第6話 なぜ私がこんな目に…
翌日、本当は貴族学院になんて行きたくない、マリンにもジェファーソン様にも会いたくない。でも、証拠を集めるためには、学院に行かないと!そんな思いで、学院に向かう準備を始めた。
「マーガレット、ジェファーソン殿に昨日の無礼を詫びるのだぞ。本当にお前は、あのような虚偽を訴えるだなんて。恥ずかしい娘だ」
お父様が朝から私を怒鳴りつけている。何が虚偽よ。娘の言う事を全く信用しないだなんて。悔しくてついお父様を睨んだ。
「何だその目は。本当にお前は誰に似たのだか。とにかく、見苦しい嫉妬心をこれ以上むき出しにするな。いいな、分かったな」
朝から煩わしいお父様を無視し、そのまま馬車へと乗り込んだ。正直食欲もあまりなく、昨日の夜から何も食べていないが、全くお腹が空かない。
このままやせ細って弱っていったら、婚約破棄できるかしら?弱ったくらいでは無理か…そんな事を考えているうちに、貴族学院に着いてしまった。クラスにはマリンもジェファーソン様もいる。そう思うと、なんだかクラスに向かうのが辛くて、どうしても馬車から降りる事が出来ない。
「お嬢様、学院に着きましたよ。体調でも悪いのですか?」
御者が心配そうに声をかけてきてくれる。
「いいえ、大丈夫よ。それじゃあ、行ってくるわね」
気を取り直してゆっくり馬車から降り、教室へと向かった。大丈夫よ、私は何も悪い事をしていない。堂々としていればいいのよ。そう自分に言い聞かせて教室の中に入る。
すると…
「マーガレット様、マリン様から話を聞きましたわ。ジェファーソン様と少し話をしていただけで、マーガレット様に酷い暴言を吐いたのですってね。ジェファーソン様にも婚約破棄を迫ったそうではありませんか。いくら何でも、お2人が可哀そうですわ」
「そうですわ、マリン様なんて、学院に来てからずっと泣いていらっしゃるのですよ」
教室に入るなり、一斉に令嬢たちに囲まれ、文句を言われた。一体何を言っているの?全く理解が出来ずに、マリンの方を見ると、シクシク泣いていた。さらに
「皆様、私の為にありがとうございます。でも、私もいくらマーガレットの為と言っても、少しジェファーソン様と仲良くしすぎたのかもしれませんわ。マーガレット、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
涙を流しながら、必死に謝るマリン。
「マリン様、そんなに謝らなくてもいいのですよ。それにしても、色々とマーガレット様の為に動いて下さっていたマリン様の気持ちを無下にするだけでなく、お心を傷つけるだなんて。マーガレット様がそんな酷い人だなんて思いませんでしたわ。さあ、マリン様、意地悪なマーガレット様は放っておいて、私たちと一緒にいましょう」
「そうですわ。それにしても、嫉妬に狂った女程、見苦しいものはありませんわよね。そもそもマリン様は悪い事なんてしていないのに」
これって…
まさか私が悪者になっていると言う事なの?
訳が分からず、ジェファーソン様の方を見る。すると
「皆、マーガレットはちょっと嫉妬深いけれど、それだけ僕の事を愛してくれていると言う事なんだよ。それに僕も、いくらマーガレットのためとはいえ、色々と親友でもあるマリン嬢に相談していたこともよくなかったのだろう。マーガレット、もうマリン譲とは金輪際話をしないから、どうか機嫌を直してくれ」
ジェファーソン様まで、私が嫉妬深い女として通すつもりなのね。自分がした事を棚に上げて、皆して私を悪者にするだなんて…
悔しくて悲しくて、唇をギュッと噛む。
「ジェファーソンは優しいな。俺ならこんな我が儘な女、お断りだけれどな」
「本当ですわ。ちょっと他の令嬢と話をしただけで怒り狂うだなんて、貴族令嬢として有るまじき行為ですわ」
私が貴族令嬢として有るまじき行為ですって。それじゃあ、婚約者以外の異性と口づけをしたり、裸で抱き合っている事は、貴族としていい事なの?そう叫びたいが、きっと私が何を言っても聞き入れてくれないだろう…
両親ですら、私の言う事を信じてくれなかったのだから。既に悪者になっている私が、何を言っても無駄だわ…
そう思ったら、何も言う気になれず、そのまま自分の席に着いた。今にも涙が溢れそうになるのを、必死に堪える。どうして私が、こんな目に合わないといけないのだろう。
そしてお昼休み、いつもはマリンと一緒に食べているが、今日は…
「マリン様、今日は私たちと一緒に食べましょう。あんな意地悪な令嬢と一緒にいる事はありませんわ」
「でも…マーガレットは私の大切な親友なのです。だからどうかマーガレットも…」
「マリン様は優しいのですね。マーガレット様、お優しいマリン様が、あなたも一緒にとおっしゃって下さっていますわ。どうしますか?マリン様に謝るのでしたら、一緒に食事を食べて差し上げてもよろしくてよ」
ふとマリンの方を見ると、ニヤニヤした顔でこっちを見ていた。
「申し訳ございませんが、私は何も間違った事をしておりません。マリンとはもう、友達としてやっていく自信がありませんので。それでは失礼いたします」
自分の気持ちに嘘をついて、皆と一緒にいたくない。それなら1人でいた方がマシだ。そんな思いで、そう伝えた。
「まあ、酷い。マリン様がせっかく許してあげるとおっしゃっているのに。マリン様、あんな女、放っておきましょう」
「本当に嫌な令嬢だ事」
そう言って私の前を去っていく令嬢たち。去り際にマリンが、再び私の方を見てニヤリと笑ったのを、私は見逃さなかった。
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