第145話
突然、穢れが力を失ったように地面へと消えていく。
「終わった……のか?」
「リッツ、私はアルの様子をみてくるからニエちゃんをお願い」
「はい!」
種が芽吹いたとすればあっちでエリクシールがみれる。
世界の穢れを塞いだ伝説の草、みたいのは山々だがまずはニエとアンジェロだ。
「ニエ、怪我はないな?」
「はい」
「んっ? どうしたニヤついて」
「リッツ様、エリクシールがみたくて仕方ないって顔してますよ」
「えっまじ!?」
「嘘です」
「……冗談がいえるくらい元気なのはわかった」
まったく、どれほど心配したか……。
アンジェロも元気に走り回ってるし大丈夫だな。
「どれ、俺たちもアルフレッドさんのところへいこう」
「はい――あれっ? ない……アンジェロがない!!!!」
ニエは今までみたこともない絶望した表情で髪を触る。
アンジェロって、あぁ髪留めのことか。
地面は雑草が多いから探しにくいな……。
「落としたんだろ、今度また作ってやるから」
「ダメッ! あれは私の大切なもので――どうしよう……どこで落としたの……」
こんなに焦ってるニエは初めてみたかもしれない。
そこまでして探さなくてもいいと思うが。
「ワフッ」
「ん? なんだアンジェロ――ってそれは!」
アンジェロがくわえてるのはニエの髪留めじゃないか。
「お前、これを探してたのか」
「ワン」
「そうだ、いいことを思いついた。アンジェロ、動くなよ」
「ワフッ?」
さっきのお返しだ。
髪留めをアンジェロの頭に付ける。
「ニエー、アンジェロも疲れたから早くいこうだってさー」
「……ぐすっ」
「ッ!!」
な、泣くほど悲しかったのか。
「ワン」
「……あれ……?」
ニエがアンジェロの頭についてる髪留めに気付く。
「アンジェロがみつけてくれてたぞ、もう無くすなよ」
「ありがとうアンジェロー!!」
まさかこんなに大事にしてくれてたなんてな。
帰ったらまた何か作るか。
「さぁみんなと合流するぞ」
「はい!」
師匠たちの下に向かうとアルフレッドさんが大木の根本で休んでいた。
スキルの副作用かわからないが髪は真っ白になりかなり疲弊してるようだ。
「大丈夫ですか?」
「気に……するな……」
「エリクサーを飲んでください。回復しますから」
「……リッツ、無駄よ。アルは老衰なの」
「えっ、ど、どういうことですか」
「アルのスキルは『加速』、自分を含め対象を加速させることができる。アルは種の成長を加速させるためにその代償として自身の成長も早めることになったの」
「そんな……なんとかできないんですか!? そうだ、エリクシールを使えば!」
「そんなことをすればどうなるかわかってるでしょ」
「ですがこのままじゃアルフレッドさんが!」
「これは俺が勝手にやったことだ」
そんな……みんな生きて帰れると思ったのに……。
「……君に話がある」
「無理しないでください! 今、何か方法を考えますから!」
エリクシールの葉を使って薬を作れないだろうか。
葉っぱ一枚だけでもかなりの効果は期待できる。
草として残るから穢れだってそのまま防げる可能性も――。
「リッツ、話を聞きなさい」
「し、師匠……」
師匠の言う通りだ。
最後の言葉くらいちゃんと聞いてあげなきゃ……。
「――君の村を、家族を殺したのは俺だ」
「えっ」
何をいってるんだ。
アルフレッドさんは師匠の友人だ。
そんなことをするはずがない。
「俺はもうすぐ死ぬ。仇を討つなら今しかない」
「アルフレッドさんが村を襲った犯人……? そんなことあるはずが……」
「俺は元々罪人だから気にするな」
だからって師匠の友人を殺せって?
……いや、俺にはその
村のみんなを……家族を殺した犯人を裁く権利が――。
「…………もし、それが本当なら俺はあなたを許しません。だけど……復讐はしない……師匠が悲しむから」
「リッツ……」
「そうか、後悔はないんだな?」
「あなたは……ニエを救ってくれた恩人でもありますから」
本当に悔いはないかと聞かれればわからない。
だけど師匠が復讐を望んでいないことくらいわかってる。
「良い師をもったな」
「はい、俺には勿体ないくらいの……」
「ふふふ……最後に、
友人としての最期を迎えたいのだろう。
俺はニエとウムトに目を配ると互いに頷く。
「わかりました。師匠、俺たちは先に戻ってます」
「リッツ」
「はい?」
「……ありがとう」
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