惑星少女

ムネヤケ

序章 少女の眠り

ついに人類が、地球の衛星月に着陸します

人類初の偉業です

さあ、どうなるのでしょうか…



テレビのナレーションが各家庭の居間に響く

その初の偉業に、皆が固唾をのんで見守る

全人類がテレビの画面に注目していた

その中央に座する、少女に…






ーーーーーーーーーーーーー


その衛星の名前を”少女ロリ

地球を回る、唯一の衛星

地球がマグマに包まれた時代から、生物の誕生、人類の勃興が起こった今日こんにちまで、地球の歴史を見守ってきた


その年齢とは裏腹に、幼い童顔をしている

長いまつげに、綺麗な鼻筋は世界の美の模範

長らく眠りについて、丸まった姿は見る者の保護欲を掻き立てる


永遠に変わることのないその幼さは、数多の女の羨望の的、数多の男の変態的発想のその先を行っていた

そのことから、永遠と愛を司る神として、古くから信仰を集めていた



そんな女神に今、挑まんとしている!

女神に到達するということ

それは今までの宗教を否定し、科学の優位性を示すということ

女神という宗教的タブーに触れて、神の支配を覆す

神が支配していた世界から、科学が支配する世界へと変貌する歴史的瞬間



今か今かと、その瞬間を待ちわびている視聴者

今だけは少年心が大人に吹き込まれ、輝いた眼が、テレビの画面に食い込んでいる


そんな皆が見ている画面には、一人の男が映りこんでいた


彼の足が、少女の肌に触れた

わっ、と湧く地球

画面の前の人々は歓喜の声を上げて、その嬉しさを周囲に、ネットに、空に打ち上げた

その歓喜の声は、まさに宇宙に響かんとしていた


皆、喜びの余韻に浸って、テレビの画面から目をそらした

”少女”のわずかな動きを逃していた

唯一、その場にいた”彼”だけが、その動きを見ていた

丸めた姿勢から、腕を上げ、背伸びをする少女

長年の眠りから覚めた最も尊い瞬間を、あろうことか見逃していたのだ


そこで画面が途切れたのだ


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