第107話
ウムトたちの紹介を済ませると俺はいよいよ屋敷を増築する話を進めることにした。
そこでいくつかの問題が出てきたのだが、一つは今後使用人が増えた場合、部屋が足りなくなる可能性が常に付きまとうということだ。
さすがにハリスだけでは無理があるし、せめて一人か二人は追加で雇いたい。
そしてもう一つの問題だが、以前この屋敷を作った人物は景観まできちんと考えていたということだ。
教会の裏にあるとはいえ、風景に馴染むようなこの屋敷は芸術品ともいえるだろう。下手に手を加えてこのバランスを壊してしまっては作った方に申し訳ない。
そんなこんなで屋敷を外から眺めているとハリスがやってくる。
「この屋敷はある意味完成されているとも思えます。下手に増築をするとかえって見た目が悪くなってしまうかと。そこで別棟を作られてはいかがでしょう」
「別棟か、なるほど……その手があったな」
「屋敷の裏手に寝泊まり用の部屋を作れば、教会側からの景観も壊しませんし、置かれている船や周囲の警戒をするにも役立つかと思われます」
「あの辺は少し狭くないか。使用人といってもみんな荷物とかあるだろうし、ある程度は部屋の広さも必要だろ」
「リッツ様、使用人とは本来出稼ぎに来ている労働者でございます。最低限の荷物だけを持ち、身軽であるということが条件の一つでもあるのです。それに、一部屋に複数人で寝泊まりし業務に従事するというのは何も珍しいことではありません」
「そういうもんなのか? だったらなんとかなりそうな気もするな……。夜にでもみんなと相談してみよう」
夕食が終わりみんなを集めるとウェッジさんが部屋に入ってくる。
「――っということで、いくつか簡易的な家を作ろうと思うんだけど何か意見は?」
「俺たちのほうは船側と裏手に一部屋ずつほしい。そのほうがいざとなれば動きやすいし下手な警備を雇うより楽だからな」
ウェッジさんが応えるとウムトも続けるように口を開く。
「僕たちも雨風さえ凌げればそれで構いません。外には慣れていますから」
「さすがにそういうわけにはいかないよ。中身は別として二人はまだ子供、ありえないとは思うが連れ去られたりしたら大問題だ」
そう、万が一ことが起きた場合、シリウスが大変なことになる。
聖人の連れ人であり実は不死の子供を誘拐したなんてことになれば、本人が知らなかったとしても口封じでその犯人を処刑しかねない。
予防線というのは張るに越したことはないのだ。
「そうね、トリスタンが間違えて人を食べたりしたら大変だしね」
「それはマジでやめてくれよ……。今度アンジェロと一緒に殺さない訓練をしてくれ」
話もまとまり別棟のことをハリスに伝えると、今度は使用人問題の解決に頭を悩ませることになる。
例のごとく斡旋所は利用できないだろう。ならばこんなとき、頼りになる人といえば――。
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