第65話

「こりゃあまた随分と……あなた、ハンターか冒険者稼業でもしてるの?」


「知人に強い人がいてね。お金は問題ないから俺の分とあともう一つ、これも頼む」


 俺は鞄からニエの服を出すと店主に渡した。


「あら、これまたすごい状態ね」


 受け取った店主は服をじっくりと調べる。


「二つとも生地の素材としては申し分ないけど、新しいのを使う?」


「ニエ、残してもいいがどうする?」


「思い入れのあるものでもないのでリッツ様にお任せします」


「それなら服を生地に使ってもらおう。新たに気持ちも切り替えられるしな」


 師匠に見つかればどんな地獄が待っているかわからないし、捨てずに済むならそれに越したことはないからな。


「わかったわ。あとは素材を選ぶけど希望は?」


「まず防刃、耐火もほしいな。衝撃吸収なんてのもつけれる? あ、でも俺は武器を使わないからな……打撃の力は損なわないようにしたいんだが」


「武器を使わないとはよっぽど腕に自信でもあるのかい」


「色々あってな。で、いけそうか?」


「素材は申し分ないからあんたの分だけならやれそうだね」


「それじゃあ頼む。ニエの分はとにかく本人を護れるように作ってくれ」


「はいよ、それじゃ素材を選ぶから待ってな」


 店主が二つの袋に素材を詰めると手渡してくる。


「それじゃこれをルガータに持って行ってくれ。仕事だと言えばわかる」


 俺たちは店を出るとルガータの家へ戻った。


「やぁどうだった?」


「この通り、あんたの仕事をもらってきてやったよ」


 素材の入った袋を手渡すとルガータは中を確認する。


「こりゃあ今日は徹夜かなぁ……。僕は仕事に入るから、君たちは島の観光でもしてきたらいい。昨日使った部屋は勝手に使っていいからね」


 ルガータは袋を持つと小屋に入り扉を閉めた。


「ちょうど時間ができたわね、話があるからついてきて」


 リヤンの後を追うと遺跡のような場所に出る。


「なんだここ?」


 中は広そうだな……。いつの時代に作られたモノだろう。


 リヤンは入り口で立ち止まるとこちらに振り返る。


「リッツといったか、あなたたちは穢れをどこで知った?」


「俺はあんたと同じようなヤツを二人見ていてね。一人は助けられたが、もう一人の神獣を連れた少年には殺されかけたんだ」


「……やはり、封印が解かれたのね…………」


 リヤンは小さく確認するように言葉を放った。


「聞きたいことは山ほどあるが、リヤンはあの少年のことを知っているのか?」


「えぇ、だけどその前にあなたたちは一族と神獣、そして穢れについてどこまで知っているか答えて」


 何度か質問を聞かれ、俺とニエは知っている範囲で答えていく。


「ニエ、あなたはほかに聞いていることはない?」


「ありません。私はリッツ様を見届けよと言われてきましたので」


「……わかったわ」


 リヤンはしばらく何かを考えると俺をみた。


「リッツ、あなたを襲った少年は……私の兄よ」

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