろいろ説明をしてもらった。

 あと彼女は私の雰囲気がこの洋館にぴったりだからって、私のスマホで写真を撮ってくれた。

 日が暮れるまで二人で遊んだ。それでまた会おうねって約束してお別れした。

 ただこの時はお互いに名乗るのを忘れてた上に、それ以降私がこの洋館にカンナを訪ねなかったから、忘れられたとしても仕方がないかもしれない。


 でも私は覚えていた。というよりもこの子の絹糸のように真っ白な髪の毛を見た瞬間に思い出したのだ。

 しかも一緒のクラス。入学式の自己紹介で、その子の名前が「蓼原カンナ」だと知ることができた。

 それで放課後になり、私はすぐさま彼女に声をかけ、一緒に帰宅することになったのだ。

 私が「私のこと覚えてる?小学生の時に一度だけ遊んだよね?」と尋ねたら、「知らない、覚えてない」って言われちゃったわけだけど。


「実はあの後ね、私のパパとママの仕事の都合で、地方のおばあちゃんのお家に住んでたの。パパとママが海外に行っちゃってさー、子供一人では暮らせないけど海外はーってことで」

「そうなんだ」

「ホント居候してる時は最悪でさ。あ、おばあちゃんがイヤって意味じゃなくてね、ホントーになーんもない田舎だったのよ! こっちとは全然違くてすごいビックリしたんだもん! コンビニもないんだよ! しかも田舎だとゴスロリとか着れないの! 土曜日に私服で遊びに行ったら、クラスの奴から『まるで魔女みたい』ってからかわれたし! しかも私、スマホを川に落としちゃってさ、大事なデータもアプリのアカウントも全部なくなっちゃたの! ていうか、引越しでバタバタして、カンナと一緒に撮った写真もどっか行っちゃってさー」

「あはは、そうなんだ、大変だったんだね」

「そーそー、そんな生活が一年もだよ!? 辛すぎて死ぬかと思った! あ、それで話し戻すけど、約束したのに会いに行けなくてごめんね」

「う、ううん。別にいいよそんなの、パパとママの都合なら仕方ないし」

 カンナは苦笑いを浮かべてそう言ってくる。

 そんな彼女を見て、私は今更になって何か引っかかるものを感じた。

「……………………んー……」

「え? な、なに?」

「あ、ごめん、アンタってこんな雰囲気だったのかなって」

「え?」

「前会ったときは、もっと、なんていうの? もう少し明るいって言うか、ちょっとおちゃめでイタズラ好きっていうか…」

「……そうかな、自分じゃよく分からない」

「……あはは、ごめんね、別に悪い意味じゃないから、怒った?」

「ううん、そんなことないよ」

 二人で歩いていると、駅前のモールがある建物が視界に入る。

「あー、やっぱりこっちはいいわー。あ、せっかくだしさ、寄っていかない? 遊ぼうよ。私、服とか見たいし!」

「――あ、ごめんね、寄り道しないで帰って来いってママから言われてて」

「そう、まぁ仕方ないわね」

「うん、ごめんね、美雪ちゃん」

「いいっていいって。まぁまた今度、映画でも見に行きましょうよ」

「うん、じゃあまたね」

「うん今度はいっしょに遊ぼうね」

 カンナと再会はこんな感じだった。


 ――二人で遊ぼうって約束したよね? 美雪ちゃん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る