第39話
「――ということで、ある程度は片付けたから残りは任せてきた。小型の魔物程度ならお前の兵でも大丈夫だろ?」
「……こいつの言うことに嘘はないか?」
「はい! それはもうとても素敵な活躍でした!」
なぜか俺の話を聞いたシリウスはニエに確認するとため息をつく。
「リッツ、魔物を倒してくれて感謝する。感謝はするが……」
「なんだ? 別に褒美を寄こせなんて言わないぞ。お前には屋敷まで揃えてもらってこれ以上ないくらい助けてもらってるからな」
「そうじゃない、お前はさっき出ていったばかりだよな?」
「さっきと言っても昼前だったろ。もう夕方になる頃だぞ」
俺をみるシリウスの目は心なしか半開きのような気がする。
「なぁ、買い物を済ませてくるように魔物の大群を倒したらどうなると思う?」
「早急に安全も確保できたんだし結果オーライなんじゃないの?」
「つい先ほど先遣隊を出したところだったのだ。あいつら、俺の命令だとは言え聖人様をお守りするんだーって意気込んでいたぞ」
……俺じゃなくて国を守れよ。
「もし、みんながこのことを知ったらどうなるかな……?」
「聖人では済まないな。英雄、勇者、下手したら王に匹敵する影響力を持つかもしれん」
それはさすがに冗談じゃすまないぞ!
「偵察にきてた隊には見られたが先遣隊はまだ知らない。何か誤魔化せる方法はないのか」
「今回ばかりはさすがに私もいい案が思い浮かばぬ。諦めてその者と貴族になるか?」
「やめてくれ……せめて一日は頑張って考えてよ」
「兵は村の安全も確認してから戻るだろうから二、三日の猶予がある。その間に解決策がなければ、大人しく英雄となるか貴族として職位を得るか決めるんだな」
「リッツ様、私は英雄であろうと貴族であろうと関係ありませんからご安心を!」
「はははは……ありがとう……」
まるで刑執行までの期限をもらった俺は飯を食うことも忘れファーデン家の屋敷へ戻った。
◇
「おかえりなさいませ。先ほどからリッツ様のお客様がお見えになりまして、現在ティーナお嬢様がご対応中です」
客? 誰だろう。
「わかった、すぐ行くよ。教えてくれてありがとう」
バトラさんに言われた客間へ着くとノックし部屋へ入る。
「リッツさんおかえりなさい」
「お、やっときたか」
「ウェッジさん!? なんでここにいるんですか!」
全身真っ赤な模様の入った服に短髪の男性は椅子から立ち上がるとこちらにやってくる。
この人の名はウェッジ、軽装で盗賊のようだが、これでもれっきとした『紅蓮の風』の副団長だ。師匠との付き合いは俺よりも長い。
「色々とあってな。詳しい話は後にして、ミレイユたちと会わなかったか?」
「いいえ……っていうか師匠たちも来てるんですか!?」
いったい何があったんだ……まさか俺の件で師匠たちまで追放されたんじゃ……。
「ここに来る途中、魔物の群れが出たって行商人たちに聞いてな。団長は先にそっちを見てくると言って俺はお前を探すために分かれたんだよ」
「そうだったんですか。それならちょうど今終わらせて――あああああああああああ!!」
咄嗟に閃いた俺は二人には悪いが大急ぎで城へ戻るとシリウスに名案を伝えた。
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