第24話人の陰口

「やめてよ!」語気を荒げ、益々春樹の腕にしがみ付く。


「なあ、奈美が嫌がっているから止めてやれよ?」


春樹の言葉に一瞬たじろいだが、そこは気を取り直して春樹をキッ!


と睨み「オマエが俺より強いのは知っている。


 だから無駄な争いをしたくない。大人しく来てくれ。」


「今頃百貨店の大丸の一階でアホ面下げて待って居ると思う。」


人の居ない処で陰口を言うなんて最低だと、思っていた春樹はまだ留まっていた。


「頼む!」市川の渾身の大声で、ボタン雪が粉雪に移ろいしんしんと降る雪が、大雪めいてきた。


「行ってやるよ。」


鈴蘭学園の制服は男子はスタンダードだが、ブレザーとミニスカートだったからタイツも履いてない奈美の白い脚は、寒そうに膝頭をくっつけて太腿をすり合わせていた。


「行こうか奈美、ロングコートを着てくれば良かったのにね?」


さりげない優しさの春樹の言葉が一番好きと、思っていた。


春樹の言葉に促され鈴蘭台駅まで歩き出した奈美は寒さも忘れ春樹の横に並んで歩を進めた。


 それを観ていた市川は、この前の北鈴蘭台駅で一理山春樹と殴り合って負けたその瞬間。

 体格差だけでは勝てない事を理解していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る