第138話 ミレイユサイド

「フハハハハハハハッ! どうですか、これが世界を統べる錬金術の力です!」


 バケモノの一部が変化すると元の男の姿へと変わる。


 ミレイユたちは男の傷が穢れで再生するため攻めあぐねていた。


「兄さん、あいつの身体どうなってるの」


「もう少し待ってくれ、これは……あの男からエリクシールの気配が出てる……」


「こそこそとどうしたんですか。先ほどの威勢がないですよ?」


「あら、それは失礼したわ――ねッ!」


 ミレイユの強烈な蹴りを男は防いだ。


「ん~だいぶ馴染んできました。本当にこの力は素晴らしい」


「そんな姿で街を歩いたらすぐに牢獄いきね」


「ご心配なく、この世界は間もなく生まれ変わるのですから」


 男が手を振り上げると穢れが地面から吹き出す。


「ミレイユさん下がってください! そいつはエリクシールの力を取り込んでいます!」


「さすが古き民の生き残り、なかなか聡いじゃないですか」


「あれは呪われてるんじゃなかったの?」


「錬金術師にとって必要なのは素材であり呪われていようとも関係ないんですよ。そして我らの宿願は人類の進化、遥か昔にいたとされる不死の兄妹のようにね。近くにちょうどいい実験場があって助かりましたよ」


「……まさか、ルルの村を襲ったのはお前か!?」


「襲ったとは人聞きの悪い、魔物に困っていたので協力してあげただけですよ。まぁ全員ダメになっちゃいましたが――あの生き残りが一筋の可能性を見出してくれた」


「元に戻しなさい! 今すぐっ!」


「あの子だっていつかこの素晴らしさが分かるときがきますよ。魔物や迫りくる死に恐怖することもない自由な体を手に入れたとね。さぁそろそろ遊びは終わりです!」


 男の姿が穢れによって変わっていく。


「このままじゃ埒が明かないか……」


「一度対策を練ったほうがよさそうですね」


「兄さん待って、呪いが!」


 ウムトとリヤンが光に包まれると呪いが解け地響きが起きる。


「呪いが解けてる……だけどこれはいったい……」


「これはなんと好都合! 私だけの力では弱まらせるだけしかできませんでしたがまさか呪いを解いてくれるとは! ついに、新たな時代の幕開けです!」


 次第に揺れが大きくなると穢れが溢れ出す。


 男は隙を見ると奥へと消えていった。


「師匠ー大変です! エリクシールが枯れました!」


「あなた、何をしでかしたのよ……」


「の、呪いを解いただけですよ!」


「兄さん、あの草が枯れるなんてことあるの? あの頃はそんなことなかったし原因が呪いだとしても急すぎるわ」


「これはあくまで僕の予想だけど花を付けたのが原因かもしれない。植物というのは花をつければ終わりを迎えるというのが基本だ。きっとエリクシールも例外ではなかったのかもしれない」


「思った以上に厄介なことになったわね。あなたたちの不死は治ったけどあの男はそのまま、そして穢れを浄化していたエリクシールが枯れたとなれば穢れを止められるモノは何もない」


「いいや、まだ可能性はある」


 万策尽きたと思った矢先に口を開いたのはアルフレッドだった。

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