第2話 世界を知りたい
「収税調査のため、近隣の村々を周らせてもらっている。村の者を全員集めて頂けるか」
そう言ったのは白と赤を基調としたサーコートを纏った白騎士、十数人。
村の人達に呼ばれたアレンとウィルは、村長の家まで向かうべく歩き出そうとすると
「ウィル兄さん…?」
一瞬、ウィルがアレンの裾を引っ張った。足を止めたアレンはウィルの方を振り返ったが、
「何でもない。行こう」
すぐに、アレンはまた足を動かした。
村長宅に近づくにつれ、この村では異様な恰好の騎士達に自然と緊張が高まる。だが、それも彼らのシルエットが見え始めたばかりの話で、騎士達に近づくにつれ、アレンは驚きとは別に唖然とした表情を浮かべた。
「ウィル兄さん。あれ…」
アレンが唖然としたのは、彼らの容姿だった。
それは、全員が全員とても端麗な容姿をしており白髪や金髪と色素の薄い髪色を纏いその全員が赤い目をしていたからだ。
(僕と同じだ…)
アレンの髪は白色で、肌は血管が透けてしまいそうなほどに白く透き通っている。彼もまたとても綺麗な容姿をしていたが、アレンの右目は黒色だった。そして、左目は…。
アレンは思わず眼帯に触れる仕草をするが、すぐにみんなと同じように整列した。
一人ずつ、名前、家族構成と年齢を聞かれていく。
「次、君名前は?」
騎士の男はアレンの見た目に関しては一切触れることなく名前を問う。
「アレン。兄と暮らしています。年はじゅ、十歳です…」
メモを書き留めると、
「次!」
すぐに隣の人へと移った。
二時間ほどで、全員の尋問が終わると、アレンたちは仕事に戻るべく家へと戻った。
「ウィル兄さん!!さっきの人達は!?」
アレンは、隠しきれない好奇心でウィルに問う。
「彼らは…天使様だよ」
「天使様…?」
神の使いとされる者、と誰かから聞いたことがある。おとぎ話の存在だと思っていたのだが
「でも羽は生えてなかったよ」
アレンの聞いたおとぎ話では、みんな羽が生えていた。
「それは、物語の話だよ」
ウィルは笑って答えると
「本物の天使は魔法で空を飛ぶんだ」
「魔法で…」
アレンの知っている魔法は、ちょっと風を起こしたり、植物を成長させる程度のものだと思っていた。
(空を飛べるなんて…)
アレンは自分自身が空を飛ぶ姿を想像をしてみた。
きっと想像もつかないほど広い世界があるのだろう。山にも、川にも隔たれない自由な世界。
「ウィル兄さん!!僕にも空の飛び方教えてよ!!」
「ダメだ!!」
すると、ウィルは今までにないほどに大きな声を荒げると
「空を飛ぶのは天使様だけに許された特権なんだよ」
すぐに優しい口調に戻ったが、アレンはウィルが少し怖くなってしまって素っ気ない返事をしてしまった。
(あんなに怒ったウィル兄さんは初めてだ…)
もういい。何も考えないでおこう。アレンは、ベッドの中で寝返りをうつとそのまま眠りについた。
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