第136話
崖を渡りきると急に空気が変わった。
先ほどまであった霧が消えると、巨大な石柱が現れ、その脇を小さな小川が流れていた。
まるで時間が止まったように静かだ。
「兄さん、間違いないわね」
「あぁ……リッツさん、ここからは僕とリヤンが先行します。トリスタンはティーナさんを守ってくれ」
二人とも少しピリピリしているな。
もう少しリラックスしないと持たないぞ。
「リッツ様、二人
「それもそうか、何かあっても師匠とアルフレッドさんもいるしな」
魔物の気配だってないしそんなに慌てなくても――。
「ここはお前のような奴がくる場所ではない! 即刻立ち去れ!」
急にウムトが声をあげ、近くに置いてあった石碑を睨むと人影がでてきた。
白い服に金色の刺繍の男……どこかで見た気がする。
「貴様、なぜここにいる」
「久しぶりの再会なのにそんな怖い顔をしないでくださいよ」
「師匠、この人のこと知ってるんですか?」
「あなたが知る必要はないわ」
「まぁまぁそう言わずに。リッツ君が頑張ってくれたおかげで研究も捗っ」
話していた男が吹き飛ぶと代わりに師匠が立っていた。
なぜかわからないが師匠がキレている……あの男の人、何をやらかしたんだ……。
「――まったく、これだから暴力しかしらない連中は嫌いなんですよ」
なっ、師匠の攻撃を受けて無傷だと!?
男が服の汚れを払いながら戻ってくるとウムトは前にでた。
「やはり……あのとき全員殺しておくべきだった」
「兄さん、過去を悔いるのはなしよ」
「なるほど、君たちが文献にあった兄妹か。本物の不死がこの目でみられるとはねぇ」
こいつ、リヤンたちのことを知っているのか。
「ここは魔物が多い、大人しく帰ったほうが身のためよ」
「ご心配なく! それよりもお連れさんの心配でもしたほうがいいのでは?」
男がルルを指差すと身体から穢れが溢れ出した。
「ルル、大丈夫か!?」
「ま、マモノ……カラナキャ……」
「まさか適合者が生きてたとは思いませんでしたが、制御もできないようだしさっさと殺したほうが賢明だと思いますよ。ま、殺せるかわかりませんが――それじゃあ僕はこの先に用があるので失礼するよ」
「待てッ!!」
ウムトたちが男を追いかけると徐々に魔物の気配が近づいてくる。
まさかルルは魔物に反応しているのか。
とにかく今はエリクシールを見つけて呪いを解くのが先決、ここはアルフレッドさんと俺で乗り切るしかない。
「師匠、ここは俺がなんとかします。ティーナ、師匠と一緒にリヤンたちを追ってくれ」
「は、はい!」
「魔物もきてるしやるなら俺が変わろうか?」
「待ってください、魔物をすべて倒せばきっとルルも戻るはずです。それでもダメなら俺が……」
「わかった。魔物は俺が始末してこよう」
あれ、いなくなった……?
アルフレッドさんの強さは尋常じゃなかった。
周りに集まり出した魔物を片っ端から殲滅するとあっという間に気配がなくなる。
「様子はどうだ?」
「ルル、もう魔物はいないから安心してくれ」
「ウウゥゥゥゥ……ッ」
「リッツ様、地面から穢れが!」
「アンジェロ、止められるか!?」
「ワンッ!」
アンジェロの浄化が穢れを消すとルルはその場に倒れ元の姿に戻った。
「ふぅ……どうにかなったか。アルフレッドさん、ありがとうございます」
「君のいうことを試しただけだ。この子は俺が連れて行くから先を急ごう」
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