第134話結婚式準備

俊哉と浩一郎は挙式の準備に忙殺されていた。挙式の段取りはプランナーの佐々木さんにお願いするとして、招待する人の招待状は自分達でしないといけない。これが骨の折れる作業だった。


「総務部1課の人は全員招待で良いか」


「そうですね、日頃お付き合いしていますから」


その次は結婚指輪の購入だ。まだ半年の期間は有るが、準備は早くする事に間違いは無い。


「俄然忙しくなってきたな」


「結婚って大変ですね」


まあ、式さえ終わればどうにでもなるさ、と浩一郎さんは楽観的だ。


「しかし1つだけ諦めないといけない事がある」


「何ですか」


「新婚旅行だ」


シロを飼い始めてからは長期の外出は不可能になった。それは俊哉も理解している。それに仕事も管理職が2人も抜けると大変になる。


「半年なんてあっという間だよ」


公私ともに忙しい2人だった。


「よし、手抜かりは無いな」


「はい、ダブルチェックで完璧です」


式の1カ月前になった。冬の寒さが去り、春の空気になりつつある。


「後は式を挙げるのみになったな」


年度末に重なった2人の仕事は多忙を極めた。それでも俊哉と浩一郎は式が楽しみでならない。


「久しぶりに釣りにでも行こうか」


春のブラックバスは活性も高く、釣りやすい。


「良いですね。行きましょう」


周辺の人はこの川でルアー釣りをできる事を知らないようだ。魚も綺麗でスレていない。2人はそれぞれ良いサイズのバスを釣る事ができた。


「俺達の式の頃には桜も見れるな」


「桜の咲く時期に結婚式は素敵です」


「楽しみだな」


「はい、楽しみです」


2人は家路に着いた。


「やっぱり川端さんにも出席してもらって良かったな」


「席が空席でも料理が運ばれるのは不思議に見えるでしょうね」


川端さんに結婚式の事を話すと出席したいと言った。俊哉も浩一郎も異論は無い。


「本当に私が出席しても良いのですか」


「ぜんぜん大丈夫です。出席してください」


「フルコースの料理なんて私、初めてです」


「なら尚更です。是非楽しんでください」


プランナーの佐々木さんも不思議そうに俊哉と浩一郎に尋ねた。


「1食分もったいないですよ」


「良いんです、よろしくお願いします」


これで川端さんの参加が決まった。


「私もこんな格好ではいけませんね」


川端さんはドレスを着ると言う。それは楽しみだ。


挙式が近づくにつれ、疲弊するカップルも居ると言う。しかし俊哉と浩一郎は違った。楽しみで仕方ないのだ。俄然、仕事もはかどる。


「田宮主任、もうすぐ式ですね。招待されて楽しみです」


望月が俊哉に言った。あまり期待しないでよ、と俊哉は言った。しかし特に食事については他の予算を割いて手間を掛けている。


「1流店の食事と遜色そんしょくないだろう」


浩一郎さんも自信ありげだ。それにしてもお金が掛かる事掛かる事。追加の料金が発生した。佐々木さんも申し訳ないと2人に謝罪した。


「いや、勝手なこだわりで迷惑をかけたのはこちら側です」


普通の客なら怒るかもしれないところをそうしないところに浩一郎さんの良い所だ。


「お客様の式は随所にこだわりがあって、やりがいがあります。普通なら低予算や簡略化を希望するのですが」


佐々木さんも率直に言った。そして式の当日がやって来た。

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