声のはじまり

考えても考えても

窮屈な胸の中じゃ

言葉はうまく動いてくれない


この世界は

叫ぶ場所を失って

あのやわらかな声は

胸につかえてくるしんでいる


きみの声を聞かせておくれ

だからぼくはここにいるんだ

きみと共にうたうために

間違えたくない

失敗したくない

変なことなんてしたくない


この人は大丈夫かな

傷つけられないかな

近づこうかな


ちょっと近づいてみようかな

こわいなこわいな


あ、目があった

やさしそうだし

ちょっと話してみようかな

争うことをやめた僕らは

愛しかたも忘れてしまうのかしら


無駄で非合理で途方もなく手のかかる

ああ あのいとおしい気持ち


いいえ

僕はあなたに捧げます


万色が溢れてやまぬように

万声が世界を満たすように

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る