第136話俊哉と浩一郎の結婚式その2

カメラマンと話をしながら写真を撮っていく。俊哉も浩一郎も画像に興味は無かった。カメラマンは確認を2人に求めたが、2人はお任せします、とのみ答えて撮影を進めた。何故確認しないのかと言うと、自分の写真が何だか恥ずかしいからである。交際してから俊哉と浩一郎は写真を撮っていない。俊哉も写真写りが良いとは言われるがあまり好きじゃない。浩一郎に至っては写真アレルギーである。だから2人共写真はカメラマンにお任せした。


「良い写真が撮れていますよ」


カメラマンはそう言って撮影をしている。カメラマンも写真を嫌がる人間は今まで沢山居たが、結婚式の写真に興味が無い新郎新婦は珍しい。実際、俊哉も浩一郎も写真写りは良いのだ。しかし嫌いとなると無理に見せる事もしなくて良いし、カメラマンにとっては仕事がしやすい。あれこれと注文をする人間が多いからだ。カメラマンは決して口には出さないが不細工な新郎新婦は沢山居る。今日は仕事がしやすいと思った。淡々と撮影が進むので予定したスケジュールよりかなり早く終わりそうだ。


「浩一郎さん、次は親族との撮影ですよ」


「やれやれ、まだ撮影するのか」


浩一郎は俊哉を見た。可愛さを残している俊哉にぴったりなドレスだ。良く似合っていると思う。


親族との撮影が終わって少し時間があった。俊哉の家族と浩一郎の叔父、源一郎がお喋りをしている。


「いや、まったくおめでたい。私の甥がこんなに可愛い子をお嫁さんにするなんて」


源一郎はウェルカムドリンクを飲みながら言った。酒豪であるからちょっとやそっとの酒では酔わない。


「叔父さん、式でも飲めるから程々にしなよ」


「大丈夫だ、浩一郎。心配するな」


源一郎はシャンパンを口に含んだ。


「浩一郎、良いシャンパンを頼んだな」


「うん、会社の会長が来るから安物にはできないよ」


俊哉は驚いた。


「浩一郎さん、三ツ谷会長が来るんですか」


「俊哉、名簿に載っていたじゃないか」


招待に関しての名簿は浩一郎さんに任せていた俊哉である。


「社員の結婚式には必ず出席するとは噂に聞いていたけど」


「会長はお祝いが大好きだからな」


招待する人間が80人を超えた。会社の人間は管理職のみ招待した。部下にいたずらに出費を強いたくないという俊哉と浩一郎のはからいである。しかしそれでも強く出席を望んだ社員については招待している。


「お姉ちゃんのドレス姿、素敵」


俊哉の妹の美紀はスマホで写真を撮っている。美紀もドレスを着ている。奮発ふんぱつして買ったと俊哉は聞いている。


「そんなに写真を撮るものじゃないよ」


やはり俊哉も写真は苦手だ。


「良いじゃないの。特別な日なんだから」


俊哉の両親と浩一郎の叔父の源一郎は楽しそうにお喋りをしている。浩一郎は椅子に座り窓から景色を眺めている。桜の花びらがちらりちらりと舞っている。それを静かに眺めている。浩一郎はあまりお喋りが好きではない。嫌いではないのだが積極的には会話に参加しない。そう言う浩一郎の性格は俊哉の両親も叔父の源一郎も知っている。しかもこれから式の始まりを控えた新郎である。ゆっくりとさせてあげるのもやはり大切だ。


「浩一郎さん、もう少ししたら式の始まりですよ」


「俊哉、それにしても良いシャンパンにし過ぎたな」


ドンペリニヨンである。浩一郎も飲んでいる。


式はもうすぐ始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る