第115話

 風呂から戻ると俺のベッドでニエとアンジェロが遊んでいた。


「あ、リッツ様おかえりなさい」


「ワフッ」


「あんまりはしゃぐと眠れなくなるぞ」


「だって久しぶりにリッツ様と一緒なんですよ。緊張しちゃって私、ベッドを間違えてしまいそうです!」


 新しく用意されたニエのベッドは、ハリスが丁寧に手直ししたままの状態だった。


「すでに間違えてるという自覚はあるようだが……まぁいいや。ニエ、渡したいものがある」


「はい? なんでしょうか」


 俺は髪飾りを取り出すとベッドで姿勢を正したニエにみせた。


「師匠のついでみたいになってしまったけど、色々と助けてもらったお礼だ。よければ受け取ってほしい」


 キョトンとした顔でニエは俺の顔と髪飾りを見ている。


 あれ、もしかして微妙だったか。やっぱりニエも宝石とかのほうがよかったかも……。


「一人で作ってみたんだけどダメだったか? 嫌なら宝石とか今度何か買いにでもいくぞ」


「こ、これ、私がもらっていいんですか……?」


「嫌じゃなければな。いらないものを渡されても困るだろうしはっきり言ってくれていい」


「違うんですッ! なんというか、嬉しすぎてどうしたらいいのかわからないというか……ど、どうしましょう!?」


 ニエは口を開け何か言おうとしながら必死に視線を動かしていた。


「落ち着け、嬉しいなら素直に喜べばいいんだよ」


「は、はい! えっと……アンジェロ!」


「ワン」


 咄嗟にニエがアンジェロに声をかけるとアンジェロは器用に前足を上げた。そしてニエは肉球に向けて小さくハイタッチした。


「やったーーー!」


「ワフッ!」


「いつの間にそんなことを教えたんだ……まぁ、落ち着いたなら受け取ってほしいんだが」


「そうでした! 早くしないと嘘だったとか、気が変わったとか言われてしまうかもしれません!」


「俺を何だと思ってるんだ」


 ニエは慌てて髪飾りを受け取るとじっくりとそれをみた。


「ふふふっ、アンジェロそっくりでかわいいです」


「そういってもらえると頑張って作った甲斐があったよ」


 ニエは髪飾りを付けると俺にみせる。


「どうでしょうか?」


「アクセントになっていいんじゃないか。ニエは綺麗だからなんでも似合いそうだけどな」


「リッツ様がついに私を認めてくれた……!」


「何を認めたのかわからないがそろそろ寝るぞ。自分のベッドに戻れ」


「はい、またあとで! アンジェロ、いくよー」


 寝込みを襲う宣言をされた俺はニエたちがどいたベッドへ横になる。ニエは自分のベッドに戻るとアンジェロと一緒に髪飾りをみながら小さく騒いでいた。


 いつにも増してご機嫌なニエの声を聞きながら俺はゆっくり眼を閉じた。

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