第22話 出会い
おそるおそる声の方向に近づくと、そこには少し広めの丸い空間が広がっていた。灯台の内側と似ている。
そのちょうど真ん中に窪みがあって、そのなかで火が焚いてある。その周りを囲むように人間の4人組がいた。
背中を向け合い武器を用意している。
たぶん魔力が駄々漏れな俺のこと警戒しているのだろう。ある程度なら魔力制御できるようになったが、まだまだ練習が必要なようだ。
「……よし、俺は辺りを警戒してくるから、先に食べててくれ」
鎧を身体中にまとった身長の大きな男が剣を構えながら少しずつ焚き火から離れていく。周りをきょろきょろと見渡して警戒心を強めていた。
「ちょ、ちょっと!」
「何?」
その背中を追おうと手をのばすのは、短い茶髪の女性。宝石のついた豪華な見た目の鉄鎧で体を覆い隠して、男に引きを取らないゴツさになっている。あの宝石からは魔力を感じるため、魔石か何かだろうか。
女性は男と目を合わせると首を振って体を引っ張った。怖くて目を見開いている。男は怖がっているのを感じ、女性の手を握り返し温めて安心させる。
「単独行動は危険だ。それにさっきの「圧力」はヤバい。一流の冒険者でも勝てない相当な強さだ、私も一緒に」
「大丈夫、様子を見に行くだけだ。君にとっては危険だし、すぐ戻ってくるから心配しなくていいよ。」
「で、でも……」
「大丈夫だ」
男は優しく声をかけていた。目を見つめて訴えかけるように。
女性は余裕そうな男を見てより心配そうに手を握っていたが、その言葉を聞いて手を離し、見つめながらも元に戻って、その横に置いてあった皿を取った。
さっきまで食事中だったようだ。なんだか申し訳ないことをしてしまった。
その皿を宙に浮いた水の玉を浮かべ、その中に皿を突っ込んでもみくちゃにしていた。
「気をつけてね。」
「ああ。」
「じゃあ、気をつけるんだぞ~」
「わかった、行ってくる。」
そう関係なさそうに手を振りながら言うのは、黒い毛をした、腰に剣を巻いて上半身に薄い服を着ているだけの、ほぼ裸な体の大きな男の獣人だ。男の方も振り向かずにご飯を食べながらそう言ったので、油断しているのが丸わかりだった。
その横から何かが飛んできて、カイの口の中に当たった。
「いってえ!」
「油断してんじゃないよ!」
それを杖で叩いたのは、体もまだ未熟であり、赤ずきんのような赤いローブを深く羽織った顔の見えない幼女だ。
幼女の乱暴な言葉と杖をぶつけられたことに怒りを感じたのか、鼻息を荒くしながら嫌々男獣人が返答した。
「ゆ、油断などしとらん!」
「こら。大きな声を出すな。バレても良いのか?」
女性がそこに割って入る。剣を構えて、やめないと切るぞ、と示しているようで、それを見て男獣人はハッとして顔を振った。幼女の方は満足したように後ろを向き背中を預けた。
「おっと、すまんな、つい興奮しちゃってな。」
「ホントに死ぬぞ?まじで」
「わーってる……」
全員が獣人に厳しく戒めるように強く睨みつけていた。
俺が来たことがよほどの緊急事態であることがその様子からも伺える。
遠くから見て、いい判断だ。と勝手に心のなかで批評した。
ずっと見ていると、とても統率の取れた感じの良いパーティーのようだ。話しかけやすそうだが、俺は懸念がまだ心の中にあった。
どうしようか。
彼らと会って、俺のことを怖がられても無害なことをひたすら示し、なにがなんでも仲良しをするか、それとも大人しく密かにこの場から去るか。
それで人間と深く関われるか関われないかが変わってくる。俺の精神の生き死にが決まる頃だ。
一見優しそうな彼らと会っても良いのだろうが、たぶん魔力制御が出来なくなって彼らの前で解除をしてしまう。
最悪の場合、圧を感じた瞬間に彼らは急いで剣を抜き、杖を向けて俺をすぐに敵だと認識して斬ろうとする。だけど剣では斬れなくて、魔法も効かず、それで俺が怪物だってわかって怖くなり逃げるのが容易に思い浮かんでくる。
そんな怖がられる思いなんてしたくないし、出会わない方がいっそ気持ちが楽なんじゃないかと思ったが、それも最悪の可能性である。
じっくり悩んだ。
一応俺はどの生物とも言葉が通じるし、仲良くできるのではないか?という希望を持ったからだ。
決断できずにいると、視線を感じた。
どうやらバレたようだ。
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