花は白く密は黒く

絵之旗

第1話 白花の初動

スマホの画面にはSNSの画面。そこに映し出されるは『リア充爆発しろ』の文字。

キャラクターのカップルの様子を面白おかしく妬みを含みつつも冗談交じりの冷やかしの一文。

私はふと画面から目を外し、目の前の人だらけの駅前を見る。

先ほどの文の影響を受けてカップルに目が行く。

私には到底爆発しろと冗談でも言えない。いや、そもそも知らない他人にいきなりそういうことを言うのはおかしいのだろうが…そういうネットのジョークのノリを身に纏ってもいうことはないだろう。


想い人がいるって奇跡だよなぁ。


そう思った。

駅前は人で溢れ、その中から意中の相手と出会い親しくなるとは…どれほどの確立なのだろうと思ったりして…。



×××


教師に呼ばれた。

特にこれと言って身に覚えがない。職員室の扉を開けると

「ああ、白花さん。」と担任の的井。私はそのまま担任的井の元へ行く。

「なんでしょうか。」

「ごめんなさいね。びっくりしたでしょう。」

「いえ、それでなんの用でしょうか。」

「ええとね。」

なんとも歯切れの悪い返答だ。言いたくないことなのだろうか。

「あのね、もう白花さんにしか頼めないの!」泣き顔で私にしがみつく的井。

冗談でもびっくりするから泣くのはやめてほしいのだが…。


………

……


的井教師の説明が終わる。

「…つまり…」と私が結論をまとめようとすると的井が言う。

「黒蜜さんを学校に連れてきてほしいの」

「なぜ…」

「黒蜜さんはいい成績を持っていたのに…もったいないって思って。白花さんと仲が良かったって聞いてたのよ。どうかな…。」

「私、物語とかで大人が無能なキャラクターって苦手なんですよね。」

「きゅ…急にどうしたの。白花さん。」

「冗談です。まぁ私も黒蜜さんは気になっていましたから。ちょっと今日家によって帰ってみます。」


黒蜜さんは不登校だ。

深刻な不登校ではない。黒蜜さんが来なくなってまだ一か月も経っていない。

ただし、不登校に片足突っ込んでいる彼女の現状に的井教師は焦っているとみた。

的井氏は新任なのでそういうところでボロがでそうだななどと私は高校生ながらに調子に乗った上から目線で教師のことを評価した。もっともこういう教師は好きなのだが…。


×××


というわけで黒蜜さんの家についた。

ボロアパートだ。その二階。きぃきぃと悲鳴を上げる階段に恐怖しながら二階に着く。一番奥が黒蜜さんの家だ。


203 黒蜜


…。ボロボロの表札。

呼び鈴を鳴らす。

……。

反応なし。

もう一度押す。

…。

反応なし。


ドアをノック。

コンコンコン。



するとガチャリと開いた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る