第5話 避難勧告

 村長が俺に懇願する。

 「アニエス様、何とかならないのですか。村を捨てたら生きていくことが出来ません。」「魔物の群れがすぐそこまで来ています。村の人々を守りながら戦うことはできません。」

俺は宮廷魔法士に8歳でなって、今は12歳になっている。一緒にいるアニタは13歳だ。俺たち2人は魔族の動向を調べるため、ルマール男爵領に来ていた。

 そしてコロール村のすぐ近くで魔物の群れを探知したのである。コロール村は一度滅んでしまったが、ここ数年で再開発されて生活が軌道に乗ってきたところであった。

 魔物の群れは真直ぐコロール村に向かってきている。俺はすくに村に魔物が近づいていることを知らせ。冒険者ギルドに応援の冒険者を呼んでくるように依頼して。

 村人には村から退去するように指示した。しかし、村人たちは村を守ろうと考えている。

 俺は魔物の群れが大きいため、アニタと2人では対処出来ないと判断している。そのため村長に村人を説得してもらおうとしたのだ。

 「私たちは村の手前で魔物の群れと戦うつもりですが、数が多すぎます。魔物は村に侵入することになるでしょう。」「その魔物はあたしたちが戦います。」

 「死にますよ。」「村を捨てても生きてはいけません。村で死なせてください。」

 「では、戦えない子供たちや老人だけでも逃げてください。」「分かりました。ご武運をお祈りします。」

アニタが俺に警告する。

 「アニエス様、時間がありません。今から村の外で迎え撃つのは難しいかもしれません。」「人の命がかかっているわ。できるだけ村の外で仕留めるわよ。」

 「私でなかったら3回は死んでいますよ。」「アニタを信じているからできるのよ。」

アニタはため息をつく。アニタの剣の腕は白い悪魔の異名にふさわしいものになっている。俺も実戦を重ねて魔法の腕を上げている。

 俺たちは村の入り口に陣取り、魔物を迎え撃つ。群れはシルバーグリズリーで構成されていた。シルバーグリズリーは大きな体の割に身軽で強力な前足は一撃で鎧で防護した騎士を即死させる力がある。

 俺は無詠唱でパイルサイクロンを群れに撃ち込む強力な風の渦は群れの真ん中を貫き、巻き込まれたシルバーグリズリーを切り裂いて肉片に変える。アニタが俺に

 「右側をお願いします。」

と言って、飛び出していく。彼女は群れの左側に向かい、先頭のシルバーグリズリーの右側を通りぬける瞬間首をはねる。彼女はそのまま群れの中に突入する。

 そして、右側のシルバーグリズリーは俺に向かってくる。俺はマグマウェーブを無詠唱で使う。シルバーグリズリーのいる地面がマグマの海と化してマグマの波がシルバーグリズリーを飲み込み焼き殺していく。

 マグマウェーブの詠唱は「灼熱の海となりて、我が敵を飲み込め。マグマウェーブ。」である。

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