第9話 初めての狩り

 俺たちは、そのままの装備で薬草の採取に出かける。置いて来てしまったのは、魔法のステッキである。

 俺のものは長さ約100センチの棒で、先端に大きな赤色の宝石がはめ込まれている。宝石の中には魔法陣が描かれていて魔法を強化する効果がある。父が上級魔法士になった祝いに俺にくれた物だ。

 アネットの魔法のステッキは長さ約150センチの物で先端に大きな青い宝石がはめ込まれている。やはり宝石の中には魔法陣が描かれていて魔法を強化する効果がある。

 俺もアネットもステッキを使ったことがない。試験ではステッキは使用できないので、これまで使ってこなかったのだ。

 俺たちは3人とも革の防具を装着している。そして防具の下には鎖でできたチョッキのようなものを着こんでいる。

 俺とアネットは体力がないため革の防具にしたのだ。アニタは早く動くために軽い革の防具を選んでいる。

 街の門を出て森に入ると俺は探知魔法をかける。周囲に魔物はいないようだ。俺たちはデリアに教えられたように森の中の谷を目指す。

 30分程歩くと谷に出る。ここはまだ森の中では浅い所で魔物はあまり出ないらしい。薬草は白い十字の花が目印で、岩の間に群生している。

 この薬草を取るのだが群生している薬草を全てとるのではなく、3割ほどを残しておくのがルールだそうだ。

 薬草を残しておけばまた増えて群生するのだそうだ。

 俺たちは谷の中を探し回り、十分な量の薬草を集める。俺たちは一休みする。この時、俺とアネットの魔力探知に魔物が反応する。

 俺はアニタとアネットに言う。

 「魔物に遭遇したらしょうがないわよね。」「そうね、1匹位だったらいいかもしれないわ。」「アネット様、私は構いませんよ。」

 「なら、様子を見に行きましょう。」「良い考えですわ。」

俺たちは気配を消して、魔物に近づく。茂みから様子を見る。魔物は気づいていないようである。

 俺は魔物を見て目を疑う、どう見てもホーンボーアである。見た目は獣だが、強い魔物の気配がある。

 「ホーンボーアが魔物化したの。」「そんなこと聞いたことありませんわ。」

 「アニエス様どうしますか。」「倒して魔石を持っているか確かめましょ。」

魔物なら魔石を持っているはずである。

 俺とアネットがファイアーランスを撃ち込む。2人で20本の炎の槍がホーンボーアに向かって飛んでいく。

 ホーンボーアは気づいて走り出すがファイアーランスの方が早い、5本がホーンボーアの両後ろ脚を貫く。

 アニタが飛び出し剣を後頭部に突き刺す。これがとどめとなってホーンボーアは倒れる。

 アネットが魔石のありかを探す。そして彼女はアニタに言う。

 「背中のこの辺りを切って。」「はい。」

アニタが剣でホーンボーアの背中を切る。アネットが魔石を取り出す。普通、魔物から魔石を取り出すと形が崩れて砂状になるがホーンボーアはそのままである。

 俺は証拠にホーンボーアの角も回収する。俺はこのホーンボーアに嫌な感じを覚える。

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