第6話 野盗の襲撃

 俺たちは馬車でルマール男爵領を目指しているが、それは辺境に向かって進んでいるということであり自然と野宿が増えてくる。

 街にはなかなか寄れないので村を通った時に食料の補充や空いている小屋を借りるなどした。

 俺は途中、トラブルに巻き込まれるかと思っていたがリッシュ子爵の件以降順調に旅をしていた。

 俺たちは今、野宿をしているが囲まれている。まず、アニタが気配に気づき、俺とアネットが探知の魔法を使って15体に囲まれていることが判っている。

 15体と言うのは、囲んでいるのが人か魔物か何かまだわからないのである。アネットが御者に言う。

 「あなたは馬車の中に隠れていて。」「はい、お嬢様。」

アニタが背中の剣を抜く。相手はだんだん近づいて来る。物音を立てないようにしているのだろうがまるわかりである。

 とうとう茂みのそばまで来る。そして一斉に飛び出してくる。正体は人である。正確には野盗である。

 俺たちはホッとする。しかし、野盗は俺たちが静かにしているので恐ろしくて言葉も出ないと勘違いしたらしい。

 「美少女が3人もいるぜ。」「いい金になるな。」「見てみろよ。獣人と小さな奴、悪魔と天使じゃないか。」

 「本当だ。嫁にしたいぜ。」「やめろよ。あの2人を売れば俺たちは一生遊んで暮らせるんだぞ。」

 「ちくしょー、俺が欲しいぜ。」「だからやめろ、取り合いになるだろ、だから売った方がいいんだ。」

彼らは、もう俺たちを捕えたつもりになっている。アネットがあきれたように言う。

 「アニー、あなた7歳でしょ。大の大人が欲しがるなんて理解不能だわ。」「黙れ、小娘、天使だぞ。誰だって欲しくなるだろ。」

 「あなたたち、騒いでいるけどどうするつもり。」「決まっているだろ売り飛ばしてやる。今から縄で縛るからな。」

アネットが高速詠唱でファイヤーボールを撃つ。男が1人炎に包まれてのたうち回る。

 ここにきて、野盗の顔つきが変わる。俺たちがおとなしく捕まらないことを理解したようだ。

 アニタが飛び出て一瞬のうちに2人を切り殺す。俺もファイヤーボールを撃ってアニタを援護する。

 アニタはリーダーと思われる男に迫る。男は上段から剣を振り下ろすがそこには彼女はいない。彼女は男の後ろに走り抜けている。男の胴が裂け上半身がずり落ちる。

 野盗たちは狩られるのは自分たちだと思い知らされる。それからはアニタの一方的な攻撃が始まる。彼女は1人で9人を切り殺す。俺とアネットは3人ずつ倒す。

 アネットはアニタに感心して言う。

 「アニタは本当に強いわね。白い悪魔にふさわしいわ。」「ありがとうございます。でも白い悪魔はあまり好きではないです。」「そお、ごめんなさい。」

この後、俺たちは何事もなくルマール男爵領に入る。

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