第16話 異常存在と戦うようです。



 また遅れましたね……すいません!!(ジャンピング空中四回転捻りダイナミック土下座)


 毎日投稿している方々は本当に凄いんだなぁと痛感する日々です。


 まぁそんな事は置いといて、

 早速本編どうぞ!



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 『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』。


 その体は生物の血肉で構成されており、常に血肉が蠢いている人型の醜悪なモンスター。

 人によっては、あまりの見た目に見る事さえ躊躇うと思う。


 その討伐難易度は脅威のEX。


 恐らくだけど、現代において僕以外にこのモンスターと戦った事がある人どころか、見た事がある人すら居ないと思う。

 本来は超深層にさえ出てこない、もっと深い階層で出てくるはずのモンスター。


 けど何故?いくらイレギュラーが起きようとも、ここまでのモンスターは出てこないはず。


 ……まさかダンジョンが進化したから?


 いや、だとしたらこのダンジョンは日本一危険になっている筈だし、それ相応の気配や圧を感じる筈だ。

 でも、それ程の強い気配をこの【零の迷宮底無しダンジョン】からは感じられない。

 だとしたら、突発的に『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』が発生した?


 ……ダメだ。考えた所で分かる事は何も無い。強いて言うなら、コイツさえ倒せば後はこのダンジョンはそれ程危険じゃない。

 上層や中層も、普段の【零の迷宮底無しダンジョン】と同じ気配だ。変化は無い。

 今危険なのはコイツだけ。ならば、他の探索者達のためにも絶対にここで倒さないといけない。



「はぁ、君の相手は、少し……面倒くさいから嫌なんだけどなぁ……」


『いイ、ヤ?……Nanaナなna、ンで?』


「その口閉じてよ……。どうせ殺すつもりしか無いくせに……」


 

 このモンスターは確かに知能を持っている。


 だけど、あくまでなのだ。モンスターだからこそ人間に牙を剥き、害し、殺す。

 会話や交渉が出来るほどの知能が仮にあったとしても、彼らの心の中にあるのは殺意だけだ。仮に対話が出来ても、それは弄ばれているだけ。つまり対話するだけ無駄。


 モンスターと人間は根本的に分かり合えない。たまに「分かり合える〜」うんぬん言ってる人もいるけど、モンスターとはダンジョンによって作られた存在。いわば迎撃システム。

 システムに感情は不要。に同情する必要もなければ、分かり合う必要も無い。


 "ダンジョンのモンスター"というのはそういう存在なのだ。


 それに、目の前の敵は殺す事に喜びを感じるタイプの知的生命体。一番外に出ては行けないタイプの生き物。

 だからこそここで倒さなければ、どれだけの人に被害が及ぶか分からない。

 こいつ一体で、並の小国なら滅亡させる程の力を持っているのだ。



「……そういえば。配信は閉じさせてもらうよ」



:は!?

:何でだよ!?

:いやどういう事!?

:確かに見るからにヤバそうだけど!

:それと配信を閉じる事に何の関係があるんだよ!?

:あっ!?消えた!?

:おい!久遠!!

:頼むって!!地上は大パニックなんだぞ!!



 コメント欄には、僕が配信を閉じようとする意味が分からないと沢山の抗議の声が来ていた。


 まぁこればかりは仕方無い。

 配信を閉じたのは、他でも無い"配信を見ている彼ら"のためなのだ。

 というのも、『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』というモンスター、ある特殊能力がある。


 それは、あんなに物理戦闘が得意そうな見た目をしておきながら、精神系の攻撃も併せ持つという点。


 僕なら、仮に精神攻撃を受けても問題は無い。

 けれど、僕の配信を見ている人の多くは、普段ダンジョンにも潜らないような人達だろう。

 そんな人達が『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』の精神攻撃なんて画面越しにでも食らったら、一発で精神崩壊して瞬く間に廃人になってしまう。


 それを避ける為にも、配信をこのまま付けている訳には行かない。

 ただでさえ、今この【零の迷宮底無しダンジョン】は進化が発生して危険な状態。その時点で世間はかなり困惑している。

 それに加えて『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』の戦闘シーンなんて見たら、更に大混乱になるし……。



「……さて、君と戦うのは久々だね?」


『た、田タタヵ、ぃ?……肉!!肉欲しシイ!!』



 見てもらえば分かる通り、このモンスターが『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』と名付けられたのはこの言動からだ。


 どの個体も総じて、文字通りに蠢く血肉、つまりは生きた生物から取り出した血肉を特に好んでいる。

 新鮮な肉が一番活力?の様な物があるからでは無いかと僕は考えているけども。

 そのためか『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』は血肉に異常な執着を見せ、その為ならば何でもしてくるような生物だ。


 過去に戦った時は、かなり大変な思いをした事を覚えている。


 『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』が発生した場所が運悪く『魔物たちの住まう家モンスターハウス』であり、かなりの量の血肉を吸収してとんでもなく強くなった個体と戦うことになったからだ。


 その点で言えば、ここに来るまでの道中に居た 氷冰竜アイスドラゴン を消しておいたのは正解だった。仮に死体が残っていて、『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』がこのトラップ部屋から出たりしていたら、どうなっていたか。考えただけでも面倒臭い。



「……じゃあ、早速やろうか。

───咲き誇れ、炎華。『燐火蒼焔ヴァトラ

───轟かせ、轟雷。『電霆 霹靂神フォルレミネ』」


Ni!!二ク調ちょうだダダいいィィッッ!!!』



 僕が魔力を強めて技能スキルを発動すれば、僕が戦闘態勢に入った事をあちらも感知したのか、奇声をあげて叫びながらこちらへと突貫して来た。


 うーん……やっぱり苦手だこのモンスター。今だってそう、血肉で出来た触手?のようなものを振り回しながらこちらに向かって来ている。

 探索者として活動している以上、どうしても見た目が気持ち悪いモンスターとは数え切れないくらいに出会うけど、コイツはそれ以上に単純に気持ち悪い。なのでさっさと倒すべきなのだ。


 本気でやれば結構直ぐに倒せるんだけど……それだとしなぁ。一体どうした物かな。

 まぁそれでも戦う以外に選択肢は無いんだけどね。



「全力で撃つとこの階層が壊れちゃうからね。少しは手加減するけど、容赦はしないよ。

───『鳳凰、殷霹の一太刀エグゼ・アレスタリア』」


『仁クゥゥッt、アァッ、ガァッ……!?』



 『燐火蒼焔ヴァトラ』、『電霆 霹靂神フォルレミネ』共に祝詞のりとを唱えた上での並列使用。その威力は、これまでに僕が使ってきた技とは比べ物にならないほど上がっている。


 前に『幽霊騎馬兵デュラハン:カヴァリー』に使用した時は相手を一撃で倒したけど、今回の場合はもし今の技を同じ『幽霊騎馬兵デュラハン:カヴァリー』が喰らえば存在そのものが消し飛ぶくらいの威力になっている。


 それだけの威力を持った一撃を食らってなお、眼前の敵は左半身が消し飛ぶ程度の傷で済んでいる。


 そもそもとして『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』は、あの程度の傷なら肉体を変化させて瞬く間に補完させてしまう。


 ……めんどくさいったらありゃしない。


 けれど、あくまで自身の肉体で補っているだけなので、サイズ自体は消し飛ばした左半身分小さくなる。

 これで再生持ちだったらヤバかったと思う。



『イたい!!!イタイいたtaイぃヨォォォォッッ!!!!……………………ア゙あ゙あ゙あ゙ア゙ア゙オマ死んじゃぇぇェ!!!』



 左半身を消し飛ばされた『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』は、その傷を無事だった血肉で補完しながら痛みに喘いで、沈黙。

 と思ったら、怨嗟の声を上げながらこちらに向けて手を伸ばし、恐らく『精神支配:隷属の呪言』という魔法を使ってきた。


 不味い……ッ!


 その魔法の発動を感知した瞬間、僕は今使える技能スキルや魔法を総動員して、全力で阻害レジストした。

 だがそれでも完全には阻害レジスト出来なかった様で、精神の一部を引っ掻き回されるようなとてつもない不快感が襲って来た。



「ぐっ……!?」



 精神支配まではされなかったものの、やはりとてつもない不快感によってしばらく動けなくなる。


 そうして僕が動けなくなっている時、『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』はここがチャンスと言わんばかりに、音速を超えた速度でこちらに向けて触手を振り抜いた。



「ぐぁっ……!?」



 咄嗟に触手と僕の間に腕を入れて防御したものの、その攻撃をモロに食らった僕は派手に壁際へと吹っ飛ばされた。

 物凄い勢いで飛ばされながら、轟音を立ててダンジョンの壁に激突した。


 いったぁ……。派手に吹っ飛ばしてくれちゃってまぁ……、少しはこっちの被害を考えて欲しいね。


 何とか起き上がりつつ体の状態を確認すると、流石の 討伐難易度:EX と言うべきか、何本か骨が折れていそうだった。

 どうやらかなりの勢いだったようで、防御した腕や触手に叩かれた横腹の部分から、骨が折れた事が分かる激痛が伝わってくる。

 しかし仮に骨が何本折れようと、目の前の敵を倒す事に変わりは無いし、倒すしか無いので、折れてる事は気にせずに立ち上がる。


 改めてしっかりと起き上がり、倒すべき敵を見てみると、今の一撃で僕を殺したと思っているのか踊りのような物を踊っていた。


 今の一撃でやられる程、僕はヤワじゃ無いよ……?


 そんな思いを込めながら、『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』に不意打ちする。

 異空間保管庫ストレージから幾本ものナイフを取り出し辺りにばらまく。そのナイフが地面に落ちない内に、『電霆 霹靂神フォルレミネ』によって周囲に磁場を作り出す。

 磁力によって空中に浮いたナイフ達に電気を纏わせ、電磁気力によってナイフ達を加速、音の何倍もの速度で撃ち出す。



「お返しだよ……『穿雷、黑鐵センライ・クロガネ』───!」


ァッッ!!?』


 

 呑気に喜んでいた敵は、死角からの一撃を避け切れずにその身体を思い切り貫かれた。

 貫かれると同時に、ナイフ達に纏わせた電気によって肉が焼け、『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』はまだえ苦しみながらこちらに振り向く。



『ナん!!なんなんなんぇぇェッッ!!!』



 ショッピングモールで駄々をこねる幼子のように、辺りに体を打ちつけながらやたらめったらに触手を振り回し周囲に傷をつけていく。

 僕に不意打ちされたことが余程気に食わない様で、癇癪を起こしながらこちらに向かってくる。


 癇癪を起こしてるアイツにはあんまり触れたくは無いけど……

 このままだと、こいつのせいで上層階にも被害が及ぶかもしれない。やはり早めに始末しておくべきだと思う。



「次で決めるよ。───『炎雷公の一穿』」


ィ゙ヴぅ゙ぅ゛!!!』



 左足は半歩前に。右足を引いて腰を落として構える。刀を握る右手を、弓矢のごとく身体の後ろに引く。全身を魔力と雷で強化し、体からは炎を吹き上がらせる。

 爆発的に強化された身体能力をもって踏み込み、炎と雷で爆発を起こし更に加速。

 ゴウ、という爆音を辺りに響かせながら、僕の体が急激に前へと押し出される。


 音速を圧倒的に上回る速度で、眼前の敵を穿つ神速の一突きが放たれた。



「フッ───!」


『亜゙ア゙ァ゙ァ゙ぁ゙ッッっ!!!!』



 『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』は、神速の一突きによる激痛に悶え苦しみ、無闇矢鱈に触手や体を振り回す。


 だがその抵抗も無意味な物だ。


 『コガラシ』が突き刺さっているのは身体を構成する核のようなコアが存在している場所。そのコアを刺突によって破壊された影響か、『凩』が刺さる場所から次第に体が崩れていく。

 


ャダいやダァ……いやァァァぁぁ……』



 最後まで悲痛な叫びを上げ続けながら、『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』はその身を焼かれて死んでいった。



「何とか、なったみたいだね……」



 最近は怪我をすることも無かったから、久々に骨折する程の大怪我をした。……まぁ、探索者を生業としている人達は、一般の人と比べても体が頑丈になるため二、三日で骨折も治るから平気だけど。

 もちろん、治癒魔法で治すことも出来るけど、出来れば自然治癒で治した方があとも残らず体の負担にもならないので出来れば自然治癒で治したい。

 

 あ、そうだ配信。消したままだった。


 という訳でドローンは……あった。

 突如『蠢く血肉を求める者アノルマーレ』が出現したこのトラップ部屋の、戦闘を始める前まで僕がいた入口ら辺にポツンとあった。

 いやぁ無事で良かった。実を言うと、先程までの戦闘の余波で壊れていないか少し心配だった。目立った傷は無いようで何よりだ。


 そんなこんなで配信再開。

 ドローンに付いている配信開始のボタンを押し、スマホから配信の枠を立ち上げれば配信の再開完了だ。



「えぇっと……どうも。久遠です。なんとか無事でした」



:久遠!!?

:良かったぁぁぁぁぁ!!!

:お前生きてたのか!!

:無事で良かった!!!

:めっちゃ心配したぞ俺ら!?

:お前が配信消したせいで地上は大パニックだよ!!!

:そーだそーだ!心配させやがって!!



 僕が配信を再開した瞬間、多くのコメントが僕の配信へと送られてきた。

 その中の多くは僕の無事を喜ぶ声や、心配していたというむねのコメントだった。


 うーん……やっぱり心配かけちゃったよね。真白や海斗に。

 これは……家に帰ったらどうなるんだろうなぁ……。


 聞こえは悪いが、僕の事を良く知らない人達がこれだけ心配するという事は、僕と親しい海斗や家族である真白には更に心配をかけたに違いない。

 多分、いや確実に真白は怒っている。海斗は……まぁアイツなら大丈夫だろう。


 僕がどうしようかと悩んでいると、突然スマホが鳴り出し、僕に電話が来た事を告げた。

 少し配信をミュートにして画面外に行き電話に出てみると、電話の相手は 探索者協会支部長ギルドマスター鷲見すみさんだった。


 鷲見すみさんにも心配かけたろうしなぁ……怒って無い事を願おう。



「……もしもし?」


『久遠くん!?無事で本当に良かった……!何かあったらどうしようかと……!』



 案の定、鷲見すみさんにはかなり心配をかけていたらしい。

 無事にこのダンジョンから出たら謝らないとな。鷲見さん以外に、真白や海斗にも。


 とにかく、今は早く地上に戻らないと。

 先程このダンジョンに鑑定をかけてみたけど、どうやら本来の適正ランクに戻っているらしい。僕が今いる階層からも異変は感じられないため、このまま戻っても大丈夫だろう。


 そう考えた僕は、今度訪ねる旨を伝えて鷲見すみさんとの通話を切り、配信を見ている皆にも説明して上層への道を登り始めるのだった。



─────────


──────


───



 ……ふぅ。何とか上層に着いた。


 結局、超深層から戻って来るのに六時間ほどかかり、時刻はすっかり夕飯時を指していた。



「とりあえず……一旦ここで切るね。皆今日はありがとう。また後日配信はやるから、出来れば見に来てくれると嬉しいよ」



:おつー

:おつー

:お疲れ様だー

:いやまじでお疲れ様。

:今日はゆっくり休んでくれ……

:そうそう。今はなんも考えずに家族に顔見せてやれ。

:きっと久遠の家族は心配してるぞ!!


 コメントの多くがこちらを気遣った温かいもの。見ているこっちまでポカポカとした気持ちになる。

 今日は視聴者の皆にも心配をかけちゃったし、また後日謝罪配信もしないといけないかな……と、そうだ。ここに留まってる暇があるなら早く帰らないと。

 

 もうほぼ目の前に地上は見えているし、何回も言うようだけどいつまでもここに留まっている訳にはいかない。

 ……僕の妹はそれだけ面どu……、じゃなくて。きっと凄く心配しているだろうからね。


 いやー。にしても疲れた。


 まさかEXランクのモンスターと戦うことになるのは流石に予想外だったし、結構大きな傷を貰ってしまった。

 これは一週間くらいを療養に充てた方がいいかな。

 せっかくの機会だ。まだ読めていない推理小説もそれ以外の小説もたくさんあるし、これを機に読めるだけ読んでしまおう。


 そう考えた僕は、一応身バレ対策として最上位技能エクストラスキル疑惑の迷彩ダウフラージュ』を発動させながら家への帰路へと着くのだった。

 




─────────────────────



 前書きで謝罪はしたので、後書きでは突発!作中の技解説!的なのをやります。やると言ったらやります。(圧)

 とは言っても、あまり詳しくは説明出来ないんですけどね!あはは……(^^;



炎雷公えんらいこう一穿いっせん


 作中の通り、『燐火蒼焔ヴァトラ』と『電霆 霹靂神フォルレミネ』の併用によって使う事の出来る刺突技。

 "貫通力"という面で見たら、久遠が使う技の中でもかなりの上位に位置する技。



 以上!解説終わり!


 ……え?短い?それはごめんなさい。でも許して下さい。お願いします。



 まぁそんなクソほどどうでもいい事はゴミ箱にでも捨てまして。


 お読み頂きありがとうございます!良ければ次回も楽しみにして頂けると嬉しいです!


 以上、作者からでした!



 










 

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ダンジョン配信で人気のアイドルを助けましたが、そんなことよりダンジョンに潜りたい。 〜無自覚最強主人公は、面倒事が嫌いなようです。〜 柊 凛 / Rin Hiiragi @Sanerasann

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