第57話
「……こんなんなっちゃった」
「……何をどうしたらこうなる。普通ならないよな? さぁ、説明をするがいい」
もうここに来るのも慣れた気がする――城の客室、足を組んで座るシリウスの前には、穴が開き生々しい色に染まった服が置いてあった。
やっぱり白はいけないな……汚れが目立つ。
「ちょっと転んで怪我しちゃって」
「お前、私に嘘が通用しないことを忘れてないか」
あっ……。
「ん~色々ありすぎて何をどこまで話したらいいか、時間がかかっちゃうなぁ」
「案ずるな、今はシルエが対応している。時間はたっぷりとあるぞ」
くそ! お前サボりたいだけなんじゃないのか!?
「ニエはどう思う?」
「リッツ様のご自由にしてください」
ニエは笑顔で膝に置いたアンジェロを撫でている。
「……シリウス、話してもいいが聞いて後悔するなよ?」
「ほう……私を脅すというのか。面白い、受けて立つぞ」
いや、まじで面白くもないしヤバいんだけど。知らないよ、後悔したって遅いんだからね?
俺はシリウスに順を追って説明した。
◇
「――これが証拠、その2だ」
俺は首元が真っ赤に染まってしまったニエの服を机に並べる。これが決定打となったのかシリウスは机に肘を付き頭を抱えた。
「…………」
「おーい?」
「うるさい、今整理中だ」
シリウスはぶつぶつと独り言を呟き、しばらくすると顔をあげた。
「よし、ひとまずお前とその子を一緒にさせてしまおう。式はいつ頃がいい?」
「ちょっと待て! 人の話聞いてた!?」
「もちろんだ。問題が二つあったときは一つに纏めてしまったほうが解決しやすい、君もそう思うだろう?」
「とても素敵な案ですね。リッツ様は照れ屋ですから」
「何をどうしたら俺が照れ屋に見えるんだよ」
「そういうところです、うふふ」
どうやらニエは俺を前にすると頭が弱くなるようだ。
「私にはお似合いにしか見えないが……まぁいい、話を戻すぞ。その少年はリッツが生きていると分かればまた襲ってくることは間違いない。ならば服も耐久性に優れたものを選んでおいた方がいいと思うのだが」
「あー言われてみれば確かに……だけど鎧じゃ動き難くてダメだし、どうしたもんかなぁ」
シリウスは顎に手を当て何かを考える。
「……海を渡った先に【ザーフニーゼン】という島国がある。噂ではアーティファクトがよく見つかっていると聞く。そこなら何か使えそうな防具や品を見つけられるかもしれんぞ」
海の向こうか……考えたこともなかった……。
「行ってみる価値はありそうだな」
「数日後に船が出るはずだ、それまで考えてみるといい」
「わかった、ありがとう」
俺は服を片付け城を出た。
「ニエは海の向こうに行ったことある?」
「ありません。ですからリッツ様がこれから向かうというのであれば楽しみですね」
ニエは笑顔で返事をする。
もしかしたら見たこともない草が生えてるかも……これはまたとないチャンスだろう。
「やっぱ、行ってみたいよな」
「ふふふ、そうですね」
「……いくか」
「リッツ様がそう思うのであれば行きましょう」
俺の胸は高鳴り、興奮止まず家に戻ると師匠たちに話をする。
みんなも行ったことがあるらしく、緑豊かで【カルサス】に似ている部分もあるという。つまり、未知の草に出会える期待度は大、これは行くしかないだろう。
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